みなさんの会社では新卒採用を行う際、どのように母集団形成をされていますか?

一番多いのが、求人サイトに掲載したり説明会を開くことだと思います。

私の就職活動時代も、大手の求人サイトで検索しながらどんな会社があるのか調べ、気になる会社の説明会に行って興味を持ったら書類を出す、というような流れが一般的でした。

企業側は、当時はこの流れで母集団形成ができていましたが、今の採用市場においてこの手法ではかなり難しくなってきているのです。

ではどうやったらいいのか?と、悩まれる方が多くいらっしゃると思います。

今回はそんな方に向けて、そもそもなぜ従来の手法が難しくなっているのか?という説明から、今の若者を引きつけるためにはどうしたらいいのか?というアドバイスまでご説明いたします。

新卒採用をお考えの方はぜひ最後までお読みいただけると幸いです。

母集団形成の難しさ

そもそも「母集団形成」とは?と思われている方もいらっしゃるかもしれませんので以下でご説明します。

母集団形成とは、「自社の選考を受ける候補者を集めるためのプロセスです。さらに言うと、企業が求める人材像に合った候補者を効率的に集めるための活動のことを指します。

ここで大事なのは、ただ候補者を集めればいいのではなく、自社に合った人材を集めなくてはいけないということです。

私のお客様でたまに「とりあえず応募を多く集めて、そこから合いそうな人を絞っていけばいい」と仰る方がいるのですが、それは正直かなり非効率的です。

ぜひ一度想像してみていただければと思うのですが、誰彼かまわず応募者を100名集めてそこから1人採用するのと、ターゲットを絞った応募者20名の中から1人採用するのでは、どちらが良い結果を生み出すでしょうか。

100人に会った方が、もしかしたら貴重な人材に出会えるのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その100人が全員別の会社に行ってしまう可能性もあるのです。さらにはせっかく採用できたとしてもミスマッチで辞退される可能性もかなり高くなります。

そうなったら時間的にも経済的にもかなり無駄になってしまいますよね。そう考えると、ターゲットを絞った20人から選りすぐりの1名を決めるために時間を割く方が、よっぽど良い採用ができるのは明白ですよね。以上よりターゲットを決めて候補者を集めることが重要であると分かっていただけたかと思います。

しかし、重要なのはこの先です。

最も重要なのは、「どうやってそのターゲットを集めるのか?(母集団形成を行うのか?)」ということです。

冒頭で例に挙げた、大手の求人サイトに掲載するという一昔前には当たり前だった手法は、今や過去のものとなっています。今の採用市場においてその手法では通用しないほど難しくなっています。 ではなぜ母集団形成が難しくなっているのでしょうか。以下に2つ要因をあげさせていただきます。

同一ターゲットを複数の企業が狙っている

総務省の「情報通信白書令和4年版」によると、日本の生産年齢人口は1999年をピークに減少し続けており、2050年には5,275万人まで減少すると予測されています。生産年齢人口が減少している現在、採用市場は完全に売り手市場であり、企業が人材を獲得すること自体がそもそも非常に難しくなっております。

だからといって、「誰でもいいから採用しよう」と考える企業様はどれくらいあるのでしょうか。

きっと、多くの企業様は「一定のスキルや経験、専門性を持つ人材が欲しい」と考えるはずです。

今だと、AIに関するスキルを持った人材、SNSマーケティングに精通している人材、グローバル人材などでしょうか。こんな人材がいたら欲しいと思うのは当然です。しかし、このような人材は大変希少ですので、基本は引く手あまた。一人の求職者に対して複数の企業がアプローチをかけることになります。

そうなると必然的に企業は求職者に選ばれる立場になるのです。まさにコンペ状態です。

コンペでは自社を魅力的に感じ興味を持ってもらう必要があり、これが非常に難しい部分となります。 (名の知れた大手企業でない限り、かなり難しいのが現状となります。)

SNS普及による情報源の多様化

就活においても、今やSNSで企業の情報収集をするのが当たり前となっているのです。

かつては大手求人サイトに掲載することで認知を獲得できていたものが、現在はSNSで認知を獲得し始めて興味を持たれるというように、母集団形成のフローがオンライン化の加速によりここ数年で一気に変化しました。

SNSとひとくくりにいっても種類は様々。インスタグラムやYoutubeのような日常で利用されるSNSから、ウォンテッドリー様やワンキャリア様のようなキャリアに特化したSNS・コミュニティが数多く存在しています。

そしてさらに、分かりやすく感じていただけるように、現代の若者が応募に至るまでのインサイトの一例をご紹介します。

一般的な流れとして、ざっくりと以下のようなステップとなります。
①休日インスタグラムを眺めていたら、ふとある会社の宣伝動画が流れてくる。(認知)
②なんとなく自分が将来やりたい仕事と共通していそう、あるいはこんな会社あるんだと気になる。(興味)
③会社をもう少し知りたいと思いwebなどで検索すると、ウォンテッドリーに記事が出ているのを発見。そこで会社のビジョン・ミッションや社員の雰囲気を知り、自分の就活の軸と一致していることに気付く。(共感)
④さらに知りたいと思い求人サイトで検索すると会社の求人を発見。説明会に参加する。SNSで見ていた通り、社員の雰囲気もよく、ビジョンにも共感できた。「この会社受けてみたい」と感じ、応募する。(応募)

いかがでしょうか。今の若者が一つの会社に興味を持ち応募するまでには、無数のツールと選択肢が存在していることがお判りいただけましたでしょうか?

現代における母集団形成はこのいくつものハードルを超える必要があるのです。 そのためには、従来の採用手法から脱却し、新しい方法を柔軟に取り入れていくことが重要となります。

採用プロモーションの難しさ

さて、前章まででお伝えした内容から、母集団形成の難しさを感じていただけたかと思います。

若者が企業の情報収集に利用できるツールは非常に多様化しており、企業はその変化に合わせた情報発信を行いながら戦略的に母集団を形成していかなければなりません。

このように戦略的に母集団形成を行う手法を「採用プロモーション」と言います。

企業が学生に選ばれる側になった今、採用プロモーションは非常に重要な位置づけとなっています。

ターゲットに対して、的確に知ってほしい情報を伝え会社のことを魅力的に感じてもらわなければなりません。

あなたならどのような伝え方をかんがえますか?求人サイトでの掲載、説明会、ダイレクトリクルーティングなどが一般的ですね。もちろんこれらは今でもほとんどの企業が行っている手法です。

しかし、今の若者は選択肢をたくさん持っています。その中で採用プロモーションを成功させるのが非常に困難であることは想像にたやすいと思います。 では、どんな採用プロモーションを行っていけばよいのか。この章では採用プロモーションをさらに「PULL型」と「PUSH型」の2つの手法に分けてご紹介していきます。

PULL型のアプローチ

PULL型プロモーションはオーディション型とも言われ、採用広告や合同説明会などのメディアを利用して

できるだけ多くの学生に対して情報発信するアプローチ方法となります。

いわゆる一般的な採用形態です。私の就活時代も、私含め周りみんな就活が解禁になったタイミングで真っ先にリクナビやマイナビに登録し、合同説明会に参加するというのが通常の流れでした。

このPULL型プロモーションのメリットとしては、アプローチできる人数が多いということが挙げられます。

一気に多くの候補者にリーチできるので、うまくいけば数十~数百の応募を集めることも可能です。

また、多くの企業の中で興味を持っているという点で、一定志望度が高い候補者を集めることができるので、辞退率が低くなる傾向にあることもメリットです。求人作成や管理・説明会準備などは大変ですが、それを超えれば効率的に母集団形成ができる手法といえます。

一方デメリットも存在します。それは自社に興味を持っていない候補者を集めることができない、ということです。なんだか先ほどお伝えしたメリットの逆説的な感じですね。そもそも説明会に来るのは興味のある人だけです。私も就活時代、興味のない会社の説明会に行ったことは一度もありませんでした。

これは企業・学生双方にとって、非常にもったいないことだと私は思います。

PULL型プロモーションは受け身の手法でもあり、「興味のある人だけ来てね」というアプローチ方法です。その結果、本来は会社とマッチするはずだった人材を取りこぼしてしまっている可能性があるのです。 学生にとっても、興味が現状ないもしくは企業のことを知らなかったというだけで、実はその人にとって相性のいい会社かもしれませんよね。

ではこのPULL型プロモーションが適しているのはどのような企業でしょうか。それは、自社の採用ターゲットから見て競合より自社が魅力的かどうかによります。先ほどお伝えしたようにPULL型プロモーションは受け身の形で、興味を持っている人を集めるものです。

採用ターゲットが競合と比較しても自社を選ぶであろうと思われるような、知名度・給与・福利厚生・社内の雰囲気などがあればこのプロモーション形態は有効でしょう。

「そんなの大企業しか当てはまらない」と思われる方が多いと思います。現実はそれがほとんど正解です。

もちろん非常に魅力的で、知る人ぞ知るようなベンチャー企業が選ばれることもありますが、だいたいはその企業も母集団形成のために様々な研究を行い、試行錯誤されています。では、今後どうすればいいのか。次にご紹介するPUSH型プロモーションを取り入れてみてはいかがでしょうか。

PUSH型のアプローチ

PUSH型プロモーションはスカウト型とも呼ばれ、ターゲットを特定し企業側からアプローチをかける手法です。OB・OG訪問やリクルーター制度、リファラル採用などが当てはまります。

先ほどのPULL型とは打って変わって攻めのアプローチと言えます。

このPUSH型の1番のメリットとしては、自社の採用ブランドに依存せず人材を獲得できる可能性があるということです。私も就活時にリクルーターの方がとても良い方で企業のイメージがいい意味で変わったという経験があります。最終的には別の会社を選んでしまいましたが、自分の中の志望度が上がったのは確実です。

では、なぜ私の中で志望度が上がったのかというと、その企業のブランドや給与などではなく、リクルーターから感じる仕事への熱意や、仕事のやりがい、社内の雰囲気などを実感出来たからだと思います。求人広告では伝わりきらない「素」の部分を感じることができたのが大きいと思っています。

どうでしょう、これなら企業規模にとらわれず候補者に選ばれる可能性が出てきそうではないでしょうか。

一方、デメリットも存在します。それは候補者の志望度は低く辞退率が高いということです。

これはまさに今の私の体験談にも出てきましたが、元から強い興味を持っていたわけではなかったので、どうしても志望度を上げきることができませんでした。

辞退率を下げるには強い動機付けや細やかなサポートが必要になります。しかしこれは時間も手間もかかってしまうので、なかなか大変です。 PUSH型は泥臭く地道にアプローチを続けていかなければならない手法なのです。

以上がPULL型とPUSH型の解説でした。

重要なのは、このどちらが良い悪いということではなく、それぞれを自社の状況や採用ターゲットによって使い分けるべきだということです。

たとえば、ある世界的に有名なIT企業はもともと新卒採用をPULL型で、中途採用を人材紹介を利用していました。しかし人材獲得が激化している背景から、中途採用をすべてPUSH型に移行しました。

リファラル採用をメインで行い年1000人と面談を行っています。 このように自社の採用状況を客観的に見極め、取り入れる手法を柔軟に切り替えることでそれぞれの手法の強みを活かすことができます。

さいごに

いかがでしたか?

母集団形成は今後ますます難しくなっていくことが予想されます。

従来の採用プロモーションでは、求めるターゲットが獲得できる可能性はどんどん低くなっていくでしょう。

もちろん今のやり方が悪いというわけではなく、新しいやり方も柔軟に取り入れ組み合わせていって頂きたいと思っております。 今回の記事がお役に立てば幸いです。