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若い人材が定着しない会社の処方箋【原因は若手とのズレ】
新卒の採用にかかる費用は、一人あたり「93.6万円」(※1)。
正社員が半年以内に辞めたときの損失額は最低でも300万円以上(※2)。
若手がすぐ辞めてしまうのは痛手にほかなりません。ですが、そう感じながらも実は効果のない離職防止策に頼っている企業は多いのが実情。
本記事では、若手と会社のズレに着目し、問題点を整理。若手が辞めない環境の条件や成功事例を解説します。

通常業務で忙しい企業が定着率を上げる方法もご紹介します!ぜひ最後までご覧ください!
| 【監修者】 株式会社Tsumugu 代表 塔筋 大樹 |
| リクルートを経て、2023年よりアド・イーグルHD役員へ。同年、株式会社Tsumuguを設立。10年以上の経験を通じたHR領域のプロとして、「お客様と伴走する人材コンサル」を展開している。 |
※2 出典元:エン・ジャパン株式会社『「早期離職」に関する実態調査 入社から半年で早期離職が発生した場合、企業の損失額は「640万円」。 早期離職経験者は31%。後悔の最多は「転職活動が大変になった」。』(2025)を元に、給与水準を年収300万として弊社にて試算
Contents
若手が定着しない会社は「ズレた離職防止策」を打っている
若手の離職に悩む企業のうち、実は施策や観点がズレていることに気づいていない組織が多く存在します。
効果のない離職防止をしてしまうのは、施策の根拠となる考えが当の若手とズレてしまっているから。
たとえば、現場の声が反映されているかどうかの意識を見るだけでも、ズレは明白。
| 経営層・人事・管理職 | 70% |
| Z世代社員 | 33% |
| 会社と若手のズレ | 37% |
この時点で、すでに4割弱の認識ギャップが浮き彫りになっています。
もちろん、若手になにもかも合わせるべきではありません。働いた経験が少ないがゆえに見えていない本質もあります。
意識のズレを認識したうえで、その溝をどう埋めるのか。これが、経営陣や人事の手腕を問われる点なのです。
若手が定着する会社を目指すためにも、若手との意識のズレをチェックし、離職防止策を見直していきましょう。
若手が定着しない会社の認識ギャップ3選
実際に、若手と企業で定着化対策への意識はどうズレているのでしょうか? 主な3つの数値を見ていきましょう。
| 若手 | 会社 | |
| 現場の声が反映されていると思う割合(※3) | 33% | 70% |
| 人事評価が公正だと思う割合(※3) | 37% | 69% |
| 若手が辞める最大の原因は? | 労働時間・休日(25%)※5 | 給与・福利厚生(41%)※4 |
※4 出典元:ProFuture株式会社 HR総研『【HR総研】「若手人材の離職防止に関する」に関する調査レポートを公開』(2023)
※5 出典元:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ『「新人・若手の早期離職に関する実態調査」の結果を発表』(2023)
また、企業内でも「若手が離職する要因」に対し離職防止策が一致していないという調査もあります。
| 順位 | 離職要因だと思うのは? | 実施中の離職防止策は? |
| 1位 | 給与・福利厚生(41%) | コミュニケーションの活性化(46%) |
| 2位 | 上司との人間関係(31%) | 待遇改善(34%) |
| 3位 | 業務内容のミスマッチ(29%) | 職場環境の向上(32%) |
| 4位 | 社内での成長が見込めない(28%) | 1on1の実施(28%) |
| 5位 | 上司以外との人間関係(27%) | 教育・研修制度の強化(28%) |
HR総研の調査は、あくまで企業側の認識のみを調査したもの。
リクルートマネジメントソリューションズの調査にある通り、実際の若手としては、給与・待遇よりもプライベートの充実が重視されています。
こうしたギャップがあることを認識していないと、意識のズレを放置したまま施策を重ねていくことになりかねません。

「意識のズレを放置した施策」こそ、間違った離職防止策と言えるでしょう。
【意外】実は若手の定着率に貢献しない離職防止策
一見すると若手の定着化に貢献するようで、実は効果が薄い施策も存在します。
その代表が、給与・待遇の見直し。
弊社のお客様でも、給与や休日の底上げを実施された企業はいましたが、定着率は上がらず。
見直した瞬間の満足度は上がりますが、若手の引き止めには貢献しませんでした。
言うまでもなく、給与や待遇の底上げは不可欠です。求められる成果も物価も高くなっている現状で、収入が低いままでは生活に不安が生じ、離職のきっかけになるでしょう。
一方で、企業と若手の意識にはズレがあります。
前述したように、企業側は若手の離職要因のトップを「給与・待遇」だと思っていますが、若手の本音としてはプライベートを充実させたい。
また、企業側は7割が「自社は現場の声を反映し、公正な人事評価をしている」と考えていますが、それを実感している若手は3割強。
離職の火種はさまざまな観点にあり、給与・待遇は土台のひとつでしかないのです。

待遇の改善「だけ」に頼るのは避けましょう。
若手が定着しない会社から今すぐ脱却するには?
AIとの親和性などから見ても、若手は今後の企業成長に欠かせない人材となっています。
特に、優秀な若手が辞める状態から脱却するには、若手の本音を探ることが必須。意識調査から、自社が抱える人事課題が浮き彫りになってきます。
若手へのヒアリング、採用、育成に強い弊社は、現場と経営層の認識ギャップを可視化し、人材の定着率を底上げします。
人材の定着化には各社にカスタマイズした施策が不可欠ですので、ぜひHR領域のプロにご相談ください。
会社を辞める若手はなにを考えているのか?
「正直、若手が何を考えているのかわからない」と日々感じている方も多いでしょう。
重要なのは、若手を一括りにしないこと。
現場を見てきた弊社としては、若手の志向をざっくり二種類のタイプに分けることができると考えています。
ワークライフバランスを重視する若手が増えてきているのはたしかですが、突き抜けた成長を重んじる若者がいるのも事実。
また、会社から見ても優秀な若手は、成長志向、安定志向、どちらにも存在します。

特定の観点を捨てているのではなく、あくまで軸足が異なるだけです。
このうち、特に重要と考えられる4つの観点について、詳しく見ていきましょう。
若手の志向①:将来性×成長機会
特に会社から見て優秀だと感じる若手にとって、重要となるのが将来性と成長機会。
会社も成長しており、自身にとっても成長のチャンスが豊富かどうか、という観点です。
これは世代に限らず、優秀な人にとっての必須項目。「この会社ではもう成長できない」と感じられたが、最後、転職活動を始めてしまいます。
優秀な人の離職防止については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
若手の志向②:働く意義
成長志向の若手に限った話ではありませんが、若手にとって「働く意義・仕事のやりがい」は重要です。
実際、会社を辞めたいと思ったことがある若手のうち、辞めたいと思った理由の第1位が「仕事にやりがい・意義を感じない」であるという調査もあります。
これについては、若手の仕事がなんのために存在し、組織の方針へどのように貢献しているのかを明示する必要があるでしょう。
若手の志向③:柔軟な働き方・ワークライフバランス
近年、若手の中で増えてきているのが「柔軟な働き方や、ワークライフバランスの重視」。
| 1位 | プライベートの充実(24.4%) |
| 2位 | 高い収入(23%) |
| 3位 | 自分のやりたいことをやる(16.8%) |
これは安定志向の若手に現れやすい傾向ですが、成長志向の若者も決して捨てているわけではありません。

理想とするバランスが人によって異なるため、それに合わせて柔軟な働き方も求められているのが現状です。
ここについても、会社と若手で認識ギャップがあります。
| 仕事:プライベート | 若手 | 上司 |
| 3:7 | 28.5% | 20.2% |
| 5:5 | 39.3% | 47.1% |
| 7:3 | 24.1% | 26.4% |
この調査からは、若手・新人のほうが上司・育成担当よりもプライベートに重きを置いていることがわかります。
さまざまな世代と価値観が混在する以上、働き方の選択肢を増やし、それぞれの社員に合わせられる柔軟性が求められていると言えるでしょう。
若手の志向④:会社の将来性×安定性
4つ目に取り上げるのは、会社の将来性・安定性。
成長機会の項目でも会社の将来性は関わってきましたが、安定性にとっても重要。

安定志向が求めているのは「堅実さ」であり、「停滞」ではありません。
VUCAの時代に働き始める若手にとって、今が良くても将来性がなければ「安定している」とは言えません。
会社が停滞していてもいいのなら、評価制度は「年功序列が正義」という話になるでしょう。
本記事で頻出しているリクルートマネジメントソリューションズの調査でも、調査結果が出ています。
| 1位 | 転職へのリスクを感じる(21.3%) |
| 2位 | 会社がつぶれる心配がない(18%) |
| 3位 | 条件に合う転職先が見つからない(14.2%) |
大企業でも倒産の可能性がある現代において、会社の堅牢さや将来性は、若手にとっても「将来の安定性」につながっているのです。
若手が辞めない会社の共通点は?
ここまでは、若手が実際になにを考えているのか、データとともに見てきました。
若手にも成長を重視するタイプと、安定を重視するタイプがいることを認識いただけたかと思います。
では、若手が辞めない会社はどうしているのでしょうか?
「自社にほしい若手」を明確化している
若手が辞めない会社は、採用段階からすでに工夫をしています。
その工夫とは、「自社がほしい若手は誰か?」を定義し、企業説明会や選考過程でその具体的なイメージを若手に伝えること。
若手の離職理由はさまざまですが、どんなに待遇がよくても、企業文化に合わない人は辞めていきます。

引き止めができないだけでなく、引き止めてもお互いが幸せにならないパターンです。
若手の離職防止は、採用段階からすでに始まっているのです。
自社の希望がぼんやりしていると採用でのミスマッチが起きやすいため、まずは求める人物像を具体化しましょう。
若手の意見を常に汲み上げている
若手が辞めない会社は、常に若手の意見をキャッチアップし、有用なアイデアを社内に反映させています。
細かく言うとさまざまな点がありますが、主には上記のように集約できるでしょう。
AIの登場により、時代の変化や発展速度はさらに加速度をつけています。最新の知識が数カ月後には役に立たなくなっている、というケースも少なくありません。
若手の視点や意見を汲み上げる重要性は、明らかに従来よりも高まっています。
公正な人事評価の制度
どんなタイプの若手であっても、人事評価の公正さは大きな影響を与えます。
若手と会社のズレでも紹介したように、経営層・人事の7割が「うちは公正」だと思っているのに対し、若手社員は3割強しか公正さを実感していません。
では、人事評価における公正と不公正はどのように異なるのでしょうか?
| ◎:公正な評価 | ×:不公正な評価 |
| 評価基準が明示されている | 上司が現場を見ていない |
| 評価の透明性が担保されている | 管理職と仲が良い人だけ昇進 |
| フィードバックの機会がある | 職種が違うのに評価基準は一律 |
不公正は不公平を生み出し、不公平は人材の離職につながります。
これらの関係性については、下記の記事における「3つの不」という見出しでご紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
柔軟な職場環境
若手が辞めない会社の特徴、3つ目は柔軟な働き方。この重要性については、若手の志向の部分でもお話しました。
柔軟性はよく「働きやすさ」と言われますが、離職率という観点を絡めたときには「働き続けやすい環境」と言い換えるのがより最適でしょう。
大事なのは制度化ではなく、働き方の選択肢が豊富なこと。
働き方改革や新型コロナ以後の現代で働く若手にとって、こうした柔軟性はごく身近な例になりつつあります。
一方、柔軟ではない職場環境だと、なぜ若手が離れていくのか?
それは、「この組織では将来的に働き続けることができない」と感じてしまうから。

若手は「これから大きなライフイベントを控えている人」と言い換えることもできます。
若手は今でこそ若者ですが、今後、さまざまなライフイベントを経験しながら年齢を重ねていきます。
特に影響が大きいのは結婚や出産。弊社による退職者インタビューでは、出産・育児後のキャリアに言及する若手も多いのです。
結婚や出産を機に退職していく社員が多い場合、働き方の選択肢を見直してみましょう。
心理的安全性が保たれている
心理的安全性を別の言葉にすると、「ミスをしたり意見を言っても、頭ごなしに否定されず受け止めてもらえる環境」と言えます。
若手が辞めない会社は、必ずと言っていいほど心理的安全性が担保されています。
Googleが心理的安全性の重要さを検証したのが2012年。そこから10年以上が経過していますが、実践できている組織は少ないのが現状。
社員の50.4%が「本音を言えない」と感じているという調査(※6)が存在することからも、安心感が欠けている職場は多いと言えます。
とはいえ、心理的安全性は理論を知っていても、実践するのが難しいもの。
そこで、少なくとも心理的安全性を阻害するような行動を取らないことを意識しましょう。

若手に限らず、社員の不信を招く行動は避けましょう。
若手が定着しない会社から脱する「攻めの離職防止」を!
弊社では、なかなか新卒に内定を承諾されず困っていたお客様について、採用コストを維持しながら承諾率を2.5倍へ引き上げた事例があります。
こうした実績から改めて重要性を強調しておきたいのが、「若手に刺さるHR施策」。
現場や若手へのヒアリングをせず、認識ギャップを自覚しないままテコ入れしようとしても、やはりうまくいきません。
とはいえ、自社でHR改革をすべて行うのは現実的に困難な企業は多数。
変化の時代で若手と本気で向き合うためにも、ぜひ我々にご相談いただきたいと思います。
「若手が定着しない会社」が変わった事例
若手が辞めない会社の特徴を確認したところで、実際に定着率が上がった事例を見ていきましょう。
本記事で具体的に紹介する事例は2つ。
①柔軟な働き方の導入による効果
②インターンシップによる定着率アップ
まずは、柔軟な働き方を導入したスープストックトーキョーの例です。
【離職率が半減!】柔軟な働き方の導入で離職率が低下
柔軟な働き方によって離職率が下がった好例としては、スープストックトーキョーが挙げられます。
| 導入施策 | ・時短勤務 ・複業可能 ・欠員へのヘルプ専門社員 |
| 効果 | 年間離職率が半減 (23%⇨12.8%) |
スープストックトーキョーの「働き方開拓」はユニークで、時短勤務はもちろん、複業も社外だけでなく社内で複数職を兼務することが可能。
また、「店舗を任せられる人員がいないため休みづらい」という悩みを現場から汲み取り、ヘルプ専門の社員を設置。
こうした取り組みの数々によって、飲食店にありがちな悩みを改善し、離職率の低下に至ったとのこと。
人事部が積極的に現場の声をヒアリングし、的確な施策を打つことができた模範的な事例でもあります。
インターンシップによるキャリアビジョンの明示
インターンシップを取り入れることで、若手の定着率が上がった例もあります。パーソル総合研究所の調査を見ると、違いがわかりやすいでしょう。
| インターン参加者 | インターン非参加者 | |
| 3年離職率 | 16.5% | 34.1% |
パーソル総合研究所以外の調査でも、新卒の3年離職率は3割強。
インターンシップでは、その企業や業界の内部を体感できるだけでなく、現場で働いている社員とコミュニケーションを取ることができます。
インターンシップによって事前に採用のミスマッチを軽減するだけでも、3年離職率は約2分の1へ。
このインターンの中で、キャリアビジョンも明示してあげると、若手から見ても会社に入った後のイメージがより明確になり、定着率に貢献します。
ただし、インターンと言いつつ内部をまったく見せず、実態が企業説明会になっていては効果も薄れがち。名ばかりのインターンにならないよう注意しましょう。
【重要】通常業務が忙しい会社でも、若手を定着させるには?
本記事では会社と若手の認識ギャップを中心に、定着率アップに貢献する要素が多様であることを紹介してきました。
ただし、どんなHR課題に関しても、必ず「ある問題」がつきまといます。
「通常業務で手一杯であり、とてもHR改革には手が回らない」
弊社のお客様でも、このようなお悩みを持つ企業がほとんど。現実として、人材の問題に直面している企業は人事担当者にも余裕がありません。
この難点こそ、弊社が存在する意義でもあります。
オープンイノベーションに限らず、どんな分野でも外部パートナーが重要な時代。HR領域についても同様です。
貴社に最適なHR施策を実施するためにも、外部への相談は不可欠。無料相談から一緒に課題を整理し、貴社へ伴走いたします。
若手の定着化に限らず、貴社が抱えている人事課題について、ぜひご相談ください。