近年、いわゆる「Z世代」と呼ばれる若い人材が、職場や社会で存在感を増しています。
彼らの特徴の一つに挙げられるのが「タイムパフォーマンス」という概念です。

限られた時間をどう使い、どのように成果や満足を得るかを重視する姿勢は、
従来の働き方やコミュニケーションのスタイルと大きく異なる場合もあり、戸惑いを覚える上司の方から相談を頂くこともあります。

たとえば会議や研修の場面で、「時間の無駄だ」とストレートに指摘されたり、
雑談に充てる時間をなるべく削ろうとしたりする若手もいます。

一方でプライベートでは、趣味やSNS活動、スキルアップや社会貢献活動など、
自分にとって意味がある”ことに驚くほど多くの時間を注ぎ込む姿も見られます。

そのオンオフの切り替えに「どうしてそこまで真逆の姿勢で動けるのか」という驚きや、
「効率だけを追いかけていて大丈夫なのか」という不安を感じる人もいるでしょう。

しかしZ世代には、短い時間で効果を出すことを目指すだけでなく、
本当に大切だと思うことには惜しみなく時間を投じたいという傾向もあります。

時間の優先順位づけが明確であり、無駄な部分を省いて、
いかに自分の好きなことや成長のための活動に集中できるかを重視しているのです。

Z世代のタイムパフォーマンス観:効率化と余白づくり

Z世代にとって「タイムパフォーマンス」は、常に効率だけを追求するものではありません。
むしろ「やらなくていいことをできるだけ減らし、その分の時間をより意味のあることに回したい」という考えに基づいています。

たとえば、動画コンテンツを倍速で視聴したり、スマホで複数のアプリを同時並行で操作したりするのは、
長年のデジタル環境に慣れ親しんだ経験から生まれた“当たり前”の習慣と言えるでしょう。

一方で、好きなことや学びたいことがあれば、その分野に関しては時間を惜しまないのも特徴です。
ネイルやゲーム、語学学習など、価値があると感じる対象に数時間投じることを厭わないという意見が多く聞かれます。

つまり、ただ漠然と「すべてを効率化しよう」と考えているわけではなく、
「時間をどこに投下すべきか」を自分なりに判断し、そこへの投資を惜しまないという柔軟さを持ち合わせているのです。

このような行動原理は、上の世代から見ると割り切りすぎに映ることもあります。
たとえば会社の飲み会や雑務など、従来は半ば“空気を読む”形で参加していた場面も、
Z世代は「それが自分にとって本当に必要かどうか」を考え、必要と感じなければためらうことなく断ります。

これを冷たい態度と受け取るか、主体的に時間を選択していると評価するかは見方次第ですが、
いずれにせよZ世代が「自分の時間をどう使うか」に強い意識を持っていることは確かです。

世界的な潮流と日本独自の特徴

こうした時間最適化の志向は、日本だけでなく海外の若者にも広がっているといわれています。

動画や音声コンテンツを倍速で消化したり、SNSや音声チャットを同時進行で楽しむ「マルチタスク」を当たり前とするのは、
デジタルネイティブ世代に共通する行動パターンです。

海外のZ世代では「自分の趣味や休息を優先するために、不必要な仕事や作業を徹底的に排除する」という事例も多く見られます。

ただし、欧米圏では日本以上に「ワークライフバランス」を重要視する流れが早くから定着しており、
企業や組織も柔軟な勤務制度や効率的な業務プロセスを導入しやすい土壌があるといえます。

非効率に感じる職務や制度に対しては、若手社員がはっきりと改善を求め、実際に変化をもたらすケースも少なくありません。
一方で日本は、近年ようやくリモートワークや副業制度が広がり始めていますが、
まだまだ業務慣習に対する見直しには慎重な企業も多いのが実情です。


とはいえ、日本のZ世代も生活全体の効率を高めたいという想いは海外と同様に強まっています。
そもそも日本には「タイムパフォーマンス」という言葉が比較的身近に浸透しているため、
「日常のささいな場面」から効率化を図っていく姿勢が際立っているともいえます。

移動時間の短縮やオンラインツールの積極利用はもちろん、SNSやメッセージアプリで情報を同時に処理するなど、
細やかな情報収集、リスクを考慮したツール選定など、日本独自の緻密さと効率性を両立させた時間活用が進んでいます。


企業が直面する課題:採用から定着まで

Z世代のタイムパフォーマンス志向は、企業の採用やマネジメントにも多大な影響を与えています。
採用活動で言えば、選考プロセスに時間がかかりすぎたり、選考結果の通知が遅い、質問への回答が遅いなど、
連絡が途絶えがちな企業には選考を辞退する若者も珍しくありません。

「いつ面接結果が来るかわからない」「たくさん書類を書かされる」など、
効率を損なう要素があると判断すると、候補者が離れてしまうリスクが高まるのです。

逆に言えば、スピーディーで透明性の高い選考フローを用意し、
早め早めに候補者へ次のステップを案内する企業は、Z世代から高く評価されると考えられます。

たとえば、面接の合否連絡を明確に伝える、オンライン面接を活用して移動時間の負担を減らすといった工夫は、
彼らの時間の大切さを尊重する姿勢を示すことにもつながります。

さらに、入社後の定着という観点でも「無駄な会議が多い」「残業が常態化している」「上司の考えに従うだけ」という環境だと、
Z世代は自分の時間が十分尊重されていないと感じるかもしれません。

たとえ業務量が多くても、働き方やスケジュールの裁量をある程度与えれば、若い人材は自ら工夫して成果を上げようとします。

タイムパフォーマンスを意識する彼らの良さを引き出すためには、時間管理の自由度と生産性重視の文化が欠かせないでしょう。

副業・転職志向とキャリアの主体性

Z世代は、一つの会社や職務に長く留まるだけでなく、さまざまな方法でキャリアを切り拓こうとしています。
その代表例が「副業」への関心の高まりです。もともと情報収集が得意な世代であり、

SNSやオンラインサービスを活用した副業が比較的始めやすい環境も背景にあります。
収入面だけでなく、自分の好きなジャンルで実績を積んだり、スキルを磨いて専門性を高めたりしたいという意欲が強いのが特徴です。


また、もし企業の風土や仕事の進め方が自分に合わなければ、早期に転職を考える人も少なくありません
以前のような「石の上にも三年」という発想は薄れ、「自分の価値観や成長に合わない職場に長くいるのは時間の浪費」と割り切る傾向があります。

その結果、短期間で離職や転職を決断する若者が増えているともいえますが、
それは必ずしも“責任感がない”とは限りません。Z世代なりの主体的なキャリア観が根底にあるからです。

ただし、彼らが会社にまったくロイヤルティを持たないわけではありません。
むしろ、自分たちの時間や可能性が十分に生かされる職場であれば長く貢献したいと考えることも多いのです。

大切なのは、本人がやりがいや意味を感じられる仕事を与え、時間の使い方をある程度コントロールできる柔軟性を認めること。
そうした環境が整えば、Z世代は早いスピードで成果を上げたり、新しいプロジェクトを発案したり等、力を発揮するでしょう。

今後の展望:タイムパフォーマンスを活かす組織づくり

Z世代が掲げるタイムパフォーマンス志向は、彼らだけにとってメリットがあるわけではありません。

企業全体で業務の無駄を省き、成果につながりにくい作業の削減や効率化を追求できれば、
全社員の生産性向上に結びつく可能性があります。

既存の慣習にとらわれるのではなく、若手の視点を取り入れて働き方改革を進めるチャンスでもあるのです。

具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

  • 会議や手続きのオンライン化
  • ミーティングの集約
  • ドキュメントの電子化など、テクノロジーの利活用
  • 在宅勤務やフレックス制度の積極導入
  • 「みんなが同じ時間に同じ場所にいる」ことを前提としないマネジメント

従来の根回しや形だけの長時間残業が不要になるのなら、むしろ企業文化のアップデートのチャンスといえます。

効率化を優先するあまり人と人とのつながりが希薄になっては困りますが、
Z世代もまったく人間関係を軽視しているわけではありません。

むしろチームビルディング、新規プロジェクトの立ち上げなど、
対面での交流が必要な場面を見極め、そこにしっかり時間を使うために、無駄な作業を削ろうとしているケースもあります。

タイムパフォーマンスは「本当に大切にしたいことへ集中する」ための考え方だと理解しておけば、
若い人材の行動に対して建設的なサポートができるはずです。

Z世代と協働し、彼らの効率化マインドと柔軟性を組織の強みに変えていくことが、
今後の企業成長には欠かせない視点となるでしょう。

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