「現場では優秀だったのに、管理職になった途端に動きが悪くなった」「研修を受けさせても、部下の育成やマネジメントが変わらない」。中堅・中小企業の経営者から、こうした相談を受けることがあります。
なかには、期待していた管理職が疲れ切ってしまい、突然退職を申し出るケースもあります。会社としては本人の適性や能力に原因を求めたくなりますが、実際には、それだけで説明できないことがほとんどです。
プレイヤー時代と同じ評価を続けている。役割を教えないまま昇格させている。研修後のフォローがない。こうした組織側の設計が変わらなければ、本人がどれだけ努力しても、マネージャーとして動きにくいままです。
この記事では、マネージャー育成がうまくいかない会社に共通する3つの原因を整理したうえで、中間管理職が役割を果たせるようになるまでの育成方法を紹介します。
「任せたいのに任せられない」「管理職が育たない」と感じている経営者や人事責任者の方は、自社の仕組みと照らし合わせながら読み進めてみてください。
中間管理職が機能しない会社で起きていること
管理職がうまく機能していない会社では、経営者・部下・管理職本人のそれぞれに問題が表れます。
「管理職に任せられない」「部下が指示待ちになっている」と感じている場合、本人の能力だけを問題にするのではなく、組織の仕組みに目を向ける必要があります。
現象1:経営者が「管理職に任せられない」
経営者や役員が「自分でやった方が早い」と感じ、現場の判断に入り続けている状態は、管理職が十分に機能していないサインの一つです。
もちろん、重要な案件や経営判断まで管理職に任せる必要はありません。しかし、本来は現場で判断できることまで社長の確認が必要になっていると、管理職を置いている意味が薄れてしまいます。
中堅・中小企業では、社長自身が営業や採用、顧客対応などで成果を出してきたケースも多く、「自分がやった方が確実」という感覚を持ちやすいものです。
その状態が続けば、管理職は自分で判断しなくなり、何かあるたびに社長へ確認するようになります。結果として、社長の判断できる量が会社の成長スピードを決める状態になってしまいます。
現象2:部下が「指示待ち」になっている
管理職が機能していない会社では、部下にも変化が表れます。その代表例が「言われたことしかやらない」「自分から提案しない」といった指示待ちの状態です。
ただし、これを若手社員の主体性だけの問題にするのは早計です。
たとえば、判断する権限が与えられていない。どこまで自分で決めていいのか分からない。自分で判断して失敗すると強く責められる。このような環境であれば、社員が上司の指示を待つようになるのは不思議ではありません。
「部下が動かない」のではなく、部下が自分で動きにくい組織になっていないかを確認する必要があります。
管理職には仕事を指示するだけでなく、部下が自分で判断できる範囲や基準を示し、少しずつ任せる仕事を増やしていく役割があります。
現象3:管理職本人が「つらい」「辞めたい」と感じている
経営者や部下だけでなく、管理職本人が疲弊しているケースもあります。
経営層からは売上や利益を求められ、部下からは現場の不満や相談を受ける。そのうえ自分自身もプレイヤーとして数字を持っていれば、マネジメントに使える時間はほとんど残りません。
特に中堅・中小企業では、管理職になった後もプレイヤー時代の業務をそのまま抱えていることがあります。責任だけが増え、仕事が減らない状態です。
最初は期待に応えようと頑張っていても、この状態が続けば「管理職になる前の方が働きやすかった」「この役職を続ける意味があるのか」と感じるようになります。
優秀な管理職の突然の退職も、本人の問題だけではなく、役割や権限、業務量、評価の設計に原因があるケースがあります。
管理職が機能していないときは「本人にマネジメント能力がない」と結論づける前に、管理職が力を発揮できる環境を会社側が用意できているかを確認することが大切です。
マネージャー育成が失敗する3つの原因
マネージャーが思うように育たない会社では、本人の能力や意欲よりも、育成の仕組みに問題があるケースが少なくありません。
特に中堅・中小企業では、次の3つが起きていないか確認してみてください。
原因1:プレイヤーの延長で管理職に昇格させている
よくあるのが、営業成績や業務スキルなど、現場で高い成果を出した社員をそのまま管理職に昇格させるケースです。
もちろん、現場を理解していることは管理職にとって大きな強みです。ただし、プレイヤーとして成果を出す能力と、マネージャーとしてチームを動かす能力は同じではありません。
| プレイヤー | マネージャー | |
|---|---|---|
| 成果の出し方 | 自分で成果を出す | チームで成果を出す |
| 時間の使い方 | 自分の業務を進める | 部下の育成やチーム運営に時間を使う |
| 求められる役割 | 個人の目標を達成する | チームの目標達成を支える |
| 判断する範囲 | 自分の仕事が中心 | 部下の仕事やチーム全体まで広がる |
たとえば営業職であれば、自分で契約を取っていた人が、昇格した翌日から「部下に契約を取らせる側」に変わります。自分で商談する方が早くても、部下に任せ、必要に応じて助言しながら成長させなければなりません。
ところが会社側が役割の違いを説明しないまま昇格させると、本人はこれまでと同じやり方で成果を出そうとします。
役職だけを変えて、仕事の仕方を変える支援をしていないことが、管理職育成で起こりやすい失敗です。
原因2:研修を受けさせて終わっている
管理職研修を実施しているのに、現場に戻ると何も変わらない。このような会社も少なくありません。
研修そのものが悪いわけではありません。問題は、研修で学んだ内容を実務で使うところまで設計されていないことです。
- 研修では1on1の方法を学んだが、実施する時間が確保されていない
- 部下への仕事の任せ方を学んでも、上司が細かく口を出してしまう
- 新しいマネジメント方法を試しても、評価されるのは個人の売上や成果だけ
- 研修後に振り返る機会がなく、いつの間にか以前のやり方に戻っている
研修を受けた直後は本人の意識も高まります。しかし、日常業務に戻れば目の前の仕事が優先され、学んだ内容は少しずつ使われなくなっていきます。
管理職育成では「何を学ばせるか」だけでなく、「学んだことを現場でどう実践させるか」まで考える必要があります。
研修後の1on1やOJT、上司からのフィードバックなどを組み合わせ、実務の中で試して振り返るところまでを育成として捉えることが大切です。
原因3:管理職になっても評価基準が変わらない
役職は変わったのに、評価される内容はプレイヤー時代とほとんど同じという会社もあります。
たとえば営業部門であれば、「個人売上」「契約件数」「新規商談数」といった個人の成果が評価の中心になっているケースです。
この評価制度のまま「もっと部下を育ててほしい」と言われても、管理職からすれば難しい話です。部下との1on1に1時間使うより、自分で商談を1件増やした方が評価につながるのであれば、そちらを優先するのは自然な行動です。
会社が「部下を育ててほしい」と求めながら、評価では「自分で成果を出してほしい」と伝えている状態になっていないかを確認する必要があります。
プレイングマネージャーであれば、個人の成果を評価から完全に外す必要はありません。ただし、チームの業績や部下の育成、マネジメントへの取り組みも評価対象にしなければ、管理職がマネジメントに時間を使いにくくなります。
役職だけでなく、任せる仕事と評価基準まで一緒に変えることが、マネージャー育成を機能させるための前提です。
管理職育成では「任せる」と「放す」を混同しない
管理職を育てるうえで重要なのが、仕事を「任せる」ことです。
ただし、「任せる=自由にやらせる」ではありません。仕事だけ渡して、その後は本人に丸投げする。それでは育成ではなく、単なる放置になってしまいます。
仕事を任せるのであれば、責任だけでなく「どこまで自分で決めていいのか」も一緒に渡す必要があります。
「任せたつもり」が丸投げになっているケース
たとえば、次のような状態です。
- 「この案件は任せる」と伝えただけで、その後は進捗を確認しない
- 本人が判断できる範囲を決めていない
- 相談すると「自分で考えて」と言うのに、失敗すると厳しく責める
- 上司の判断基準が共有されておらず、何を基準に決めればいいか分からない
これでは、任された側も動きにくくなります。最初は自分で考えて動いていた人でも、何度か判断を否定されれば「勝手に決めず、上司に確認した方が安全」と考えるようになります。
「任せたのに動かない」と感じている場合、本人の問題だけでなく、任せ方に問題がなかったかを振り返る必要があります。
仕事と一緒に「判断できる範囲」を渡す
管理職に仕事を任せるときは、少なくとも次の4つを共有しておくと進めやすくなります。
- 何を任せるのか
- どこまで自分で判断してよいのか
- どの段階になったら上司へ相談するのか
- いつ進捗を確認するのか
たとえば「採用を任せる」だけでは範囲が曖昧です。「一次面接の合否は任せる」「採用条件を変更するときは相談する」「毎週金曜日に進捗を確認する」と決めておけば、本人も判断しやすくなります。
最初から大きな判断をすべて任せる必要もありません。小さな判断から任せ、問題なくできるようになったら少しずつ範囲を広げていけばいいのです。
管理職育成では、仕事を任せること以上に「自分で判断できる経験を増やすこと」が重要です。
中小企業ほど「任せられない」が起きやすい
中小企業では、経営者自身が長年現場に入り、営業や採用、顧客対応などを自分で判断してきた会社も少なくありません。
そのため、いざ管理職に任せようとしても、「そのやり方では心配」「自分ならこうする」と途中で口を出したくなることがあります。
もちろん、会社に大きな損失が出る判断まで任せる必要はありません。一方で、失敗させたくないからと経営者がすべて判断してしまえば、管理職はいつまで経っても判断する経験を積めません。
「任せたいけれど任せられない」という状態を変えるには、経営者が我慢するだけではなく、任せる範囲と判断基準を決めることが必要です。
管理職の役割は、経営者から指示されたことを現場に伝えるだけではありません。少しずつ自分で判断できる範囲を広げ、経営者が現場の細かな判断から離れられる状態をつくることも、管理職育成の大切な目的です。
マネージャー育成を進める4つのステップ
マネージャー育成は、研修を受けさせるだけではうまくいきません。役割を決め、実際に判断する機会を渡し、現場でフォローしながら、最後に評価制度までつなげる必要があります。
ここでは、中堅・中小企業でも取り組みやすいように4つのステップに分けて解説します。
ステップ1:マネージャーに求める役割を明確にする
最初に決めたいのが「自社のマネージャーに何を任せるのか」です。
同じ「課長」「部長」という役職でも、会社によって求められる仕事は違います。売上管理までなのか、採用や評価にも関わるのか、部下の育成についてどこまで責任を持つのか。ここが曖昧なままでは、本人も何を優先すればいいのか分かりません。
少なくとも、次のような項目は昇格前に整理しておきましょう。
- 売上や利益、予算など、どこまで業績責任を持つのか
- 部下の育成について、どこまで責任を持つのか
- 採用や人事評価にどこまで関わるのか
- 自分で判断できる範囲と、上司への確認が必要な範囲
- 経営会議や重要な意思決定にどこまで参加するのか
できれば口頭だけで済ませず、簡単な文書にして本人へ渡します。昇格を伝えるタイミングで「この役職では、あなたにここまで任せたい」と説明し、認識をすり合わせておくと、その後のズレを減らせます。
役職名を与えるだけではなく「何を期待しているのか」まで伝えることが管理職育成のスタートです。
ステップ2:自分で判断する機会を増やす
役割を決めたら、次は実際に判断する仕事を任せます。
中堅・中小企業でよくあるのが、管理職に昇格させたものの、重要なことは結局すべて社長や役員が決めている状態です。これでは、いくら研修を受けても判断力は身につきません。
会社や役職によって異なりますが、たとえば次のような仕事から任せることができます。
- 部署内の予算配分
- メンバーの目標設定や評価
- 採用面接や選考の判断
- 取引先との条件交渉
- チーム内の業務分担や優先順位の決定
もちろん、最初からすべてを任せる必要はありません。「この金額までは自分で決めていい」「この条件に当てはまったら相談してほしい」といった形で、判断できる範囲を決めておきます。
そして、判断した結果だけを見るのではなく、「なぜそう判断したのか」を振り返ります。
判断力を育てるには、正解を教え続けるのではなく、自分で決めて、その判断を振り返る経験を積ませることが大切です。
任せておきながら、一度の失敗で「だから任せられない」と経営者がすべての権限を取り戻してしまえば、元の状態に戻ってしまいます。会社として許容できる失敗の範囲をあらかじめ決めておくことも必要です。
ステップ3:研修後もOJTでフォローする
管理職研修で学んだ内容を定着させるには、実務の中で継続してフォローする仕組みが必要です。
大がかりな制度を作る必要はありません。まずは次のような機会を定期的に設けるところから始められます。
- 上司との1on1で、部下の育成やチーム運営について相談する
- 管理職同士で、実際に困っている事例を共有する
- 経営者や役員から定期的にフィードバックを受ける
- 必要に応じて外部の研修やメンター、コーチを活用する
ポイントは、問題が起きたときだけ話すのではなく、あらかじめ時間を確保しておくことです。「余裕があるときにやる」では、忙しくなるほど後回しになります。
特に中小企業では、管理職同士で悩みを共有する機会が少なくなりがちです。営業部長が一人、人事責任者が一人といった組織では、同じ立場で相談できる相手が社内にいないこともあります。
月に一度でも管理職が集まり「最近困ったこと」「部下への対応で迷ったこと」を持ち寄るだけでも構いません。
管理職育成は一度の研修で完成するものではなく、実務で試し、相談し、振り返ることを繰り返して進めていきます。
ステップ4:評価制度をマネージャーの役割に合わせる
最後に見直したいのが評価制度です。
会社が「部下を育ててほしい」「チーム全体を見てほしい」と求めていても、評価されるのが個人売上だけであれば、管理職は自分の数字を優先します。
そこで、プレイヤーとしての成果だけではなく、マネージャーとしての成果も評価に含めます。
- 個人の成果だけでなく、チーム全体の業績を見る
- 部下の育成や目標達成への支援を評価する
- 1on1やフィードバックなど、必要なマネジメント行動を見る
- 必要に応じて部下や周囲からのフィードバックも参考にする
中小企業では、管理職自身が売上や顧客を持つプレイングマネージャーも多いため、個人の成果を評価から外す必要はありません。
大切なのは、「個人でどれだけ成果を出したか」だけで評価しないことです。
「個人の成果」「チームの成果」「部下の育成」をバランスよく評価することで、会社が管理職に求めている役割と、本人が時間を使う仕事を合わせやすくなります。
役割を決める、判断を任せる、実務でフォローする、評価する。この4つをつなげて初めて、マネージャー育成が日々の仕事の中で回るようになります。
マネージャー育成や役割・評価制度の設計にお悩みの企業様は、株式会社Tsumuguまでお気軽にご相談ください。
マネージャーが「突然辞める」会社の共通点
「まさか、あの人が辞めるとは思わなかった」。管理職の退職について、Tsumuguでもこうした相談を受けることがあります。
ただ、本人にとっては突然ではないケースがほとんどです。仕事の負担や評価への不満、今後のキャリアへの迷いが積み重なり、退職という結論に至っています。
特に注意したいのが、次の3つです。
パターン1:経営層と現場の板挟みになっている
管理職は、経営層と現場の間に立つ役割です。経営層からは売上や利益、目標達成を求められる一方、部下からは仕事量や評価、人間関係などの相談を受けます。
この調整自体は管理職の仕事ですが、問題は何でも管理職に集まってしまうことです。
さらにプレイングマネージャーとして自分の売上や顧客まで持っていれば、「部下の相談に乗っていたら自分の仕事が終わらない」という状態になりかねません。
管理職だから大丈夫だろうと仕事を集め続けると、責任だけが増え、本人が疲弊していきます。
特に管理職の人数が少ない中小企業では、一人に負担が集中しやすいため、役割だけでなく業務量も定期的に確認する必要があります。
関連記事:若手が辞める会社の共通点とは?早期離職の原因と中小企業が実践したい5つの定着対策
パターン2:マネジメントの仕事が評価されていない
管理職になって仕事は増えたのに「以前より評価されなくなった」と感じているケースもあります。
たとえば、部下との1on1に時間を使う。新人の商談に同行する。トラブルが起きれば間に入って調整する。こうした仕事はチームを動かすうえで必要ですが、個人売上のように成果が数字ですぐに表れるとは限りません。
それにもかかわらず、評価では個人売上や契約件数ばかりを見られていると、「管理職になって仕事は増えたのに、評価は下がった」という不満につながります。
会社が管理職に求めている仕事と、実際に評価している仕事がずれていないかを確認することが大切です。
関連記事:優秀な人が突然辞める会社の共通点とは?離職を防ぐエンゲージメント向上のポイント
パターン3:この先のキャリアが見えない
管理職になった後のキャリアが見えないことも、退職を考えるきっかけになります。
大企業であれば、課長、部長、本部長といった次のポストが用意されていることがあります。一方、中小企業では役職そのものが少なく、「この先はどうなるのだろう」と感じる人もいます。
ただし、キャリアは昇進だけではありません。新しい事業を任せる、複数部署を見る、採用や人材育成に関わる、専門性を高めるなど、役職を上げなくても仕事の幅を広げる方法はあります。
問題なのは次の役職がないことではなく「この会社にいて、これから何を経験できるのか」が本人に見えていないことです。
退職の兆候が見えたら早めに対話する
退職の意思を伝えられてから引き留めようとしても、本人の中ではすでに気持ちが固まっていることがあります。そのため、普段から仕事への向き合い方や発言の変化を見ておくことが大切です。
たとえば、次のような変化です。
- 以前より会社や仕事に対する発言が減った
- 1on1で今後のキャリアについて迷いを口にするようになった
- 部下への関わりが減り、自分の仕事だけをするようになった
- これまで積極的だった会議やプロジェクトへの関与が減った
もちろん、こうした変化があるからといって退職するとは限りません。ただ、複数の変化が続いているのであれば、仕事量や役割、今後のキャリアについて話すきっかけにはなります。
Tsumuguでは、通常の業務確認とは別に、本人のキャリアについて話す機会を設けることも提案しています。
「今後どんな仕事をやってみたいか」「現在の役割で困っていることはないか」「会社で経験したいことはあるか」といった話を、退職の気配が出てからではなく、普段からしておくことが大切です。
管理職の退職を防ぐために必要なのは、退職を申し出た後の引き留めではなく、不満やキャリアの迷いを早い段階で把握できる関係をつくっておくことです。
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マネージャー育成を経営課題として考える
マネージャー育成は、人事担当者だけに任せてうまくいくものではありません。
なぜなら、管理職にどこまで権限を渡すのか、何を評価するのか、将来どのポジションを任せるのかといった話は、人事だけでは決められないからです。
マネージャー育成は「研修の話」ではなく、会社を誰に、どこまで任せていくのかという経営の話です。
特に中小企業では、社長や役員が現場の意思決定を多く担っています。会社が大きくなるにつれて、その一部を管理職へ移していかなければ、いつまでも経営者が現場から離れられません。
経営会議でもマネージャーの状況を確認する
管理職の育成状況は、人事評価の時期だけ確認するのではなく、経営会議などでも定期的に話題にするとよいでしょう。
たとえば、次のような項目です。
- 各マネージャーに現在どこまで仕事を任せられているか
- 部下の育成やチーム運営で困っていることはないか
- プレイング業務が多すぎて、マネジメントの時間がなくなっていないか
- 次に管理職を任せられそうな社員はいるか
- 半年後、1年後にどの仕事や権限を任せたいか
売上や利益は毎月確認しているのに「誰が次の組織を担うのか」は年に一度しか話していない会社もあります。
管理職が育ってから仕事を任せるのではなく、将来任せたい仕事から逆算して育成することが大切です。
経営者自身もマネージャー育成に関わる
人事担当者は、研修の企画や1on1の仕組みづくり、評価制度の運用などを支援できます。一方で、経営者にしかできないこともあります。
たとえば「この事業を将来任せたい」「ここまでは自分で判断してほしい」「次はこの経験を積んでほしい」と伝えることです。
こうした話を経営者から直接聞くことで、管理職本人も会社から何を期待されているのかが分かります。
反対に、経営者が「人材育成は人事に任せている」という姿勢では、現場で権限を渡そうとしても、重要な場面になると社長が判断を取り戻してしまうことがあります。
経営者が管理職に何を任せるのかを決め、その成長に合わせて少しずつ権限を渡していく。ここは人事だけでは代わりにできない仕事です。
中小企業の組織課題をたどっていくと、経営と現場をつなぐ管理職が十分に機能していないケースは少なくありません。管理職が育てば、経営者がすべてを判断しなくても現場が動くようになり、会社としてできることも増えていきます。
関連記事:マネージャー育成の方法とは?組織を成長させるポイント・研修・実践事例
マネージャー育成の効果を測る3つの指標
マネージャー育成は、研修を実施してすぐに売上が伸びるような施策ではありません。そのため「研修を実施したか」ではなく、現場で何が変わったのかを定期的に確認する必要があります。
| 見る対象 | 確認するポイント | 具体例 |
|---|---|---|
| マネージャー本人 | 仕事の進め方や行動が変わっているか | 部下に任せる仕事が増えた/自分で判断できる範囲が広がった/部下との対話に時間を使うようになった |
| 部下・チーム | 自律性やチーム内の判断力が高まっているか | 部下からの提案が増えた/上司への確認回数が減った/チーム内で完結できる仕事が増えた |
| 経営層 | 現場への権限委譲が進んでいるか | 社長や役員が判断しなくても進む案件が増えた/管理職に任せられる業務や予算の範囲が広がった |
細かなKPIを増やしすぎる必要はありません。まずは次の3つの観点から確認してみましょう。
マネージャー本人の行動が変わっているか
最初に見るのは、本人の行動です。
「自分でやった方が早い」と仕事を抱えていた人が部下に仕事を任せるようになったか。問題が起きるたびに上司へ確認していた人が、自分で判断できるようになったか。部下との対話に時間を使うようになったか。
研修後のアンケートで「理解できた」と回答していても、実際の行動が変わっていなければ、育成が現場に定着したとは言えません。
「何を学んだか」よりも「仕事の進め方がどう変わったか」を見ることが重要です。
部下やチームに変化が出ているか
次に確認したいのが、部下やチームの変化です。
マネージャーが仕事を適切に任せられるようになれば、部下が自分で判断する場面も増えていきます。1on1やフィードバックが機能すれば、仕事上の悩みや課題も早い段階で共有されやすくなります。
たとえば、「部下からの提案が増えた」「上司への確認回数が減った」「チーム内で判断できる仕事が増えた」といった変化です。
マネージャー育成の成果を見るうえで、部下やチームにどのような変化が起きたかは重要な判断材料になります。
経営者が現場判断から離れられているか
中小企業では、この変化が分かりやすい指標になります。
以前は社長への確認が必要だった案件を部長が決められるようになった。採用の一次判断を現場に任せられるようになった。顧客対応について、一定の金額までは管理職が判断できるようになった。
このように、経営者や役員が判断しなくても進む仕事が増えていれば、管理職が機能し始めていると考えられます。
マネージャー育成の成果は、管理職本人の成長だけでなく、「経営者が手放せた仕事が増えたか」という視点でも確認できます。
四半期や半期ごとにこうした変化を振り返れば、「研修をやったけれど効果が分からない」という状態を避けやすくなります。育成が進んでいなければ、本人だけを責めるのではなく、任せる仕事や権限、評価制度、フォロー方法のどこに問題があるのかを見直しましょう。
まとめ
マネージャーが育たないとき、つい本人の力量や意欲を疑ってしまいます。しかし、現場で成果を出してきた社員を昇格させ、役割も権限も評価基準も曖昧なまま「管理職として頑張ってほしい」と求めるのは、本人にとってかなり無理のある話です。
マネージャーには、プレイヤーとは違う仕事があります。自分で成果を出すだけでなく、部下が判断できる環境をつくり、チームとして成果を出せる状態にしなければなりません。その切り替えを本人任せにせず、会社が役割と判断範囲を示す必要があります。
研修を一度実施しただけでは、日々の行動までは変わりません。実務の中で判断する機会を渡し、定期的に振り返り、マネジメントの成果が評価される制度まで整える。そこまでつながって初めて、育成は現場で機能し始めます。
まず確認してほしいのは、「自社のマネージャーに何を任せ、何を評価しているか」です。本人に期待している役割を、経営者と管理職の双方が同じ言葉で説明できないのであれば、育成研修を増やす前に、そこから整理したほうがよいでしょう。
株式会社Tsumuguでは、中堅・中小企業のマネージャー育成や役割設計、人事評価制度、1on1の運用まで支援しています。自社の管理職育成がうまくいかない原因を整理したい方は、お気軽にご相談ください。






















