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【人事兼任の方へ】採用・育成を仕組み化する3ポイント
「総務もやって、経理もやって、ついでに人事も頼む」。そう言われて、気づけば採用も評価も給与も全部抱えている。そんな毎日を送っていませんか。
人事を一人で、しかも他の仕事と兼任で回している。採用対応に追われ、1on1は後回し、評価シートは放置気味——。「ちゃんとやれていない」と感じながら、目の前の業務をさばくだけで一日が終わる。
この記事は、そんな人事兼任担当の方に向けたものです。お伝えしたいのは、たった一つ。全部を完璧にやろうとしないことです。代わりに、繰り返す作業だけを「仕組み」に変える。それだけで、月に2時間、いえ、もっと多くの時間が戻ってきます。今週から動ける3つのポイントを、具体的に整理します。
「仕組み化なんて、大企業の話でしょう」と思われるかもしれません。けれど、むしろ逆です。人手に余裕のある大企業より、一人で回している中小企業のほうが、仕組み化の効果は大きく出ます。なぜなら、あなたが奪われている時間が、そのまま会社の動きを止めているからです。一人の時間が空けば、人事全体が前に進みます。難しい話は抜きにして、明日から手を動かせる形でお伝えします。
目次
人事兼任が「ちゃんとやれない」のは、あなたのせいではありません
まず、はっきりお伝えしたいことがあります。人事を兼任で回していて「手が回らない」のは、能力や努力の問題ではありません。構造の問題です。
考えてみてください。本来、人事専任が複数人で分担する仕事を、一人が片手間でやっている。採用、評価、給与、労務、勤怠、就業規則——どれも専門性が要る領域です。これを全部、しかも本業の合間にこなすのは、そもそも無理があります。
だから、最初に発想を変えてください。「全部きちんとやる」ではなく、「繰り返す作業だけを仕組み化する」へ。
ここで役立つ考え方があります。仕事は、「判断」「設計」「作業」の3つの層に分けられます。
- 判断:誰を採るか、どう評価するか。あなたにしかできない
- 設計:採用の流れや評価の基準をどう作るか。経験が要る
- 作業:日程調整、メール送信、データ入力。繰り返しが多い
このうち、仕組み化すべきは「作業」の層です。判断や設計はあなたの大事な仕事ですが、作業は型にすれば誰でも・いつでも回せます。兼任担当が時間を奪われているのは、たいていこの「作業」の層なのです。
優先順位はシンプルです。「毎月、必ず繰り返していること」から仕組み化する。月次で発生する作業を型にできれば、その分の時間が毎月戻ってきます。
ここで多くの方が陥る罠があります。それは、「いつか時間ができたら、まとめて整えよう」と考えることです。けれど、その「いつか」は来ません。兼任で回している限り、まとまった時間が空くことはまずないからです。だからこそ、大がかりな改革ではなく、小さな型を一つずつ。これが、忙しい人事兼任担当にとって唯一現実的なやり方です。
もう一つ大切なのは、「自分が我慢すればいい」と抱え込まないことです。兼任担当が倒れたら、人事機能そのものが止まります。あなたの時間を守ることは、わがままではなく、会社を守ることです。仕組み化は、そのための投資だと考えてください。
仕組み化の優先度は、2つの軸で決める
「仕組み化しよう」と思っても、何から手をつけるかで迷います。やみくもに始めると、効果の薄いところに労力を使ってしまいます。そこで、優先度を2つの軸で決めます。
整理の基本は、分類して、優先順位をつけることです。次の2軸で、あなたの業務を並べてみてください。
- 縦軸:繰り返しの頻度(月次 / 週次 / 随時)
- 横軸:1回あたりの所要時間(長い / 短い)
このとき、最優先になるのは「頻度が高く、時間も長い」業務です。たとえば、採用対応、面接の日程調整、評価シートの集計など。ここを型にすると、効果が一番大きく、すぐに体感できます。
| 時間が長い | 時間が短い | |
|---|---|---|
| 頻度が高い | 最優先で仕組み化 | 次に着手 |
| 頻度が低い | 余裕があれば | 後回しでOK |
逆に、「年に一度しか発生せず、時間も短い」業務を頑張って仕組み化しても、得られる時間はわずかです。完璧主義を手放し、効果の大きいところから手をつける。これが、限られた時間で成果を出すコツです。
この優先順位づけは、紙とペンでもできます。一度、自分の人事業務を10個ほど書き出して、この2軸のどこに入るか並べてみてください。頭の中だけで考えていると、つい「気になっていること」から手をつけてしまいますが、書き出すと「本当に時間を奪っているもの」が客観的に見えてきます。数字で見える化できるものは、ざっくりでいいので「月に何時間使っているか」を添えると、優先度がさらにはっきりします。
そして、一度決めた優先順位は、固定でなくて構いません。採用の繁忙期と落ち着いた時期では、時間を奪う業務が変わります。季節ごとに見直して、「今、一番時間を取られているもの」から仕組み化する。この柔軟さも、兼任担当には大切です。
今週から動ける、仕組み化の3ポイント
ここからは具体策です。多くの人事兼任担当に共通する「頻度が高く、時間も長い」業務を3つ取り上げ、今週から動ける形でお伝えします。すべてを一度にやる必要はありません。まずは①から始めてください。
3つに共通するのは、どれも「特別なツールや予算がなくても、今日から着手できる」ことです。立派なシステムを導入する前に、まずは手元のメールソフトやエクセル、共有フォルダでできる範囲から型を作る。それだけでも、体感できるほど時間は戻ってきます。道具を増やすのは、型が回り始めてからで十分です。
ポイント①:採用対応をテンプレート化する
採用対応は、兼任担当の時間をもっとも奪う業務です。応募が来るたびに、ゼロから文面を考えていませんか。
今週やるのは、次の3つのテンプレートを作ることだけです。
- 応募者への初動メール(受付のお礼と、次のステップの案内)
- 面接の日程調整メール(候補日を複数提示する型)
- 不合格のお知らせ(丁寧かつ簡潔に)
この3つは、毎回ほぼ同じ内容です。一度作っておけば、応募が来るたびにコピーして少し直すだけ。一通あたり10分かかっていたものが、2分で済むようになります。
ポイントは、「完璧な名文」を目指さないことです。テンプレートは、伝わればよいのです。むしろ、シンプルで分かりやすい文面のほうが、応募者にも好印象を与えます。一度作って、何度か使ってみて、しっくりこない部分だけ直す。その繰り返しで、自社に合った型に育っていきます。
さらに余裕が出てきたら、「応募から面接までの返信スピード」を決めておくのもおすすめです。たとえば「応募には24時間以内に初動メールを返す」と決めておく。返信が早い会社は、それだけで応募者の志望度が上がります。テンプレートがあれば、この速さは無理なく実現できます。
ポイント②:1on1のアジェンダを定型化する
1on1を「やらなきゃ」と思いながら、毎回ぶっつけ本番になっていませんか。「最近どう?」から始めて、何を話すか決まっていない。これだと、準備にも実施にも時間がかかり、しかも中身が薄くなります。
そこで、話すテーマを4つに固定します。
- 仕事の進捗(今、何に取り組んでいるか)
- 困っていること(壁になっていることはないか)
- 成長の実感(できるようになったことは何か)
- 組織への要望(働きやすさで気になることは)
このアジェンダを事前に相手へ送っておけば、当日の準備はほぼゼロ。相手も話す内容を考えてくるので、対話の質が上がります。毎回ゼロから考える負担が消えます。
「特になしで終わってしまう」という悩みも、この4テーマで解消します。「最近どう?」だと「普通です」で終わりますが、「成長を実感できたことは?」と具体的に問えば、相手も答えやすくなります。問いを型にすることが、対話を深める近道です。
なお、1on1は「やって終わり」にせず、簡単でいいので記録を残してください。前回何を話したかが分かると、次回の対話が一段と意味を持ちます。「前回気にしていたあの件、どうなった?」の一言が、相手に「ちゃんと見てくれている」という安心感を与えます。
ポイント③:社員データベースを「最小設計」で作る
社員の情報が、紙の履歴書、エクセル、個人の記憶にバラバラに散らばっていませんか。これだと、必要なときに探すだけで時間が溶けます。
ただ、いきなり立派なデータベースを作る必要はありません。最初は3項目だけで十分です。
- 在籍状況(いつ入社し、今どの部署か)
- 採用経路(どの媒体・きっかけで入ったか)
- 1on1の実施状況(最後にいつ話したか)
この3つを一元管理するだけで、「あの人、最近1on1できてないな」「この媒体からの入社が多いな」といった気づきが、探さなくても見えるようになります。項目は、必要になったら少しずつ増やせば十分です。
ここで陥りがちなのが、「どうせ作るなら完璧に」と、最初から何十項目も用意してしまうことです。けれど、項目が多いほど入力が面倒になり、結局更新されなくなります。更新されないデータベースは、ないのと同じです。だからこそ、続けられる最小限から始める。3項目なら、入社時にさっと埋めるだけで維持できます。
この社員データベースは、いざというときにも効きます。たとえば、急に「過去3年の採用経路別の定着状況を教えて」と経営者に聞かれたとき。情報が散らばっていれば丸一日かかる作業も、一元管理していれば数分で答えられます。日々の小さな入力が、ここで大きな差になります。
優先順位は、①→②→③の順です。まず採用対応のテンプレート化だけを今週やってみてください。一つ仕組みができると、「これならできる」という手応えが生まれ、次に進みやすくなります。

一人で抱えない。仕組みで支える
3つのポイントを実行すると、繰り返し作業に奪われていた時間が戻ってきます。けれど、ここで一つ、根本的な課題に触れさせてください。
テンプレートやアジェンダ、最小限のデータベース——これらを「バラバラのツールやファイル」で管理していると、結局また散らかります。メールのテンプレはどこ、1on1の記録はあのフォルダ、社員情報は別のエクセル。管理するもの自体が増えて、かえって手間が増える、という本末転倒が起こりがちです。
ここで効いてくるのが、採用から育成までを一つの場所で管理するという発想です。応募者の情報、選考の進み具合、入社後の1on1の記録、定着の状況。これらが一画面でつながっていれば、探す時間も、転記する手間もなくなります。
私たちが提供している人事データ基盤「ツムイトHR」は、まさにこの「一人で抱える人事を、仕組みで支える」ことを目指したものです。社員データベースと1on1の支援を一つにまとめ、採用から定着までを一本の線で見られるようにする。兼任担当の方が、判断や設計という本当に大事な仕事に時間を使えるよう、繰り返しの作業を引き受けます。
もちろん、忘れてはいけないことがあります。誰を採るか、どう育てるかという判断は、最後まであなたの仕事です。仕組みやツールは、その判断を支える土台にすぎません。けれど、土台が整えば、あなたが本来注力すべきところに、もっと時間を割けるようになります。
「中小企業でも、人事の機能は体系化すれば再現できる」。これは、私たちが現場で確かめてきたことです。一人だから無理、ではありません。一人だからこそ、仕組みで支える。その発想が、兼任担当の毎日を少しずつ軽くしていきます。
そしてもう一つ。仕組み化が進むと、思わぬ副産物があります。それは、あなたが休んでも、引き継いでも、人事が止まらなくなることです。テンプレートがあり、1on1の記録が残り、社員情報が一元化されていれば、もしあなたが不在でも、誰かが最低限の対応をできます。これは、属人化していた人事が「会社の資産」に変わるということです。一人で抱えていた知識が、形になって残る。それが、長い目で見たときの最大の価値です。
一人で抱える人事を、仕組みに変える。まずは御社の人事業務の現状を、数字で見える化することから始めませんか。
よくある質問
Q. 仕組み化と言われても、時間がないから後回しになります。
A. その気持ち、よく分かります。だからこそ「まず1つだけ」をおすすめしています。3つ全部やろうとすると挫折します。今週は採用メールのテンプレート1つだけ。それで浮いた時間を、次の仕組み化に充てる。この順番なら、忙しくても回り始めます。
Q. 専門知識がなくて、何が正解か分かりません。
A. 完璧な正解を最初から作る必要はありません。テンプレートもアジェンダも、まず作って、使いながら直せば十分です。むしろ、使ってみて初めて「ここはこう変えよう」が見えてきます。最初の一歩のハードルを、できるだけ下げてください。
Q. ツールを入れても、結局使いこなせない気がします。
A. よくある不安です。大切なのは、最初から全機能を使おうとしないこと。まずは社員情報の一元管理など、効果がすぐ分かる一点から始める。運用が回り始めてから少しずつ広げれば、無理なく定着します。
Q. 仕組み化すると、人と向き合う時間が減りませんか?
A. 逆です。仕組み化するのは「作業」の層だけです。日程調整やデータ入力に取られていた時間が減れば、その分、社員一人ひとりと向き合う時間が増えます。仕組み化の目的は、効率化そのものではなく、本当に大事なことに時間を使えるようにすることです。
まとめ
人事兼任担当が時間を取り戻すために、大事なことを整理します。
- 発想を変える:全部やるのではなく、「作業」の層だけを仕組み化する
- 優先度を決める:「頻度が高く、時間も長い」業務から手をつける
- 3つのポイント:①採用対応のテンプレート化 → ②1on1アジェンダの定型化 → ③社員DBの最小設計
- 一人で抱えない:バラバラの管理ではなく、一つの場所でつなげる
人事を一人で兼任することは、決して楽ではありません。けれど、「全部を完璧に」を手放して、繰り返す作業を仕組みに変えていけば、毎日は確実に軽くなります。空いた時間を、本当に大事な「判断」と「人と向き合うこと」に使う。それが、勘と気合いだけに頼らない人事への第一歩です。
Tsumuguでは、弊社が伴走しているクライアント企業様での実例をもとに、人事を兼任で回す中小企業の業務設計を、データとAIで伴走しています。「何から手をつければいいか分からない」という段階からで構いません。まずは御社の人事業務がいまどうなっているか、一緒に整理するところからご相談ください。
一人で抱える人事を、仕組みに変える。まずは御社の人事業務の現状を、数字で見える化することから始めませんか。
この記事を書いた人
塔筋 大樹(とうすじ だいき)— 株式会社Tsumugu 代表
株式会社リクルートを経て、現在は株式会社アド・イーグルにて営業・人事・企画領域を執行役員として管掌。
あわせて株式会社Tsumuguの代表として、中小企業の採用・育成・評価・定着に関する人事課題に対し、データとAIを活用した伴走支援を行っている。