社員に「あなたの仕事は何ですか」と尋ねたとき、担当している作業だけでなく、その仕事が誰にどのような価値を届けているのかまで答えられるでしょうか。
同じ業務をしていても、仕事の目的や自分の役割を理解している人と、目の前の作業として受け止めている人では、働き方やモチベーションに大きな違いが生まれます。
こうした仕事の中に価値や目的を見出すことを「意味付け」といいます。意味付けができるようになると、社員は仕事への納得感や貢献実感を持ちやすくなり、指示を待つだけではなく、自ら考えて行動できるようになります。
ただし、経営者や上司が「この仕事には意味がある」と一方的に伝えるだけでは、社員にとっては精神論や価値観の押し付けになりかねません。大切なのは、社員自身が対話を通じて仕事の意味を見つけ、自分の言葉で説明できる状態をつくることです。
本記事では、意味付けの意味や働きがいとの関係、組織にもたらすメリットを整理したうえで、MVVや1on1、称賛・共有を活用して働きがいを高める4つのステップを解説します。
意味付けで働きがいを高める方法【まず全体像を解説】
社員に「あなたの仕事は何ですか?」と聞いたとき、どのような答えが返ってくるでしょうか。
「営業です」「問い合わせ対応です」と業務内容を答える人もいれば「お客様の課題を解決する仕事です」「安心してサービスを利用してもらう仕事です」と、その先にある価値まで答える人もいます。
この違いに関係するのが、仕事への「意味付け」です。
意味付けとは、仕事や日々の出来事の中に、自分なりの価値や意味を見出すことです。
仕事の目的や自分の役割を理解できるようになると、目の前の業務を単なる作業としてこなすのではなく「何のためにやるのか」を考えて行動しやすくなります。
ただし「この仕事には意味がある」と会社が伝えるだけでは不十分です。会社として仕事の目的や価値観を示しながら、社員自身が仕事の意味を考えられる環境をつくる必要があります。
つまり、意味付けは社員個人の考え方だけを変えればよいものではありません。
「会社として何を大切にするのか」を示し、「本人は仕事をどう捉えているのか」を対話で確認し、その考え方や行動を日常の中で育てていく。この流れをつくることが大切です。
また、意味付けは一度研修を行えば終わるものでもありません。1on1や朝礼、社内チャット、評価など、普段から使っている場に組み込んで続けていく必要があります。
株式会社Tsumuguでは、意味付けだけを単独で導入するのではなく、まず現場の状況を確認し、組織のどこに問題があるのかを整理したうえで支援しています。
「社員に仕事の意味が伝わっていない」「1on1を実施しているものの形骸化している」など、現在感じている問題からでもご相談いただけます。
また、意味付けを組織に根づかせるには、日々の対話を続けられる仕組みも欠かせません。ツムイトHRでは、1on1を通じた社員との対話や情報の蓄積に加え、採用・育成・評価まで一貫して管理できます。
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意味付けとは?
意味付けとは、仕事や日々の出来事の中に、自分なりの価値や意味を見出すことです。
仕事における意味付けでは「何をするのか」だけでなく「なぜこの仕事をするのか」「誰にどのような価値を届けているのか」まで考えることが大切です。
たとえば、同じ顧客対応でも「問い合わせに回答する作業」と捉える人もいれば、「顧客の不安を解消し、安心してサービスを利用してもらう仕事」と捉える人もいます。担当する業務は同じでも、仕事の意味は捉え方によって変わります。
| 仕事に対する捉え方の違い | ||
|---|---|---|
| 状況 | 意味を見出せている状態 | 意味を見出せていない状態 |
| 日々の業務 | 誰にどんな価値を届ける仕事か考える | 指示された作業としてこなす |
| 失敗したとき | 原因や学びを次の仕事に活かす | 失敗した事実だけを受け止める |
| 困難な仕事 | 取り組む目的や得られる経験を考える | 負担の大きい仕事として捉える |
ここで注意したいのは、意味付けは、何でもポジティブに考えることではないという点です。
失敗を無理に「良い経験だった」と考えたり、つらい仕事を「成長のため」と納得したりする必要はありません。起きたことを振り返り、「何が問題だったのか」「何を学べるのか」「次にどう活かすのか」と考えることも意味付けです。
また、仕事に対する捉え方は、同じ出来事でも人によって異なります。その違いに影響するもののひとつが「メンタルモデル」です。
意味付けに影響する「メンタルモデル」
メンタルモデルとは、過去の経験や知識などをもとに、物事をどのように捉えるかを左右する思考の枠組みです。
たとえば、日常の中で犬に遭遇したとします。同じ犬を見ても、犬が好きな人は「かわいい」と感じる一方、過去に犬に追いかけられた経験がある人は「怖い」と感じるかもしれません。
仕事でも同じです。上司から新しい仕事を任されたとき、「期待されている」と受け取る人もいれば、「仕事を押し付けられた」と感じる人もいます。
同じ出来事でも、これまでの経験や価値観によって受け止め方は変わるため、会社や上司が一方的に仕事の意味を伝えるだけでは十分ではありません。
だからこそ、1on1などの対話を通じて本人の考えを聞き、「この仕事は誰の役に立っているのか」「今回の経験から何を得られそうか」と一緒に考えることが重要です。
意味付けは感情や行動の捉え直しにもつながる
仕事では、達成感や喜びだけでなく、不安、悔しさ、怒りなどさまざまな感情が生まれます。組織において感情が重要であることは、以前から組織研究でも指摘されています。
・組織とは「情緒的な舞台」である(※1)
・「感情の問題を抜きにして組織現象をとらえることはできない」(※2)
※1 出典元:Fineman,1993
※2 出典元:金井壽宏・高橋潔「組織理論における感情の意義」『組織科学』41巻4号(2008)
意味付けによって出来事の捉え方が変われば、そこで生まれた感情を整理し、次の行動を考えるきっかけにもなります。
たとえば、仕事で失敗したときに「自分は仕事ができない」で終わるのではなく、「確認方法に問題があった」「次からチェック方法を変えてみよう」と考えられれば、次の行動につなげられます。
会社や上司に求められるのは、社員を無理に前向きにさせることではなく、本人が仕事や経験の意味を自分なりに整理できるよう対話を重ねることです。
働きがいとは?
意味付けによって働きがいを高めるには、そもそも「働きがいとは何か」を整理しておく必要があります。
働きがいに一つの決まった定義があるわけではありませんが、仕事に価値や意義を感じ、前向きに取り組めている状態を指す言葉として使われています。
弊社では、働きがいを「働くことを通じて、人生が物的にも精神的にも豊かになること」と捉えています。
そして、働きがいを考えるうえで重要なのが「働きやすさ」と「やりがい」の両方です。
働きがいには「働きやすさ」と「やりがい」の両方が必要
働きやすさとやりがいは似ていますが、意味は異なります。
| 働きがいを構成する2つの要素 | ||
|---|---|---|
| 働きやすさ | やりがい | |
| 主な要素 | 給与・待遇 労働時間・休日 職場環境 人間関係・制度 |
達成感 成長の実感 貢献感・使命感 裁量・挑戦の機会 |
給与や休日、職場環境が整っていても、「この仕事を続けたい」「この仕事には意味がある」と思えなければ、十分な働きがいにはつながりません。
反対に、仕事そのものに大きなやりがいがあっても、長時間労働や低賃金など働く環境に問題があれば、長く働き続けるのは難しくなります。
いわゆる「やりがい搾取」は、その典型です。仕事の意義や成長だけを強調し、待遇や労働環境の問題を軽視すれば、やりがいは働きがいにはつながりません。
働きがいを高めるには、「働きやすさ」と「やりがい」のどちらか一方ではなく、両方を整えていくことが大切です。
ハーズバーグの二要因理論から考える働きがい
働きやすさとやりがいの関係を考えるうえで参考になるのが、ハーズバーグの「二要因理論」です。
二要因理論では、仕事に関する要因を大きく「衛生要因」と「動機づけ要因」に分けて考えます。
| 衛生要因と動機づけ要因の違い | ||
|---|---|---|
| 衛生要因 | 動機づけ要因 | |
| 特徴 | 不足すると不満につながりやすい | 満たされると仕事への満足につながりやすい |
| 例 | 給与 労働条件 職場環境 人間関係など |
達成 承認 仕事そのもの 責任 成長など |
ポイントは、職場への不満を減らすことと、仕事への満足を高めることは同じではないという点です。
たとえば、給与を上げたり残業を減らしたりすれば、会社への不満は減らせるかもしれません。しかし、それだけで仕事そのものに意味を感じたり、成長を実感したりできるとは限りません。
「不満を減らすこと」と「仕事から得られる充実感を高めること」の両方に目を向ける必要があります。
特に中小企業では、給与や福利厚生などを大企業と同じ水準まで引き上げるのが難しいケースもあります。
もちろん、労働条件の改善を後回しにしてよいわけではありません。そのうえで、自分の仕事が誰の役に立っているのか、会社の中でどんな役割を担っているのかを伝える「意味付け」も、働きがいを高める重要な取り組みになります。
働きがい・やりがい・生きがい・モチベーションの違い
働きがいと混同されやすい言葉に、「やりがい」「生きがい」「モチベーション」があります。
厳密な定義は文脈によって異なりますが、この記事では次のように整理します。
| 働きがいと似た言葉の違い | ||
|---|---|---|
| 言葉 | 意味 | 例 |
| 働きがい | 働くことを通じて得られる総合的な価値 | 働きやすさ+やりがい |
| やりがい | 仕事や活動から得られる手応えや充実感 | 達成・成長・貢献・承認など |
| 生きがい | 人生を生きるうえで感じる喜びや価値 | 仕事・家族・趣味・地域活動など |
| モチベーション | 行動を起こしたり継続したりする動機 | 目標達成・報酬・評価・興味など |
特に注意したいのが、「働きがい=やりがい」ではないという点です。
やりがいは働きがいを構成する重要な要素ですが、それだけでは十分ではありません。安心して働ける環境があり、そのうえで仕事の価値や成長、貢献を実感できる状態を目指すことが大切です。
意味付けは、このうち「仕事の価値や意義を実感する」という部分に働きかける取り組みだと考えると、両者の関係がわかりやすくなります。
意味付けで働きがいを高めるメリット
意味付けというと、社員一人ひとりの考え方の問題に見えるかもしれません。しかし、本人の意識だけで仕事の意味を見つけてもらうのには限界があります。
会社として「何のために事業を行うのか」「どのような価値を届けたいのか」を示し、それを社員が自分の仕事や役割と結びつけられる状態をつくることが大切です。
会社が示す方向性と、社員自身が感じる仕事の意味がつながることで、仕事への納得感や貢献実感が生まれやすくなります。
意味付けがうまく機能すると、次のような変化が期待できます。
仕事への納得感や貢献実感が高まる
日々の仕事が「何のためにやっているのかわからない」という状態では、どうしても目の前の作業をこなすことが中心になってしまいます。
一方で、自分の仕事が誰の役に立ち、会社や顧客にどのような価値を生んでいるのかがわかれば、同じ業務でも受け止め方は変わります。
たとえば、営業事務であれば「営業から依頼された資料を作る」だけではなく、「営業担当者が顧客への提案に集中できる状態をつくる」と考えることもできます。
自分の仕事と、その先にある顧客や同僚への貢献がつながることで、仕事への納得感や自分の役割に対する実感を持ちやすくなります。
これは、何でも前向きに考えるという話ではありません。「自分の仕事が組織の中でどのような役割を持っているのか」がわかることが重要です。
自分で考えて行動する社員が増える
仕事の目的がわからなければ、社員は「言われた通りにやる」ほうが安全です。指示された作業を正確にこなすことが仕事になり、判断に迷ったときも上司の指示を待つようになります。
反対に、仕事の目的まで理解していれば、細かな指示がなくても目的から逆算して考えやすくなります。
たとえば、「この仕事は顧客のどんな困りごとを解決しているのか」「このルールは何を防ぐためにあるのか」と考えられれば、今のやり方に問題があったときにも改善案を出しやすくなります。
意味付けによって仕事の「やり方」だけでなく「目的」まで共有できれば、現場で判断できる範囲も広がります。
実際に弊社が支援した企業でも、採用担当者が自ら採用広報用のSNSを立ち上げた事例がありました。採用活動を単なる応募者対応としてではなく、「会社の魅力を社外へ伝える仕事」と捉えたことで、新しい行動につながった例です。
業務改善や生産性向上につながる
社員が仕事の目的を理解すると、「今までこうしていたから」という理由だけで業務を続けるのではなく、目的に照らして仕事の進め方を見直しやすくなります。
不要な作業を減らしたり、手戻りを防いだり、顧客にとってより良い方法を提案したりと、日々の業務改善につながる可能性があります。
もちろん、意味付けをしただけで売上や生産性が上がるわけではありません。ただし、社員一人ひとりが仕事の目的から考えられるようになることは、業務の質を高める土台になります。
採用でも自社や仕事の魅力を伝えやすくなる
意味付けは、今いる社員だけでなく採用にも活かせます。
社員が「自社は何のためにこの事業をしているのか」「自分の仕事は誰にどんな価値を届けているのか」を理解していれば、求職者にも仕事の魅力を具体的に説明できます。
求人や採用サイトに「やりがいのある仕事です」と書くだけでは、なかなか魅力は伝わりません。
実際に働いている社員が、自分の仕事の価値や面白さを自分の言葉で話せること自体が、採用広報の材料になります。
特に中小企業では、大企業と比べて知名度や待遇だけで採用競争をするのが難しいケースもあります。だからこそ、「何のために働く会社なのか」「この仕事にはどんな価値があるのか」を具体的に伝えることが重要です。
【実践編】意味付けで働きがいを高める方法
では、仕事の意味付けを実際の組織づくりに取り入れるには、何から始めればよいのでしょうか。
大切なのは、いきなり社員一人ひとりに「仕事の意味を考えてもらう」ことではありません。まず会社として大切にする価値観や仕事の目的を明確にし、そのうえで社員自身が自分の仕事とのつながりを考えられる環境をつくります。
会社から一方的に意味を与えるのではなく、会社が示す方向性と社員自身の価値観を対話によってつないでいくことがポイントです。
ここからは、それぞれの進め方を具体的に見ていきます。
ステップ1:MVVを現場の言葉へ翻訳する
最初に確認したいのが、会社として「何のために事業を行うのか」「どこを目指すのか」「何を大切にするのか」が社員に伝わっているかです。
その土台になるのが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)です。
MVVは会社の方向性を示すだけでなく、社員が「自分の仕事は何につながっているのか」を考える手がかりにもなります。
ただし、MVVを策定して社内に掲示するだけでは十分ではありません。
たとえば「顧客に新しい価値を提供する」という言葉があっても、営業、採用、人事、経理では日々の仕事とのつながり方が異なります。
「営業にとってはどういう行動なのか」「人事なら何を大切にすべきなのか」と、部署や仕事ごとの具体的な場面まで落とし込んで初めて、自分の仕事とMVVを結びつけやすくなります。

弊社が支援した企業でも、MVV自体はすでに整備されていました。ただ、社員が普段の仕事と結びつける機会がなく、「会社が掲げている言葉」で終わっていました。
MVVを新しく作ること以上に、すでにある言葉を現場の仕事まで落とし込むことが重要です。
関連記事:MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?作り方・浸透方法を事例付で解説
ステップ2:バリューを具体的な行動へ落とし込む
MVVの中でも、日々の仕事と特に結びつけやすいのがバリューです。
たとえば「挑戦を大切にする」「顧客起点で考える」といったバリューを掲げていても、人によって解釈が違えば、実際の行動にはつながりません。
そこで、「自社にとって挑戦とはどんな行動なのか」「顧客起点で考えている状態とは何か」まで具体化します。
抽象的な価値観を、社員が日々の仕事で判断に使える言葉まで落とし込むことが大切です。
たとえば「顧客起点」というバリューであれば、「依頼されたことだけをこなすのではなく、その依頼が生まれた背景まで確認する」といった行動に置き換えられます。
こうした具体例があると、社員も「この行動が自社らしい仕事なのか」と判断しやすくなります。
すでにバリューが具体的な行動指針になっている場合は、新しく作り直す必要はありません。抽象的な表現にとどまっている場合は、現場で起きる場面とセットで整理してみましょう。
ステップ3:1on1で本人の考えや価値観を引き出す
会社としての方向性を整理したら、次は社員一人ひとりとの対話です。
同じ仕事をしていても、何にやりがいを感じるかは人によって違います。「顧客に喜ばれること」が嬉しい人もいれば、「難しい仕事ができるようになること」や「チームを支えること」に意味を感じる人もいます。
上司が「この仕事にはこんな意味がある」と答えを教えるのではなく、本人が何を大切にしているのかを知ることから始めます。
そのために活用しやすいのが1on1です。
普段の業務報告だけでは見えにくい「最近うれしかった仕事」「違和感を覚えた出来事」「今後やってみたいこと」などを聞くことで、本人が仕事のどこに価値を感じているのかが見えてきます。
パーソル総合研究所の「職場での対話に関する定量調査」では、職場で本音を話せていない人も少なくありません。意味付けについて対話するうえでも、まず安心して話せる関係をつくることが前提になります。
※出典元:パーソル総合研究所『職場での対話に関する定量調査』(2024)
ここで上司が「つまり、こういうことだね」とすぐに結論を出してしまうと、上司による意味の押し付けになりかねません。
本人の話を聞きながら問いを重ね、自分の仕事や経験について本人自身が考えられるようにすることが重要です。
ステップ4:仕事の意味が伝わる事例を称賛・共有する
1on1で良い対話ができても、それだけでは個人の中で終わってしまいます。組織全体に広げるには、日々の仕事から具体的な事例を拾い、共有していくことが大切です。
たとえば、次のような出来事です。
・クレーム対応を通じて、顧客が困っていた本当の原因に気づいた
・これまでの業務手順を見直し、チーム全体のミスを減らした
・忙しそうな後輩に声をかけ、困っていた仕事を一緒に整理した
単に「○○さん、よく頑張りました」と褒めるだけではなく、「その行動が誰にどんな価値を生んだのか」「自社のどの価値観につながっているのか」まで伝えます。
具体的な行動と、その行動が生んだ価値をセットで共有すると、「この会社では何を大切にしているのか」が社員にも伝わりやすくなります。
共有するために新しい制度を作る必要はありません。朝礼や週報、社内チャット、1on1、月次会議など、すでにある場を活用できます。
一度大きな研修を実施するよりも、普段の仕事の中で小さな事例を拾い続けるほうが、意味付けを日常の習慣にしやすくなります。

意味付けを定着させるには、特別な施策を一度やって終わりではなく、普段の1on1や朝礼、会議の中で繰り返していくことが大切です。
意味付けは、MVVを作ったり1on1を導入したりしただけでは定着しません。日々の対話や称賛を積み重ね、社員が自分の仕事の価値について考える機会を増やしていくことが重要です。
ツムイトHRでは、1on1をはじめ、採用・育成・評価をつなげながら人材育成の仕組みづくりを支援しています。
意味付け力を高める方法
会社として仕事の目的や価値観を伝え、1on1などで対話する環境が整ったら、社員自身が仕事や出来事を振り返る機会もつくっていきましょう。
意味付け力を高めるうえで大切なのは、何でも前向きに考えることではありません。起きた出来事をそのまま受け止めたうえで「自分はなぜそう感じたのか」「そこから何を学べるのか」と考える習慣をつけることです。
ここでは、職場でも取り入れやすい4つの方法を紹介します。
出来事を振り返り、学びを言葉にする
仕事で失敗したり、思い通りに進まなかったりしたときは、すぐに「良い経験だった」と考える必要はありません。
まずは何が起きたのかを整理し、自分がどう感じたのか、その背景にどんな考えや価値観があったのかを振り返ります。
たとえば、次の4つに分けると整理しやすくなります。
- 何が起きたか(事実)
- そのとき何を感じたか(感情)
- なぜそう感じたのか(価値観・考え方)
- 次に活かせることは何か(行動)
たとえば、上司から企画を差し戻されて落ち込んだ場合、「評価されなかった」で終わらせず、「自分は時間をかけた仕事を認めてもらうことを大切にしていた」「次回は途中段階で方向性を確認しよう」と整理できます。
無理にポジティブな結論を出すのではなく、出来事から自分なりの学びや次の行動を見つけることがポイントです。
個人で振り返るだけでなく、1on1の中でこうした問いを使う方法もあります。
他者の視点から考えてみる
自分だけで考えていると、いつも同じ捉え方になってしまうことがあります。
そんなときは「尊敬している先輩ならどう考えるか」「別の部署の人ならどう見るか」「顧客の立場だったらどう感じるか」と、いったん自分以外の立場から考えてみます。
たとえば、自分では「面倒な確認作業」と思っている仕事でも、顧客の立場から見ると「ミスを防ぎ、安心して利用するために必要な作業」かもしれません。
自分とは違う立場から考えてみると、これまで気づかなかった仕事の価値や役割が見えてくることがあります。
もちろん、他人の考え方をそのまま正解にする必要はありません。自分とは違う見方を知り、考え方の選択肢を増やすことが目的です。
ライフラインチャートで自分の価値観を整理する
仕事に何を求めるか、どんな場面でやりがいを感じるかは、これまでの経験にも影響されます。
自分が大切にしている価値観を整理したいときに使える方法のひとつが、ライフラインチャートです。
過去の出来事と、そのときの充実度を時系列で書き出し、「なぜうれしかったのか」「なぜつらかったのか」を振り返ります。
出典:厚生労働省『平成29年度 労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業』より引用
たとえば「後輩をサポートした時期に充実度が高かった」という傾向が見えれば、人の成長を支えることにやりがいを感じるタイプなのかもしれません。
過去の経験を振り返ることで、自分が仕事のどこに意味を感じやすいのかを知る手がかりになります。
1on1やキャリア面談で使う場合も、上司が結果を決めつけるのではなく、本人が気づいたことを聞きながら一緒に整理することが大切です。
グループワークで異なる捉え方に触れる
同じ出来事でも、人によって受け止め方はかなり違います。
そこで、ひとつの仕事や出来事について「自分ならどう捉えるか」を複数人で話してみる方法もあります。
たとえば「顧客から厳しい指摘を受けた」という出来事ひとつでも、「失敗した」と考える人もいれば、「改善点を教えてもらえた」「期待されているからこそ指摘された」と捉える人もいるでしょう。
大切なのは、どの考え方が正しいかを決めることではありません。
同じ出来事にもいくつもの捉え方があると知ることで、自分の考えだけに縛られにくくなります。
研修として大がかりに実施しなくても、1on1やチームミーティングで「この出来事をどう捉えた?」と意見を出し合うだけでも取り入れられます。
意味付けで働きがいを高めるときのNG行動
意味付けは、やり方を間違えると逆効果になることがあります。
特に注意したいのが、会社や上司が「正しい意味」を決めてしまうことです。社員のためを思って伝えたつもりでも、本人にとっては価値観の押し付けに感じられることがあります。
意味付けで大切なのは、会社が答えを与えることではなく、社員自身が仕事の価値や目的を考えられる状態をつくることです。
会社や上司が意味を押し付ける
よくあるのが「この仕事にはこんな意味がある」「大変だけど成長につながる」と会社側の考えをそのまま伝えてしまうケースです。
もちろん、会社として事業の目的や大切にしている価値観を伝えることは必要です。ただし、それを社員本人の仕事の意味まで決めることとは別です。
同じ仕事をしていても、顧客から感謝されることにやりがいを感じる人もいれば、専門性が高まることや、チームを支えることに価値を感じる人もいます。
会社がやるべきなのは「この仕事にはこういう意味がある」と答えを決めることではなく、社員が自分なりの意味を考えるための材料を渡すことです。
たとえば、次のような情報が材料になります。
・顧客から届いた声
・その仕事によって誰が助かっているのか
・商品やサービスが社会に与えている影響
・社内で生まれた成功事例
・先輩社員が仕事に感じている価値
こうした情報を共有したうえで、「あなたはどう感じるか」「自分の仕事とどこがつながっていると思うか」と対話するほうが、本人の言葉で意味を見つけやすくなります。
意味付けを社員本人に丸投げする
反対に「仕事の意味は自分で考えて」と社員に任せきりにするのも避けたいところです。
日々の仕事に追われている状態で、突然「自分の仕事の意味を考えてください」と言われても、簡単には答えられません。
会社として事業の目的や価値観が曖昧だったり、上司と仕事について話す機会がなかったりすれば、なおさら難しくなります。
社員に意味付けを求める前に、仕事の目的を考えられる材料と、安心して話せる場を会社側が用意する必要があります。
こうした環境を整えたうえで、1on1などを通じて本人の考えを引き出していきます。
労働環境や制度の問題を意味付けでごまかす
もうひとつ注意したいのが、本来改善すべき職場の問題を「仕事の意味」や「やりがい」で補おうとすることです。
たとえば、長時間労働が続いている社員に「この経験は成長につながる」と伝えたり、不公平な評価への不満に対して「会社への貢献を考えてほしい」と求めたりしても、問題は解決しません。
むしろ「都合よく納得させようとしている」と受け取られ、会社への不信感につながる可能性があります。
意味付けは、働きにくい環境を我慢してもらうためのものではありません。
給与、労働時間、人間関係、評価制度、業務量などに問題がある場合は、まず原因を確認し、改善できることから対応する必要があります。
働きやすさを整えたうえで「この仕事にはどのような価値があるのか」を考える。その順番を間違えないことが、意味付けを働きがいにつなげるうえで重要です。
意味付けや働きがいの効果を測る方法
意味付けや働きがいは、売上や離職率のように一つの数字だけで判断できるものではありません。
そのため、「仕事の目的を理解できているか」「自分の仕事が誰かの役に立っていると感じているか」といった社員の認識を、定期的に確認する必要があります。
一度の調査結果だけを見るのではなく、1on1やサーベイを通じて変化を追っていくことがポイントです。
それぞれ、確認できることが異なります。
1on1ミーティング
1on1では、アンケートの点数だけではわからない社員一人ひとりの考えを確認できます。
たとえば、「仕事の目的を理解していますか」と直接聞くだけでは、本音が出てこないこともあります。最近の仕事や印象に残った出来事について話してもらいながら、仕事をどのように捉えているのかを確認していきます。
こうした質問を定期的に続けることで、仕事への納得感や貢献実感がどのように変化しているかを確認できます。
1on1は評価の場ではなく、社員が仕事をどう捉えているのかを知る場として活用することが大切です。
エンゲージメントサーベイ
組織全体の傾向を確認したい場合は、エンゲージメントサーベイが役立ちます。
意味付けそのものを直接数値化するのは難しいため、仕事の目的や貢献実感、上司との対話など、関連する項目を継続的に見ていきます。
ここで重要なのは、一回の点数だけで良し悪しを判断しないことです。
施策を始める前と後でどの項目が変化したのか、部署や年代によって差がないかを見ることで、組織の課題を見つけやすくなります。
また、サーベイだけでは「なぜその点数になったのか」まではわかりません。気になる項目があれば、1on1やヒアリングで理由を確認しましょう。
第三者によるヒアリング
社内の1on1やサーベイだけでは、本音を把握しにくいケースもあります。
特に上司との関係や評価制度への不満、部署間の問題などは、社内の人には話しづらいことがあります。
パーソル総合研究所の「職場での対話に関する定量調査」でも、職場で本音を話せていない人が一定数いることが示されています。
※出典:パーソル総合研究所『職場での対話に関する定量調査』(2024)
こうした場合は、外部の第三者によるヒアリングを組み合わせる方法もあります。
第三者が入ることで、次のような問題が見つかることがあります。
・上司には伝えにくい不満や違和感
・会社と社員の間で起きている認識のズレ
・部署ごとに異なる仕事の捉え方
・MVVや制度の意図が伝わっていない部分
1on1、サーベイ、第三者ヒアリングは、どれか一つで完結させるのではなく、目的に応じて組み合わせることが大切です。
株式会社Tsumuguでは、社員へのヒアリングや1on1の改善などを通じて、表面的な数値だけでは見えにくい組織の課題を整理しています。
「社員が仕事をどう捉えているのかわからない」「サーベイを実施しても改善につながらない」といった場合も、現状の整理からご相談いただけます。
【FAQ】仕事の意味付けに関するよくある質問
仕事の意味付けとは簡単にいうと何ですか?
仕事の意味付けとは、「自分の仕事は何のためにあるのか」「誰にどんな価値を届けているのか」を自分なりに理解することです。
たとえば、問い合わせ対応を「質問に答える作業」と捉えるのか、「顧客の不安を解消する仕事」と捉えるのかでも、仕事に対する見え方は変わります。
仕事に意味を感じられない社員にはどう対応すればいいですか?
まずは「仕事の意味を考えて」と本人に任せるのではなく、仕事の目的や顧客の声、周囲への貢献など、考えるための材料を共有しましょう。
そのうえで1on1などを使い、「最近やってよかったと思った仕事は?」「自分の仕事が誰の役に立っていると思う?」と問いかけます。
会社が答えを教えるのではなく、本人が自分の言葉で仕事の価値を整理できるようにすることが大切です。
1on1で仕事の意味を押し付けないためにはどうすればいいですか?
上司が「この仕事にはこういう意味がある」と結論を決めないことが重要です。
本人の話を聞きながら、「なぜそう感じたのか」「どんなところに価値を感じたのか」と問いを重ねていきます。上司の役割は、正しい意味を教えることではなく、本人が考えるきっかけをつくることです。
また、仕事への不満が出たときに、何でも「成長のため」「良い経験」と捉え直させようとしないよう注意しましょう。
意味付けがうまくいった事例はありますか?
弊社が支援した企業では、入社半年ほどの新卒社員に変化が見られた事例があります。
当初は仕事への意欲が低く、欠勤も目立っていました。そこで継続的に1on1を行い、本人が今後どうなりたいのか、どんな仕事に価値を感じるのかを聞きながら、現在の仕事とのつながりを一緒に整理していきました。
その後、仕事への取り組み方が変わり、最終的にはリーダーを任されるまでになりました。
単に「仕事には意味がある」と伝えたのではなく、本人の考えを聞き、本人が望むことと仕事との接点を見つけていったことがポイントです。
意味付けをすれば社員のモチベーションは上がりますか?
意味付けをすれば、必ずモチベーションが上がるわけではありません。
給与や労働時間、人間関係、評価制度などに問題がある場合は、仕事の意味を伝えるだけでは解決できません。むしろ、働きにくさを「やりがい」で補おうとすると逆効果になることもあります。
働く環境を整えたうえで、仕事の目的や貢献を本人が実感できるようにすることが大切です。
まとめ
意味付けとは、日々の仕事や出来事の中に、自分なりの価値や目的を見出すことです。
社員が「なぜこの仕事をするのか」「誰にどのような価値を届けているのか」を理解できるようになると、仕事は単なる作業ではなくなります。貢献の実感や成長への意欲が生まれ、自ら考えて行動するきっかけにもなります。
一方で、意味付けは上司が答えを与えれば浸透するものではありません。会社としてMVVやバリューを明確にしたうえで、1on1などの対話を通じて社員の考えを引き出し、小さな成功や行動を称賛・共有していく必要があります。
意味付けを一度きりの研修や精神論で終わらせず、日常の対話や評価、情報共有の中に組み込むことが、働きがいのある組織をつくるポイントです。
まずは、社員に「今の仕事が誰の役に立っていると思うか」「自分の仕事で最も価値を感じる瞬間はいつか」と問いかけることから始めてみてください。そこで出てきた言葉を拾い、組織の中で共有していくことが、意味付けを根づかせる第一歩になります。
株式会社Tsumuguでは、MVVの策定・浸透、1on1の改善、社員へのヒアリングなどを通じて、働きがいのある組織づくりをご支援しています。社員のモチベーションや自律性、組織への浸透に課題を感じている場合は、お気軽にご相談ください。






















