採用した人が数カ月で辞めた。面接では高く評価していたのに、入社後は期待したほど成果が出ない。
こうしたことが起きると、「採用ミスマッチだった」「採る人を間違えた」と考えたくなります。
ただ、早期離職や低成果はあくまで起きた結果です。採用時の見極めだけが原因とは限りません。求人広告や採用サイトで伝えた内容と実際の仕事が違っていたのかもしれません。任せた仕事や配属先が合っていなかった可能性もあります。入社後の育成や上司との関わり方によって、その人の状態が変わることもあります。
厚生労働省が2025年10月24日に公表したデータでは、2022年3月卒の新規大卒就職者の3年以内離職率は33.8%でした。ただし、この33.8%は「採用ミスマッチ率」ではありません。離職理由を問わず集計された数字だからです。
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
「辞めた」「活躍していない」という結果だけから、採用の成否を判断することはできません。
この記事では、採用ミスマッチに見える問題を情報提供・見極め・配属・育成の4つに分け、「本当に採用基準まで戻って見直すべきなのか」を判断する方法を整理します。
その問題は本当に採用ミスマッチなのか?まず起きている事象を見る
採用ミスマッチを減らそうとすると、面接回数を増やす、適性検査を導入する、採用基準を細かくするといった対策から考えがちです。しかし、原因が違えば対策も変わります。
たとえば、入社した社員から「求人で見た仕事と違う」と言われているのに面接を増やしても、根本的な解決にはなりません。逆に、求人で伝えている仕事内容には問題がなく、採用した社員が毎回同じ業務でつまずいているなら、採用基準や面接で確認している項目を見直す必要があります。
だから最初に見るべきなのは、「誰が悪かったか」ではなく、実際に何が起きているのかです。
| 起きている事象 | まず疑う原因 | 確認すること |
|---|---|---|
| 入社後すぐ「聞いていた仕事と違う」となる | 情報提供 | 求人広告・採用サイト・面接で伝えた内容と実態の差 |
| 面接評価は高かったが、任せた仕事で大きくつまずく | 見極め | 職種で必要な行動を定義し、選考で確認できていたか |
| 別の仕事や役割では力を発揮する | 配属 | 本人の特徴と仕事内容・チーム・上司との組み合わせ |
| 立ち上がりは遅いが、教え方を変えると改善する | 育成 | 期待成果・教育内容・順序・フィードバック |
| 選考時に見えなかった特徴が、本業へ大きく影響している | 見極め | 採用時の必須条件との関係、育成や配置で補えるか |
この順番で見ていくと、「採用ミスマッチだと思っていたものが、実際には別の問題だった」ということがあります。
原因1|求人広告や採用ブランディングで期待値がずれている
採用ミスマッチは、候補者を見極める前から始まっていることがあります。
求人広告や採用サイトでは、応募してもらうために会社や仕事の魅力を伝えます。それ自体は当然ですが、応募数を増やそうとして実際の仕事より良く見せすぎれば、入社後に「思っていたのと違う」が起こります。
たとえば、同じ「営業職」でも仕事内容は会社によって大きく異なります。新規開拓が中心なのか、既存顧客との関係構築が中心なのか。個人で数字を追うのか、チームで動くのか。裁量が大きいのか、決められた型の中で成果を求められるのか。仕事内容だけでなく、評価される行動も変わります。
採用ブランディングは、会社を魅力的に見せることだけが目的ではありません。入社前に持つ期待と、入社後の現実をできるだけ近づけることも重要な役割です。
早期離職者から「聞いていた内容と違った」という声が続いているのであれば、面接の精度を上げる前に、求人広告・採用サイト・説明会・面接で何を伝えていたのかを確認する方が先です。
原因2|採用基準と面接で見ているものがずれている
入社前に伝えた仕事内容と実態に大きな差がないのであれば、次に確認したいのが採用基準と選考です。
採用基準が曖昧なまま面接をすると、「話しやすかった」「経験が豊富だった」「受け答えがしっかりしていた」「雰囲気が会社に合いそうだった」といった印象が評価の中心になりやすくなります。
しかし、採用で知りたいのは「一般的に良い人材か」ではありません。その職種で任せる仕事に必要な行動ができそうかです。
実際、同じ候補者でも職種が変われば採否は変わります。たとえば、物静かで丁寧な人がいたとします。新規営業として、高い対人エネルギーや自分から関係を作ることを強く求める仕事であれば、慎重に確認したい特徴かもしれません。一方、顧客の話を丁寧に聞き、継続的に支援するCSであれば、同じ特徴でも評価が変わる可能性があります。
「コミュニケーション力が高い人」「主体性がある人」といった抽象的な採用基準だけでは、こうした違いを判断できません。募集背景と任せる仕事から、「どんな場面で」「どんな判断をして」「どんな行動を取れる人が必要なのか」まで下げて考える必要があります。
構造化面接や適性検査も、その条件を比較しやすくするための手段です。ただし、面接や適性検査で採用後の活躍を100%予測することはできません。選考時点ではあくまで仮説です。
だからこそ、入社後に「採用時に見ていた項目が、本当に活躍につながっていたのか」を確認し、面接の質問や採用基準を修正していく必要があります。
面接で確認する質問や評価基準の具体的な作り方は、採用面接で人材を見極める質問とは?面接精度を高める3つのポイントで詳しく解説しています。
原因3|採用ではなく、配属や役割が合っていない
採用後に期待した成果が出ていないと、「採用する人を間違えた」と考えてしまうことがあります。しかし、本人そのものではなく、任せている役割が合っていない可能性もあります。
同じ人でも、仕事内容や役割によって力の出方は変わります。採用時には一つの職種を想定していても、実際に働き始めてから別の強みが見えることもあります。反対に、能力そのものには問題がなくても、上司との役割分担やチームの状態によって力を出しにくい場合もあります。
たとえば、現在の部署では成果が出ていない社員が、担当業務や役割を変えたことで状態が大きく改善するのであれば、採用よりも配置に問題があった可能性があります。
このとき考えたいのは、「この会社に合う人か」だけではありません。「この仕事・この役割に合っているか」まで分けて見ることです。
配置によって解消できる問題まで採用ミスマッチとして処理してしまえば、次の採用でも必要以上に採用基準を狭めることになります。
原因4|入社直後の状態を見て、採用ミスと判断している
特に新卒採用や若手・未経験採用では、入社直後の状態だけで採用の成功・失敗を判断するのは難しいものです。
実際、新卒で採用した社員について、入社当初は休みが多く、仕事への意欲も低いように見え、「採用を間違えたかもしれない」と感じたことがありました。
ところが、その社員は後輩を持った頃から変わり始めます。後輩に教える立場になったことで本人に自覚が生まれ、仕事への向き合い方や行動にも変化が出てきました。入社から1年半ほど経った頃には、周囲から見てもエースと呼べる存在にまで成長していました。
もちろん、この一例から「新卒は1年半待てばいい」とは言えません。見るべきなのは、入社直後の状態だけでは採用の成功・失敗を確定できないことがあるという点です。
本人に与えられる役割や責任が変わったときに、行動が変わることもあります。育成やフィードバックによって伸びているのか。仕事を任せる範囲が広がったときに変化があるのか。本人に何らかの責任を持たせたときに行動が変わるのか。
こうした変化を見る前に「採用ミスだった」と確定してしまうと、本来伸びる可能性がある人材まで採用基準から外してしまうことがあります。
一方で、必要な支援や役割の変更をしても、本業に必要な行動とのずれが大きく残る場合は、配属や採用基準まで戻って振り返る必要があります。
採用基準まで戻って見直すべきラインはどこか
選考の精度をどれだけ上げても、入社後に「想定と違った」と感じることをゼロにはできません。面接という限られた時間で、その人の行動や考え方をすべて知ることは難しいからです。
選考時には見えなかった一面が、入社後に表れることもあります。だからといって、予想外のことが一つ起きるたびに「採用ミスマッチだった」と判断する必要はありません。
見るべきなのは、本業への影響がどれだけ大きいか、そして会社側で修正できる余地があるかです。
| 入社後の状態 | どこまで戻って見直すか |
|---|---|
| 想定外の面はあるが、本業への影響は小さい | 採用基準までは戻さない |
| 教え方・フィードバック・役割付与で改善する | 育成を見直す |
| 配置や担当業務を変えると力を発揮する | 配属・役割の基準を見直す |
| 必須とした行動とのずれが大きく、支援しても本業への影響が続く | 採用基準・選考方法まで戻る |
| 複数人から同じ「聞いていた仕事との違い」が出る | 求人広告・採用時の情報提供まで戻る |
ポイントは、「予想外だったかどうか」ではなく、その違いが仕事にどこまで影響しているかです。
たとえば、面接では想像していなかった特徴が入社後に分かったとしても、仕事にはほとんど影響せず、本人も成果を出しているのであれば、採用ミスマッチと呼ぶ必要はないでしょう。
反対に、採用時に「この仕事では必須」と定めていた行動がほとんどできず、育成や配置によっても補えない状態が続くのであれば、採用時の見極めまで戻る必要があります。
この線引きを持っておくことで、「採用ミスマッチだからもっと候補者を見抜こう」という一方向の対策ではなく、実際に直すべき工程が見えてきます。
採用ミスマッチを減らすには、入社後の結果を次の採用へ戻す
採用ミスマッチを完全になくすことは難しいものです。一方で、同じずれを何度も繰り返さない仕組みは作れます。
採用前には、まず任せる仕事を具体化します。そこから、その仕事に必要な行動を整理し、採用基準を作ります。求人広告や面接では実際の仕事内容を伝え、面接や適性検査などの情報から、「この人なら、この仕事で活躍できるのではないか」という仮説を立てます。
そして重要なのは、その仮説を採用して終わりにしないことです。
- 実際に成果が出ているか
- 定着しているか
- 現場からどう評価されているか
- 本人の状態がどう変化しているか
入社後にこうした情報を確認し、「採用時に高く評価したポイントは、本当に活躍につながったのか」「面接では何を確認できていなかったのか」「採用ではなく、配属や育成に問題がなかったか」を振り返ります。そのうえで、必要であれば次の採用基準や面接の質問を変えます。
適性検査も、採用ミスマッチをなくすための正解として使うより、採用時の仮説を増やし、入社後の結果と照合するための材料として使う方が実務的です。
活躍社員の特徴を次の採用基準へ落とし込む具体的な進め方は、ハイパフォーマー分析とは?適性検査で採用基準をつくる5ステップでも整理しています。
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採用ミスマッチが起きたときに必要なのは、「誰を採るべきだったのか」を後から議論することだけではありません。
何を伝え、何を見て、どこへ配属し、どう育てた結果として今の事象が起きているのか。
そこまで確認したうえで、本当に問題があった工程だけを次の採用で変えていく。採用ミスマッチを減らすには、この振り返りを採用の中だけで終わらせず、入社後までつなげることが重要です。





















