「評価が不公平だ」「待遇が平等ではない」といった不満は、多くの企業で聞かれます。しかし、その言葉が本来の意味で使われているとは限りません。
組織づくりでは「平等」「公平」「公正」は似ているようで役割が異なります。この違いを理解しないまま制度を設計すると、良かれと思った施策が社員の不満や離職につながることもあります。
この記事では、平等・公平・公正の違いを分かりやすく整理しながら、企業が優先して整えるべき「公正性」の考え方や、納得感のある評価制度・組織づくりのポイントについて詳しく解説します。
- 平等:全員に同じ条件やルールを適用する
- 公平:状況に応じて必要な支援や機会を調整する
- 公正:判断基準や手続きが明確で、誰にでも説明できる状態
平等・公平・公正の違い
企業の規模が大きくなると、「待遇が平等ではない」「評価が不公平だ」といった社員の声が出てくることがあります。
しかし、平等・公平・公正は似ているようで、それぞれ意味が異なります。
簡単に整理すると、平等は「同じ条件を与える」、公平は「状況に応じて条件を調整する」、公正は「判断基準や手続きそのものを適切にする」という考え方です。
弊社のお客様でも、良かれと思って導入した制度の意図が社員に十分伝わらず、かえって不満につながっていたケースがあります。
人事制度や評価制度を設計する際は、この3つを混同せず、それぞれの違いを理解しておくことが大切です。
平等=全員に同じ条件を与える
平等とは、立場や状況にかかわらず、全員に同じ条件や機会を与える考え方です。
平等のメリットは、ルールがシンプルで分かりやすいことです。一方で、全員に同じ条件を与えても、置かれている状況が違えば結果に差が生まれることがあります。
そこで、個人ごとの状況やスタートラインの違いまで考慮するのが「公平」という考え方です。
公平=状況に応じて条件や支援を調整する
公平とは、一人ひとりの状況や違いを考慮し、必要に応じて支援や条件を調整する考え方です。
たとえば、全社員に同じ研修を受けてもらうのは「平等」です。一方、経験やスキルに応じて研修内容を変え、必要な人に追加研修を用意するのは「公平」と考えられます。
ただし、組織運営では公平性の設計が難しくなります。経営側が「必要な配慮」と考えていても、他の社員から「特別扱いではないか」と受け取られる可能性があるためです。
公平性を高めるには、単に配慮するだけでなく「なぜ違いを設けるのか」を社員が理解できるようにすることが重要です。
つまり、公平は「配慮の設計」であると同時に「納得の設計」でもあります。そして、その納得感を支えるのが次に説明する「公正」です。
公正=判断基準と手続きに筋が通っている
公正とは、判断基準が明確で、意思決定のプロセスに一貫性があり、その理由を説明できる状態です。
特に人事評価では、結果だけでなく「どのような基準と手続きで評価されたのか」が社員の納得感を左右します。
たとえば、社員によって評価項目を変えること自体は「公平」でも、その基準が曖昧で上司の感覚だけで決まっていれば「公正」とは言いにくいでしょう。
平等か公平かを考える前提として、まず判断基準やプロセスに公正性があることが重要です。
人事制度では、全員を同じように扱えば必ず納得されるわけではありません。「どのような違いを考慮するのか」「なぜその判断になるのか」を説明できる仕組みまで設計する必要があります。
ツムイトHRでは、評価基準や判断プロセスを記録し、「なぜその評価になったのか」を後から確認できる状態をつくれます。
公平で納得感のある評価制度づくりを進めたい企業様は、ツムイトHRをご活用ください。
組織では平等・公平・公正のどれを重視すべき?
組織づくりでは、平等・公平のどちらか一方を選ぶのではなく、まず「公正性」を土台として整えることが重要です。
評価や昇進、配置、報酬などの判断基準やプロセスに公正性があれば、社員ごとに異なる配慮や支援を行った場合でも、その理由を説明しやすくなります。
反対に、判断基準が曖昧なまま公平性を高めようとすると、本来は必要な配慮であっても「なぜあの人だけ優遇されるのか」「上司の好き嫌いではないか」と受け取られる可能性があります。
大切なのは「公正を土台にする」「公平が必要な領域を見極める」「平等に保障すべき部分を明確にする」という考え方です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
公正な判断基準とプロセスを整える
最初に確認したいのが、評価や昇進、配置などの判断に公正性があるかどうかです。
特に人事制度では、「誰が評価するか」だけでなく、「何を基準に、どのようなプロセスで判断するのか」が社員の納得感を左右します。
こうした仕組みが整っていないと、「評価は結局、上司の気分で決まる」「何を頑張れば評価されるのかわからない」といった不満につながります。
評価結果そのものだけでなく、判断に至るプロセスへの不信感が積み重なると、社員のエンゲージメント低下や離職につながる可能性もあります。
特に注意したいのが、成果を出している社員の離職です。「頑張っても正当に評価されない」と感じれば、優秀な人ほど社外に目を向ける可能性があります。
優秀な人の離職については、下記の記事で詳しく解説しています。
関連記事:優秀な人が突然辞める会社の共通点とは?離職を防ぐエンゲージメント向上のポイント
公平な配慮が必要な領域を見極める
公正性を土台として整えたうえで、次に考えたいのが公平性です。
組織において、すべての社員をまったく同じ状態にすることはできませんし、すべての違いをなくす必要もありません。
重要なのは、社員の違いを考慮すべき領域と、成果や役割によって差が生まれてもよい領域を分けて考えることです。
| 公平性を考える際の2つの領域 | |
|---|---|
| 配慮・機会を確保すべき領域 | 合理的な差が生じてもよい領域 |
| 安全・健康 合理的配慮 情報へのアクセス 挑戦・成長の機会 相談できる環境 |
成果に応じた評価 報酬 昇格のスピード 任される役割 責任の大きさ |
たとえば、すべての社員に挑戦の機会が開かれていることは重要ですが、挑戦した結果まで同じにする必要はありません。成果や役割、責任の大きさに応じて評価や報酬に差が生まれることはあります。
「機会は公平に確保する。一方で、結果については公正な基準に基づいて差をつける」という整理をすると、人事制度を設計しやすくなります。
平等に保障すべきものを明確にする
平等は優先順位が低いものではありません。組織には、社員の属性や役職、成果などにかかわらず、全員に保障すべきものがあります。
一方で、「全員に同じものを与えること」だけを重視すると、社員ごとの状況の違いを吸収できない場合があります。
たとえば、全員に同じ研修を用意するだけでは、経験の浅い社員とベテラン社員の双方にとって最適な育成になるとは限りません。必要に応じて研修内容を変えるなど、公平性の視点も必要です。
組織づくりでは「平等・公平・公正のどれが一番大切か」ではなく、公正性を土台として、平等に保障する領域と公平に調整する領域を使い分けることが重要です。
評価制度や人材データを一元管理し、公正で納得感のある組織づくりを進めたい企業様は、ツムイトHRをご覧ください。
組織では「全員同じ」が公平とは限らない
平等は組織運営に欠かせない考え方ですが、すべての社員を同じ条件で扱えば公平になるとは限りません。
なぜなら、社員は職種や役割、経験、成果、置かれている状況などがそれぞれ異なるためです。
こうした違いを無視して一律の制度を適用すると、一見すると平等でも、特定の社員にとって不利な仕組みになることがあります。
つまり、「同じルールを適用すること」と「公平な状態をつくること」は必ずしも同じではありません。
具体的には、次のようなケースが考えられます。
このように、社員の違いを無視して「全員同じ」にすることが、かえって不満や不公平感を生むケースがあります。
ただし、だからといって平等が不要なわけではありません。応募や挑戦の機会、必要な情報へのアクセス、ハラスメントから守られることなど、全社員に平等に保障すべき領域もあります。
組織づくりで重要なのは、すべてを平等にすることではなく、「平等に保障するもの」「状況に応じて公平に調整するもの」「公正な基準で差をつけるもの」を分けて考えることです。
組織が公正さを担保すべき点
前半において、組織がまず整備すべきは公正性とお話しました。
では、具体的にどのような観点があれば、公正さを得られるのでしょうか?
主には、以下の3つです。
順を追って見ていきましょう!
透明性のある評価制度
評価の公正さには、第一に透明性が必要です。
特に、以下の項目については「必要があれば説明できる」状態にしておかなければいけません。
すべての情報を細かく開示する必要はありませんが、上記の要点は周知しておくべきでしょう。
ここが担保されていないと、社員は自分がどのような基準で評価されているのかわかりません。
「上司の気分や好み次第ではないのか?」と思われてしまうこともあります。
評価基準の言語化
たとえ基準に筋が通っていても、社員に伝えることができなければ公正さを理解してもらえません。
評価基準は経営者を含め、管理職など評価者の誰もが説明できるよう言語化しておきましょう。
たとえば、基準を具体的な行動レベルに落とし込んだ言い回しが以下のようなものです。
こうした言語化を通じ、どのような基準で評価しているのか、部下にはっきりと伝えられるよう整備しておきましょう。
属人性の排除
企業に公正性を与える3つめの要素は、属人性の排除。
もちろん、属人性をゼロにはできませんし、ゼロにする必要もありません。
問題なのは、属人的な部分がブラックボックスになってしまうこと。
よくあるのは「評価が上司の主観だけで決まってしまい、主観の内容がわからない」という状態。
上司との関係性で評価や昇進が決まるのは、不公正の典型例です。
こうした属人性を減らすため、既存の制度や仕組みについての運用方法を具体化しましょう。
基本的なことに思えるかもしれませんが、評価制度が曖昧な企業は実に多く存在します。
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組織が公平さを担保すべき点
企業において、完全な公平は実現できません。
ですが、組織内で「不当な不公平」が目立っていると、全社的に不満が高まり、特に優秀な人の離職につながります。
たとえば、下記のような要点においては、公平さを確保すべきでしょう。
キーワードは「選択肢」。詳しく見ていきましょう。
福利厚生
福利厚生は、厳密に言うと平等性に近いもの。
分かりやすい反面、実態としては「使う余裕がない」など、不満が残りやすい領域でもあります。
異なる状況にいる社員が、自分に合った制度を自由に活用できるよう整備しなければいけません。
「制度だけ作って終わり」にせず、活用状況なども計測していくことが肝要です。
働き方の選択肢
働き方の制限は、組織の内外に不公平を生じさせ、優秀な人の定着を阻害することがあります。
非常にわかりやすい例は、リモートワークの有無。
弊社にもフルリモートの従業員がいますが、面接時に理由を尋ねたところ、以下のような例がありました。
親の介護を在宅でしており、家を空けることが難しいため、リモートワークができる貴社の求人を希望いたしました。
これは極端なケースであり、なんでもかんでもリモートワークにすればよいわけではありません。
ですが、人によっては勤務地や勤務時間に見過ごせない制限があるのも事実。
これが原因で優秀な人を雇えなかったり、定着させられないのは非常にもったいないと言えるでしょう。
以下のような条件を定義・整備し、働き方の選択肢を増やせると、採用においても競争力がつきます。
たとえば、スープストックトーキョーなどでは、働き方の見直しにより離職率を下げることができたという事例もあります。
| スープストックトーキョーの事例 | |
| 導入施策 | 時短勤務 複業可能 欠員へのヘルプ専門社員 |
| 効果 | 年間離職率が半減 (23%⇨12.8%) |
柔軟な働き方を取り入れ、環境にハンデがある人でも働ける仕組みを作ると、定着率は上がり、結果的に採用コストも抑えられるのです。
障がいに対する配慮
障がいを持つ人が、健常者と同じように働けるよう配慮することを「合理的配慮」と言います。
企業の規模が大きくなるにつれ、障害者雇用も無視できなくなるでしょう。
そのとき、合理的配慮についての知見がないと、企業の悪評にもつながってしまいます。
ポイントは、特別扱いすることではなく、障がいを持つ人でも他の社員と同じ成果を目指せるような環境を整えること。
障がいは個人差が激しいもの。対話なしに一律で配慮することはできません。
合理的配慮については、被雇用者自身と話し合いながら決めていくと、本人も他の社員も納得のいく条件を固めやすくなります。
成果を重視する仕組み
利益を生む場所に投資する。企業としては当たり前の行動です。
しかし、成果の指標が「売上の数値」しかないのは問題。
一口に成果と言っても、いろいろな指標を設けることができます。
| 「成果」の多様な観点 | |
|---|---|
| 結果 | 売上、粗利、納期、品質など |
| 業務のプロセス | 再現性のある行動、標準化、改善 |
| 組織への影響 | チームへの貢献、育成、仕組み化 |
| その他 | MVVに沿った行動など |
ひとつの指標だけにこだわらず、さまざまな切り口を作り、表彰する仕組みを運用していくと、組織内の不公平感を緩和できます。
現場の士気を上げることもできますので、ぜひ多様な観点を検討してみましょう!
成長の機会へ挑戦できる体制
すべての人に同じ結果を与えることはできません。
ですが、成長したいと思う人に門戸が開かれていないのは問題です。
このように、挑戦の機会へ公正性と公平性を与え「挑戦したい人が伸びる環境」を用意すると、若手や優秀な人がより活躍できる組織になります。
組織づくりでは「公正」を土台に考えよう
最後に、本記事での要点をおさらいしておきましょう。
本記事の要点
平等・公平・公正の違い
- 平等:全員に同じ条件やルールを適用する
- 公平:状況に応じて必要な支援や機会を調整する
- 公正:判断基準や手続きが明確で、誰にでも説明できる状態
組織での優先順位
- 公正性
- 公平性
- 平等性
公正な組織をつくるポイント
- 評価制度の透明性を高める
- 評価基準を言語化する
- 属人性を減らし、判断基準を統一する
公平性を意識したい場面
- 福利厚生
- 働き方の選択肢
- 合理的配慮
- 成果を評価する仕組み
- 挑戦・成長の機会
なお、迷ったときは、次のステップを踏むのがオススメです。
【迷ったときの施策ステップ】
- STEP1:評価・配置・昇給の基準を言語化する
- STEP2:判断の手続きを統一し、誰にでも説明できる状態にする
- STEP3:働き方や合理的配慮、挑戦の機会など、公平性を整える
平等・公平・公正は、どれも組織運営に欠かせない考え方です。しかし、すべてを同じ優先順位で考えると、かえって社員の不満や組織の混乱を招くことがあります。
まずは評価や昇進、配置などのルールを明確にし、誰もが納得できる「公正性」を整えること。その上で、一人ひとりの状況に応じた公平性を取り入れ、最後に全社員へ共通して提供すべき平等性を考えることが重要です。
まとめ
平等・公平・公正は似た言葉ですが、組織運営ではそれぞれ異なる役割があります。
すべてを一律に平等にすることは現実的ではありません。まずは評価やルール、意思決定の基準を明確にする「公正性」を整え、その上で必要な公平性を取り入れ、最後に平等性を考えることが、社員の納得感やエンゲージメント向上につながります。
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