行動理念を浸透させる方法とは?企業文化に根づかせる7つの施策とLayerXの事例

行動理念を浸透させるには?企業文化に根づかせる方法をLayerXの事例から解説

「行動理念を策定したものの、社員に浸透していない」「社内へ何度も発信しているのに、仕事の進め方が変わらない」と悩む企業は少なくありません。

行動理念を社内へ浸透させるには、朝礼で唱和したり、オフィスに掲示したりするだけでは不十分です。理念が示す考え方を具体的な行動に置き換え、採用、オンボーディング、会議、1on1、人事評価など、社員が日常的に接する仕組みへ組み込む必要があります。

本記事では、株式会社LayerXが公開している「LayerX羅針盤」を参考に、行動理念が浸透しない原因と、企業文化として根づかせる7つの施策を解説します。

自社の理念を、掲げるだけの言葉から社員が実際に使える判断基準へ変えたい経営者・人事担当者は、ぜひ参考にしてください。

行動理念とは

行動理念とは、社員が仕事を進めるうえで大切にする考え方や、判断・行動の基準を示したものです。企業によっては「行動指針」「バリュー」「クレド」と呼ばれることもあります。

たとえば「顧客を第一に考える」「失敗を恐れず挑戦する」という言葉だけでは、実際の業務でどのように行動すればよいのか、人によって解釈が分かれます。行動理念を機能させるには、どのような場面で何を優先し、どのような行動を取るのかまで具体化することが必要です。

なお、行動理念と混同されやすい言葉に、ミッション・ビジョン・企業文化があります。それぞれの役割は次のとおりです。

  • ミッション:企業が社会で果たす役割
  • ビジョン:将来実現したい状態
  • 行動理念・行動指針:社員が日々の仕事で取るべき行動の基準
  • 企業文化:社員の判断や行動が積み重なって形成された価値観や習慣

行動理念は企業文化そのものではありません。しかし、社員が同じ判断基準を使い続けることで、行動理念に沿った企業文化が少しずつ形づくられていきます。

行動理念を浸透させる目的

社員が迷ったときの判断基準をそろえる

業務上のすべての判断を、規則やマニュアルで定めることはできません。顧客から想定外の要望を受けたときや、スピードと品質のどちらを優先するか迷ったときには、社員自身が判断する場面もあります。

行動理念が共通の判断基準として機能していれば、上司の指示を待たなければ動けない状況を減らせます。上司と部下、部署と部署の間でも判断の根拠を共有しやすくなり、意思決定の速さと納得感を高められます。

自社が求める行動を明確にする

売上や契約件数といった成果だけでは、社員の働き方を十分に評価できません。短期的な成果を上げていても、情報共有を怠ったり、周囲へ過度な負担をかけたりしていれば、組織全体には悪影響が残ります。

行動理念を具体化すると「何を達成したか」だけでなく「どのように取り組んだか」についても共通認識を持てます。採用基準や人事評価と連動させる際にも、自社が社員へ求める行動を説明しやすくなります。

組織が拡大しても自社らしさを共有する

少人数の組織では、経営者の考え方が日々の会話を通じて伝わります。しかし、社員数や拠点、部署が増えると、経営者が一人ひとりへ直接伝えることは難しくなります。部署ごとのやり方が定着し、同じ会社でありながら判断基準が異なることもあるでしょう。

組織が拡大するほど、これまで暗黙の了解だった価値観を言葉にし、具体的な行動として共有する必要があります。

関連記事:PMIとは?M&A後の組織統合の進め方・組織文化の統合方法・成功事例を解説

行動理念が浸透しない6つの原因

行動理念が社内の仕組みと分断され社員の行動がばらつく流れ

抽象的な言葉だけで終わっている

「挑戦」「誠実」「顧客第一」などの短い言葉は覚えやすい一方、具体的な行動が見えにくいという問題があります。「挑戦とは何を指すのか」「顧客の要望と会社の利益が対立したらどうするのか」まで説明されていなければ、社員ごとに異なる解釈が生まれます。

経営層や管理職が体現していない

会社が「率直な意見を歓迎する」と掲げていても、経営者や上司が反対意見を遮っていれば、社員は理念よりも実際の振る舞いを信じます。行動理念を浸透させるには、まず経営層や管理職が日々の判断と行動で示すことが欠かせません。

発信が一方通行になっている

経営者から繰り返し発信することは必要ですが、説明を聞くだけでは社員が自分の仕事へ置き換えられません。理念について質問したり、実際の業務を振り返ったりする対話の場がなければ「経営陣が大切にしている言葉」で止まってしまいます。

採用やオンボーディングと分断されている

入社後に初めて行動理念を説明しても、本人の価値観や働き方と大きく異なれば、受け入れるのは簡単ではありません。また、入社初日に資料を渡すだけでは、実際の業務との関係を理解できないでしょう。

選考段階で自社の価値観を伝え、入社後も具体例を交えながら理解を深める設計が必要です。

人事評価や意思決定と矛盾している

「チームワークを重視する」と掲げながら個人売上だけで評価したり「挑戦を歓迎する」と言いながら失敗した社員を責めたりすれば、理念は信用されません。行動理念と制度・実際の意思決定が矛盾すると、社員にとっては理念よりも評価される行動が優先されます。

浸透度を確認していない

理念の認知率だけを確認しても、社員が内容を理解し、仕事で実践できているかはわかりません。浸透施策を実施したまま効果を測らなければ、どの部署で認識にずれがあるのか、何につまずいているのかを把握できません。

LayerXの「羅針盤」とは

株式会社LayerXは「すべての経済活動を、デジタル化する。」というミッションを掲げ、法人支出管理サービス「バクラク」などを展開する企業です。

  • 会社名:株式会社LayerX(レイヤーエックス)
  • 設立日:2018年8月1日
  • 本社所在地:東京都中央区築地1-13-1 銀座松竹スクエア 5階
  • 代表取締役:代表取締役CEO 福島良典
  • 事業内容:法人支出管理サービス「バクラク」の開発・運営
  • ミッション:すべての経済活動をデジタル化する
  • URL:https://layerx.co.jp/

同社は、組織づくりにおいて企業文化への投資を重視し、社内で大切にする考え方を「LayerX羅針盤」として公開しています。

LayerX羅針盤は、会社が大切にする言葉を並べただけの会社案内ではありません。行動指針から派生する具体的な行動を示し、社員が仕事で迷ったときに判断材料として使えるよう整理された資料です。

組織が小さいうちは、経営者や創業メンバーと働くなかで「この会社らしい判断」を学べます。しかし、採用が進み、部署や事業が増えると、口頭や雰囲気だけで価値観を共有することには限界があります。そこで、暗黙の了解を明文化し、入社時期や所属部署にかかわらず参照できる状態にしておく意味が生まれます。

また、同社の資料が「羅針盤」と名づけられている点も重要です。細かな行動を一律に縛る規則ではなく、社員が状況に応じて判断するための方向を示す役割だと理解できます。

参考:LayerXが公開している資料

LayerXの事例から学ぶ行動理念を浸透させる7つの施策

行動理念を採用・入社後の教育・日常対話・評価改善へつなげる運用サイクル

理念を具体的な行動へ置き換える

最初に取り組みたいのは、理念を知っているだけでなく、行動へ移せる状態にすることです。各項目について、推奨する行動と避けたい行動の両方を整理します。

たとえば「顧客第一」であれば「顧客の要望を何でも受け入れる」という意味ではありません。次のように、実際の業務場面まで落とし込みます。

  • 顧客が言葉にしていない目的や課題まで確認する
  • 要望どおりに進めることが不利益になる場合は、理由と代替案を伝える
  • 自部署だけで判断せず、顧客への影響を基準に関係部署と調整する

自社で過去に起きた成功例や失敗例を使うと、社員が自分の仕事へ置き換えやすくなります。

社員がいつでも参照できる形にする

行動理念は、一度説明を聞いただけで理解できるものではありません。カルチャーブック、社内ポータル、スライド、動画などにまとめ、必要なときに社員が確認できる状態にします。

大がかりな冊子を最初から作る必要はありません。まずは、行動理念の意味、策定した背景、具体的な行動例、判断に迷いやすい場面を一つの資料へまとめます。更新担当者と見直し時期も決めておけば、作ったまま放置されるのを防げます。

採用段階から自社の価値観を伝える

行動理念の浸透は、入社後だけの課題ではありません。採用サイトや求人票、会社説明会、面接を通じて、自社が大切にする考え方と、その考え方が表れたエピソードを伝えます。

面接では候補者へ一方的に説明するだけでなく「似た状況でどのように判断したか」を質問すると、価値観や行動特性を確認できます。ただし、カルチャーフィットを重視するあまり、自社と似た考えの人だけを集めるのは避けるべきです。理念に共感できるかを確認しつつ、異なる経験や視点を歓迎する姿勢も必要です。

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オンボーディングで繰り返し扱う

入社初日に理念を説明して終わるのではなく、実務を経験したあとに振り返る機会を設けます。入社直後には理解できなかった言葉も、実際の顧客対応やチームでの仕事を経験すると、具体的に捉えられるようになります。

たとえば、入社時、1か月後、3か月後に次のような問いを設けます。

  • 仕事のなかで行動理念を意識した場面はあったか
  • 判断に迷った場面で、どの理念を参考にできそうか
  • 理念と実際の職場に違いを感じた部分はあるか

新入社員から出た疑問は、説明不足や制度との矛盾を見つける材料にもなります。

会議・1on1・社内表彰で日常的に使う

理念を思い出す機会が年に数回の研修だけでは、日々の行動には定着しません。会議や1on1、プロジェクトの振り返りなど、普段の業務で使う言葉にします。

「今回の対応で自社らしかった点はどこか」「次に同じ状況が起きたら、どの行動指針を意識するか」と問いかければ、抽象的な理念と具体的な経験を結びつけられます。理念を体現した行動を社内で紹介・表彰することも、会社が評価する行動を伝える方法の一つです。

関連記事:サーバントリーダーシップとは?10の特性・メリット・企業事例・実践方法を解説

人事評価や管理職の育成と連動させる

行動理念を評価項目へ反映させる場合は、評価者によって判断が分かれないよう、期待する行動を役職や職種ごとに整理します。「理念を体現したか」という曖昧な項目だけでは、上司の主観に左右されるためです。

また、一般社員に実践を求めるだけでは浸透しません。管理職研修で、理念に沿った意思決定やフィードバックの方法を扱い、管理職自身の行動も評価・振り返りの対象にします。

評価制度だけを先に変更すると、理念を点数化することが目的になりかねません。理念、等級、評価、報酬の関係を整理し、現場が納得できる運用にすることが重要です。

関連記事:公平理論とは?公平な目標設定・人事評価で社員の納得感を高める方法

社員の声をもとに運用を見直す

事業内容や組織の規模が変われば、求められる行動も変化します。行動理念の核となる考え方を安易に変える必要はありませんが、説明や具体例が現状に合っているかは定期的に確認しましょう。

サーベイや社員へのヒアリングでは、認知度だけでなく、次のような項目を確認します。

  • 行動理念の内容を自分の言葉で説明できるか
  • 日々の判断や行動で参考にしているか
  • 上司が行動理念を体現していると感じるか
  • 人事評価や会社の意思決定と理念が一致しているか
  • 理念に沿った行動を周囲から認められているか

全社平均だけでなく、部署、役職、勤続年数などで結果を分けると、浸透が止まっている層を見つけやすくなります。結果を集計して終わらせず、社員へ共有し、改善策と担当者、実施期限まで決めることが大切です。

行動理念を人事評価や1on1へ落とし込めずお困りの場合はご相談ください。

行動理念の浸透で失敗しやすいパターン

他社の行動理念をそのまま取り入れる

著名企業の理念やカルチャーブックは参考になりますが、そのまま取り入れても自社の歴史や事業、社員の経験とは結びつきません。LayerXの「羅針盤」から学ぶべきなのも、表現をまねることではなく、抽象的な考え方を具体的な行動へ落とし込み、組織で使える形にしている点です。

社員へ価値観を押しつける

浸透を急ぐあまり、理念への疑問や反対意見を認めない状態になると、社員は本音を言わなくなります。理念の解釈について対話し、実態と合っていない部分や矛盾を指摘できる環境をつくることも必要です。

関連記事:オーセンティックリーダーシップとは?4つの要素・メリットと実践方法

カルチャーブックを作って満足する

読みやすい資料を作成しても、日常業務で使われなければ浸透にはつながりません。誰が、どの場面で、どのように使うのかまで決める必要があります。資料の完成をゴールにせず、採用、育成、評価、社内コミュニケーションへ接続するところまで設計しましょう。

行動理念だけで組織課題を解決しようとする

離職やエンゲージメント低下の原因が、長時間労働、処遇への不満、上司との関係などにある場合、理念を発信するだけでは解決しません。行動理念の浸透と並行して、労働環境や人事制度、マネジメント上の課題にも向き合う必要があります。

行動理念を浸透させる進め方

これから行動理念の浸透に取り組む場合は、次の順番で進めます。

  1. 経営層と社員へヒアリングし、現在の認識と課題を把握する
  2. 行動理念の意味と、策定した背景を整理する
  3. 推奨する行動・避けたい行動を具体化する
  4. カルチャーブックや社内ページにまとめる
  5. 採用、オンボーディング、会議、1on1で使い始める
  6. 人事評価や管理職研修との連動を検討する
  7. サーベイやヒアリングで浸透度を測り、運用を見直す

すべてを一度に変える必要はありません。まずは、現場で判断に迷うことが多い行動理念を一つ選び、具体例の作成と1on1での振り返りから始める方法もあります。小さく運用し、社員の反応を見ながら対象を広げたほうが、形だけの施策になりにくいでしょう。

まとめ

行動理念を企業文化として根づかせるには、言葉を繰り返し伝えるだけでなく、社員が日々の仕事で使える判断基準に変える必要があります。

LayerXの「羅針盤」から学べるのは、理念や行動指針を資料にまとめることだけではありません。暗黙の価値観を具体的な行動として言語化し、入社時期や所属部署にかかわらず参照できるようにする考え方です。

自社で取り組む際は、行動例を具体化したうえで、採用、オンボーディング、会議、1on1、人事評価、サーベイと連動させましょう。制度と実際の意思決定に一貫性が生まれて初めて、社員にとって信頼できる判断基準になります。

株式会社Tsumuguでは、MVV・行動理念の整理から、人事制度、1on1、組織サーベイと連動した運用設計まで、企業ごとの課題に合わせて支援しています。「理念を策定したものの現場へ浸透していない」「評価制度と結びつける方法がわからない」とお悩みの企業様はお気軽にご相談ください。

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ABOUT US
塔筋大樹株式会社Tsumugu代表取締役
同志社大学卒業後、地元金融機関へ新卒入社。その後、株式会社リクルートジョブズ(現リクルート)へ中途入社。求人広告営業として全国トップクラスの営業成績を収め、営業リーダーや代理店支援を担当。その後、Indeed特別認定パートナーの株式会社アド・イーグル執行役員として営業・人事・企画領域を管掌。現在は株式会社Tsumugu代表取締役として、中小企業の採用・育成・評価・定着に関する課題に対し、データとAIを活用した人事支援を行っている。