行動理念を浸透させるには?企業文化に根づかせる方法をLayerXの事例から解説

行動理念を浸透させるには?企業文化に根づかせる方法をLayerXの事例から解説

「行動理念を策定したものの、社員に浸透していない」「理念を掲げているだけで、日々の行動や判断に結び付いていない」──このような悩みを抱える企業は少なくありません。

行動理念は、作ることが目的ではなく、社員一人ひとりの意思決定や行動の基準として機能して初めて価値を発揮します。しかし、評価制度や1on1、採用、オンボーディングなどと連動していなければ、時間の経過とともに形骸化してしまうケースも多く見られます。

本記事では、企業文化への投資を重視するLayerXの取り組みを事例に、行動理念が浸透しない原因や、カルチャーブックを活用した具体的な施策を解説します。理念を「掲げるだけ」で終わらせず、組織文化として定着させたい企業はぜひ参考にしてください。

株式会社LayerX(レイヤーエックス)とは

  • 会社名:株式会社LayerX(レイヤーエックス)
  • 設立日:2018年8月1日
  • 本社所在地:東京都中央区築地1-13-1 銀座松竹スクエア 5階
  • 代表取締役:代表取締役CEO 福島良典
  • 事業内容:法人支出管理サービス「バクラク」の開発・運営
  • ミッション:すべての経済活動をデジタル化する
  • URL:https://layerx.co.jp/

2018年、Gunosyの子会社として設立されました。設立当初は、ブロックチェーン技術を用いたコンサルティングやシステム開発支援などを手がけていました。

2020年代に入り、企業向けの業務デジタル化サービスに事業の軸を移行。2025年以降は、AIエージェントや生成AI関連の事業を拡大しています。

行動理念が形骸化する原因

言葉だけの理念になりがち

どの企業にも「うちはこんなバリューを大事にしています」「私たちの行動理念は○○です」という形で、経営理念や行動指針を掲げていることが多いでしょう。ところが、それらが現場レベルまで浸透しきっていないケースは珍しくありません。

たとえば「挑戦を歓迎する」などの抽象的なフレーズだけでは、具体的にどんな行動が“挑戦”とみなされるのか、社員1人ひとりの理解度がバラつきがちです。

結局「それって具体的にどういうこと?」という疑問が解消されず、理念はあっても実際の行動に落とし込まれないという状況が生まれます。

また、経営陣や一部のリーダー層だけが声高に行動理念を唱えていても、日常の会話や評価プロセス、意思決定などに反映されないと、社員たちは「結局は口先だけ」と受け取りがちです。

こうしたギャップが続くと、せっかく定義した行動理念が形だけの存在になり、社内で見向きもされなくなってしまいます。

急速な組織拡大による価値観のブレ

少人数の組織であれば、代表者の考えや会社の大切にしたい価値観が、日々の業務を通じて自然に共有されやすいものです。

ところが、ある程度の規模になると、新しく入社する社員が増え、部署やチームによって文化が微妙に異なる、いわゆるサブカルチャーが発生しやすくなります。

さらに採用においては、十分なオンボーディングを実施する時間も取れず、企業文化や行動理念を口頭や雰囲気だけで伝えることに限界が生じてきます。

結果、価値観の共有が曖昧なまま部署ごとに“暗黙のルール”が積み上がり、組織全体の一体感が失われてしまうのです。

企業文化への投資がもたらす効果

意思決定と行動のスピードアップ

明確な行動理念が現場にまで浸透している組織では「この状況で自分はどう行動すべきか?」という判断がしやすくなります。特に変化の激しい近年では、いかに迅速に意思決定を行い、実行に移せるかが大きな差を生みます。

行動指針を軸に、誰もが判断の基準を共有していれば、上長にいちいちお伺いを立てなくても、ある程度の方向感をもって進められるはずです。組織全体にとっては“決裁スピードの向上”につながり、結果的に新しい試みにチャレンジしやすい土壌ができあがります。

社員のエンゲージメント向上

社員が会社の理念に共感し「自分の行動や働き方は、この理念とつながっている」と実感できると、仕事へのモチベーションや責任感は自然と高まります。

逆に行動理念があやふやだったり、経営層しか知らなかったりすると、自分が何のためにがんばっているのかが見えづらくなるのです。

日々の業務に追われるなかでも「会社のゴールと自分の将来像がリンクしている」「この組織でなら、自分の成長が期待できる」と感じられれば、社員にとってその企業は長く働きたい場所となるでしょう。

優秀な人材ほど“納得感”を大事にする時代だからこそ、企業文化への投資は結果的に高いエンゲージメントを育む投資でもあるわけです。

採用・定着力の強化

採用面でも、行動理念や企業文化の明確さは大きなアドバンテージになります。

応募者は「この会社はどんな価値観のもとで働いているのか?」をしっかりチェックしており、言葉と行動が一致していれば「ここなら自分に合いそう」と安心材料になります。

また定着面でも、理念が曖昧な組織にいると社員の中に「なんだか肌に合わない」「会社の方向性が見えない」という不満が蓄積しやすく、早期離職につながるリスクがあります。

逆に企業文化とマッチしていれば、社員同士が自然に協力し合い、離職率の低さチームの連携力につながりやすいのです。

LayerXの事例:羅針盤とは何か

企業文化を可視化するカルチャーブック

株式会社LayerX(レイヤーエックス)は「すべての経済活動をデジタル化する」というビジョンを掲げ、急成長を遂げている企業です。

事業戦略と並行して、またはそれ以上に「企業文化への投資」を重視しており、その一環として導入しているのがカルチャーブック「羅針盤」です。

メルカリをはじめとする急成長企業の多くがバリュー(行動指針)を組織運営の根幹に据えています。LayerXも同様に、行動理念を明確化し、それを“使えるツール”としてアップデートし続けるために、カルチャーブックを活用しています。

羅針盤のコンセプトと作成プロセス

「羅針盤」は、その名の通り、社員が迷ったときや判断に悩んだときに参照できる“指針”として機能します。

抽象的な理念だけでなく「この行動はLayerXっぽい」「これはLayerXらしくない」といった具体例を示すことで、日々の業務において“判断軸”として活用できるように作られているのが特徴です。

さらに、入社初日や1ヶ月後に時間をとって、「羅針盤」に沿った企業文化の説明をしっかり行うとのことです。

社員が増加し、従業員数が100名を超えた段階で、口頭伝達や雰囲気だけの共有では限界があると感じたCEOがこれをカバーする方法として打ち出したのが「資料(スライドや動画)による明確化」でした。

コミュニケーションと評価への落とし込み

「羅針盤」は、単に“ドキュメントを作って社内共有した”で終わらず、1on1や日常のフィードバック機会に積極的に取り入れられているのがポイントです。たとえば、

  • 「最近の業務で、どんな行動がLayerXらしいと感じた?」
  • 「先月のプロジェクトで、何がLayerXらしくなかったと思う?」

など、具体的なシーンと照らし合わせながら振り返ることで、“形骸化”を防いでいるそうです。社員数が増えるほど、全員が同じ価値観を共有し、行動理念を実践するのは難しくなりますが、こうした運用の仕組みがあれば浸透度を維持しやすいというわけです。

羅針盤を活用するメリット

行動理念の“具体化”で認識のズレを解消

行動理念は、どうしても抽象的な表現になりやすいもの。しかし「羅針盤」のようにカルチャーブックという形で具体的な行動例やエピソードを可視化すると、社員が共通のイメージを持ちやすくなるメリットがあります。

「“挑戦を歓迎する”とは、会議で新しいアイデアを出すときに批判されるのではなく、建設的なフィードバックが帰ってくる雰囲気がある」というように、言葉だけでなく行動シーンを示すことで、認識のズレを大幅に減らせます。

これは、部署や職種、入社時期などが違っていても、目指すべき姿を同じフレームワークで考えられるという点で大きいです。

部署横断の連携強化

組織が大きくなると、どうしても部署ごとの方針や空気感が出てきます。

それ自体は自然なことですが、共通の価値観や行動理念がないまま放置されると、「あの部署とウチは相性が悪い」「あのチームはやり方が違うから理解できない」といった対立やミスコミュニケーションを生みやすくなります。

その点、同じ“羅針盤”を社内全体で共有しておけば、少なくとも行動基準の根っこにある価値観は一致している状態がつくりやすくなります。

相手がどんな基準で物事を考えているのか、どんな姿勢を重視しているのかがわかると、スムーズに共通言語でコミュニケーションできるのです。

自然な“アップデート”を促す文化

行動理念やバリューは、一度決めたらそのまま動かせないものではありません。

むしろ市場環境や組織構造の変化に合わせて、適宜アップデートしていくことが理想的です。しかし、実際には「作ったけど放置してしまった」というケースが多いでしょう。

LayerXの場合、「羅針盤」を日常的に参照しているため、現場レベルの変化や改善要望を拾いやすくなっていると考えられます。

社員から「最近、こういう行動指針も必要かもしれない」という意見が出やすくなり、経営陣も「では、ここを調整しよう」といった具合に柔軟なアップデートがしやすい仕組みが生まれます。

こうした企業文化は、変化が激しいビジネス環境で生き残るうえでも大きな強みとなるはずです。

まず一歩を踏み出すためのステップ

自社の行動理念を再確認する

もし今すでに行動理念やバリューを掲げているのであれば、まずはそれを再確認することから始めましょう。改めて眺めてみて、「現場の実態や価値観と合っているか?」「現在の会社の規模やフェーズにフィットしているか?」を点検します。

  • そもそも誰が作ったのか、不明確になっていないか
  • 具体的に“行動例”として示せるか
  • 社員が理解しやすい言葉で書かれているか

こうした視点で洗い出し、必要であればバリューの再定義文言の見直しも検討しましょう。

カルチャーブックや共通資料の作成

次のステップとして、LayerXの「羅針盤」のように、行動理念を可視化するための資料(カルチャーブックなど)を作成してみるのがおすすめです。

ポイントは、「社員がいつでも見返せる状態を作る」ことと、「抽象的な理念を具体的な行動やエピソードに落とし込む」こと。

  • スライドや動画、Webページなど、形式は自由
  • 実際の成功事例・失敗事例を“行動指針”の視点で整理
  • 新入社員研修の中で読み込んでもらう仕掛け

特に新入社員にとっては、初期のオンボーディングで企業文化を理解するかしないかが、
その後の働き方や定着率に大きく影響すると言われています。

カルチャーブックがあれば、雰囲気や口伝えだけでは伝わりづらいニュアンスを補足できるでしょう。

評価や研修とつなぎ、運用サイクルを回す

カルチャーブックを作っただけで満足してしまうと、いつかは“読み物”になって終わりかねません。
そこで、人事評価や研修プログラムのなかで活用する工夫が欠かせません。たとえば、

  • 評価シートに行動理念の項目を組み込み、「どの程度体現できていたか」を面談で話し合う
  • 半年ごとや四半期ごとの研修やワークショップで、カルチャーブックを参照しながら事例共有
  • 1on1やチームミーティングで、「最近どこがバリューっぽかった?」とフィードバックの話題にする

こうした運用サイクルを回すことで、行動理念が**“使われる”存在**として定着しやすくなります。

社員の声を拾いながら改善を続ける

最初から完璧な行動理念やカルチャーブックを作る必要はありません。
むしろ、社内の状況や事業環境に合わせて柔軟にアップデートしていく姿勢が大切です。

  • 社員から「ここの表現が分かりにくい」「もっとこういう価値観を付け足したい」という意見を募集する
  • 定期的にカルチャーブック見直しの機会をつくる
  • 社員の成功エピソードや学びを共有し、ドキュメントに追加・改訂する

こうしたプロセスを経ることで、行動理念が社員にとって“自分ごと”になり、会社全体で共有する文化へと育っていきます。

まとめ

行動理念は、策定しただけでは組織に浸透しません。

社員一人ひとりが日々の仕事の中で「どのような判断や行動が自社らしいのか」を理解し、実践できる仕組みを整えることで、初めて企業文化として根づいていきます。

株式会社LayerX(レイヤーエックス)の事例からもわかるように、カルチャーブックの整備やオンボーディング、1on1、人事評価など、理念を日常業務へ落とし込む仕組みづくりが重要です。

理念を繰り返し言葉で伝えるだけではなく、社員が実際に使える判断基準として運用することが、形骸化を防ぐポイントになります。

行動理念の浸透は短期間で実現できるものではありません。しかし、企業文化への継続的な投資は、採用力や定着率、社員のエンゲージメント向上など、中長期的に組織の大きな強みにつながります。

株式会社Tsumuguでは、MVVや行動理念の策定だけでなく、人事制度や採用基準、1on1、サーベイと連動した組織づくりをご支援しています。理念を組織に根づかせたい企業様は、お気軽にご相談ください。

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ABOUT US
塔筋大樹株式会社Tsumugu代表取締役
同志社大学卒業後、地元金融機関へ新卒入社。その後、株式会社リクルートジョブズ(現リクルート)へ中途入社。求人広告営業として全国トップクラスの営業成績を収め、営業リーダーや代理店支援を担当。その後、Indeed特別認定パートナーの株式会社アド・イーグル執行役員として営業・人事・企画領域を管掌。現在は株式会社Tsumugu代表取締役として、中小企業の採用・育成・評価・定着に関する課題に対し、データとAIを活用した人事支援を行っている。