2019年度の新卒採用にかかる費用は、1人あたり平均採用コスト93.6万円です。(※1)。
さらに、入社から半年以内に退職した場合、採用や教育にかかったコスト、生産性の低下などを含めると、企業の損失は数百万円規模になることも珍しくありません。
若手社員の早期離職は、採用コストだけでなく、教育にかけた時間や現場の負担、生産性の低下など、企業に大きな影響を与えます。
それにもかかわらず「給与を上げる」「福利厚生を充実させる」といった施策だけで離職防止を図っている企業は少なくありません。
しかし、若手社員が辞める理由は待遇面だけではなく、企業と若手社員の認識のズレや、育成・評価・職場環境など複数の要因が重なっています。
本記事では、若手が定着しない会社に共通する特徴をデータをもとに解説するとともに、離職率を改善するために企業が見直すべきポイントや、若手社員が長く活躍できる組織づくりの考え方をわかりやすく紹介します。
若手が定着しない会社は企業と若手の認識にギャップがある
若手社員の離職に悩む企業では、実施している離職防止策と、若手社員が実際に感じている課題がかみ合っていないことがあります。
企業が「十分に対応している」と考えていても、若手社員が改善を実感できているとは限りません。こうした認識のズレを放置したままでは、制度を見直しても定着率の向上につながらない可能性があります。
職場改善と人事評価に大きな認識の差がある
中小企業の経営層・人事・管理職とZ世代社員を対象にした調査では、職場改善と人事評価について、次のような認識の違いが見られました。
| 調査項目 | 経営層・人事・管理職 | Z世代社員 | 差 |
|---|---|---|---|
| 社員の声が職場改善に反映されている | 70% | 33% | 37ポイント |
| 人事評価が公正である | 69% | 37% | 32ポイント |
出典:中小企業の若手社員と経営層のすれ違う認識に関する意識調査(2025)
特に大きな差があるのは、社員の声が職場改善に反映されているかどうかです。経営層・人事・管理職では70%が反映されていると回答した一方、Z世代社員では33%にとどまりました。
人事評価についても、企業側の69%が公正だと考えているのに対し、Z世代社員で公正だと感じている割合は37%です。会社側が制度や面談の機会を用意していても、若手社員が「意見を聞いてもらえた」「評価の理由を理解できた」と感じていなければ、十分な取り組みとはいえません。
重要なのは、若手社員の要望をすべて受け入れることではなく、企業側の認識だけで施策の効果を判断しないことです。
1on1や従業員サーベイなどを通じて若手社員の声を確認し、対応できること、対応が難しいこと、その理由を伝える必要があります。意見を集めるだけで終わらせず、結果の共有や施策への反映まで行うことが大切です。
企業が考える離職要因と実施施策が直接対応していない場合もある
HR総研の調査では、企業が考える若手社員の離職要因と、実際に取り組んでいる離職防止策について、次の結果が示されています。
| 順位 | 企業が考える離職要因 | 実施している離職防止策 |
|---|---|---|
| 1位 | 給与・福利厚生 | コミュニケーションの活性化 |
| 2位 | 上司との人間関係 | 待遇改善 |
| 3位 | 業務内容のミスマッチ | 職場環境の向上 |
| 4位 | 社内での成長が見込めない | 1on1の実施 |
| 5位 | 上司以外との人間関係 | 教育・研修制度の強化 |
出典:HR総研「若手人材の離職防止に関する調査」(2023)
コミュニケーションの活性化や1on1は、上司との関係改善や業務上のミスマッチの把握にも役立つため、離職要因と施策の順位が違うだけで、対策が間違っているとはいえません。
ただし、自社の若手社員が抱えている問題を確認せず、一般的な離職防止策を導入するだけでは、期待した効果が得られない可能性があります。例えば、評価への不満が主な原因であるにもかかわらず、社内イベントを増やしても根本的な解決にはなりません。
離職防止策を選ぶ前に、自社では何が退職や不満につながっているのかを把握することが必要です。
給与や待遇の改善だけで定着率が上がるとは限らない
給与や福利厚生は、安心して働き続けるための重要な条件です。給与水準が仕事内容や責任に見合っていなければ、それ自体が離職の原因になります。
一方で、待遇を改善するだけですべての問題が解決するわけではありません。評価に納得できない、上司へ相談しにくい、成長を実感できない、休日を取得しにくいといった問題が残っていれば、若手社員の不満は解消されません。
若手社員が退職時に「給与が理由」と話していても、その背景に、仕事量と報酬が見合っていない、評価基準が分からない、将来の昇給やキャリアを見通せないといった問題が隠れていることもあります。
給与や待遇の見直しとあわせて、評価制度、働き方、上司との関係、成長機会など、日々の職場環境も確認することが重要です。
1on1、従業員サーベイ、退職者インタビューなどを活用し、企業側の予想だけで離職原因を決めつけないようにしましょう。若手社員が何に不満や不安を感じているのかを継続的に確認することが、効果的な離職防止策につながります。
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若手社員が離職する主な原因
若手社員の離職は、給与や福利厚生だけで決まるものではありません。仕事内容への違和感、上司との関係、評価への不満など、複数の要因が重なって退職に至るケースもあります。
若手社員の定着率を高めるには、表面的な退職理由だけでなく、その背景にある職場や組織の課題まで確認することが重要です。
若手社員が離職する主な原因として、次の6つが挙げられます。
- 採用時の説明と入社後の実態にギャップがある
- 仕事にやりがいや成長を感じられない
- 人事評価に納得できない
- 上司との関係やコミュニケーションに問題がある
- 労働時間や休日などの働き方に不満がある
- 会社の将来や自身のキャリアが見えない
採用時の説明と入社後の実態にギャップがある
求人情報や面接で聞いていた内容と、入社後の仕事内容や職場環境が異なると、若手社員は会社に不信感を抱きやすくなります。
例えば、希望していた職種へ配属されない、想定より残業が多い、教育体制が整っていないといったケースです。採用を優先するあまり、仕事の魅力だけを強調すると、入社後のミスマッチにつながります。
早期離職を防ぐには、仕事内容や待遇だけでなく、仕事の厳しさや職場の実情も採用段階で正しく伝えることが大切です。
仕事にやりがいや成長を感じられない
同じ業務の繰り返しで新しい経験が得られない、自分の仕事が何に役立っているのか分からないといった状態が続くと、若手社員は働く意味を見失いやすくなります。
特に成長意欲の高い社員は、現在の待遇に大きな不満がなくても、「この会社では成長できない」と感じれば転職を検討する可能性があります。
上司は業務を指示するだけでなく、その仕事の目的や期待する役割を伝え、本人の成長を具体的にフィードバックする必要があります。
関連記事:採用ミスマッチはなぜ起きる?早期離職だけで判断しない原因の見分け方と対策
人事評価に納得できない
評価基準が曖昧であったり、上司によって評価が変わったりすると、若手社員は努力しても報われないと感じます。評価結果だけを伝え、理由を説明しないことも不満につながります。
人事評価では、制度上の公平性だけでなく、本人が評価の理由を理解し、納得できる状態をつくることが重要です。
評価基準や昇進条件を明確にしたうえで、評価面談では良かった点、改善すべき点、今後期待する役割を具体的に伝えましょう。
上司との関係やコミュニケーションに問題がある
若手社員にとって、直属の上司との関係は働きやすさを左右する重要な要素です。相談しても話を聞いてもらえない、失敗を一方的に責められる、指示が頻繁に変わるといった状況では、安心して働けません。
一方で、上司が気を遣いすぎて指導やフィードバックを避けることも、若手社員の成長を妨げます。
定期的な1on1などを通じて、業務の進捗だけでなく、困っていることや今後の希望も確認することが大切です。
労働時間や休日などの働き方に不満がある
長時間労働が続く、休日を取得しにくい、急な勤務変更が多いといった職場では、仕事と私生活を両立することが難しくなります。
制度として有給休暇や柔軟な働き方を用意していても、実際には利用しにくい雰囲気があれば、若手社員の不満は解消されません。
制度の有無だけで判断せず、若手社員が実際に休暇を取得できているか、無理のない働き方ができているかまで確認しましょう。
会社の将来や自身のキャリアが見えない
会社が今後どのような事業を伸ばしていくのか、自分にはどのような役割やキャリアが用意されているのか分からないことも、離職につながる原因です。
特に若手社員は、今の仕事だけでなく、数年後にどのような経験やスキルを得られるかも見ています。会社の方針やキャリアの選択肢が共有されていなければ、将来への不安から転職を考えることがあります。
経営方針を伝えるだけでなく、本人の希望を確認し、現在の仕事が将来のキャリアにどうつながるのかを一緒に整理することが必要です。
若手社員の離職を防ぐには、一律の対策を講じるのではなく、本人との対話を通じて不満や不安の原因を把握することが欠かせません。
若手社員の離職や定着に関係する4つの要素
「若手社員が何を考えているのか分からない」と感じている経営者や人事担当者もいるでしょう。しかし、同じ若手社員でも、仕事や会社に求めるものは一人ひとり異なります。
成長機会を重視する人もいれば、仕事のやりがいや生活との両立、会社の安定性を優先する人もいます。世代だけで価値観を決めつけず、本人との対話を通じて何を大切にしているのかを確認することが必要です。
若手社員の離職や定着を考えるうえで、特に確認したいのは次の4つです。
- 自身の成長機会とキャリア
- 仕事のやりがいと働く意義
- 柔軟な働き方とワークライフバランス
- 会社の将来性と経営の安定性
自身の成長機会とキャリア
成長意欲の高い若手社員は、現在の仕事内容だけでなく、その会社で働き続けることで何を経験し、どのようなスキルを身につけられるかを見ています。
同じ業務だけが続く、目指せる役職やキャリアが分からない、挑戦したい仕事を任せてもらえないといった状態では、将来への期待を持ちにくくなります。
「この会社ではこれ以上成長できない」と感じることは、若手社員が転職を考えるきっかけの一つです。
一方で、若手社員が求める成長は、昇進や管理職への登用だけとは限りません。専門性を高めたい、新しい仕事を経験したい、異なる職種へ挑戦したいなど、希望するキャリアは人によって異なります。
関連記事:優秀な人が突然辞める会社の共通点とは?離職を防ぐエンゲージメント向上のポイント
仕事のやりがいと働く意義
若手社員の定着には、仕事にやりがいや意味を感じられるかどうかも関係します。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズの調査では、会社を辞めたいと思ったことがある新人・若手社員の退職意向理由として、「仕事にやりがい・意義を感じない」が1位に挙がりました。
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「新人・若手の早期離職に関する実態調査」(2023)
業務の一部分だけを任されている若手社員は、自分の仕事が顧客や組織にどう役立っているのかを実感しにくいことがあります。目的が分からないまま作業だけを求められる状態が続けば、仕事への意欲も低下しかねません。
仕事内容そのものだけでなく、自分の仕事が誰にどのような価値を提供しているのかを理解できることが重要です。
成果や貢献を実感できる機会が少ないと、仕事への納得感を得にくくなります。本人がどのような仕事にやりがいを感じるのかも、日頃の対話から確認する必要があります。
柔軟な働き方とワークライフバランス
仕事だけでなく、プライベートも大切にしたいと考える若手社員は少なくありません。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズの調査では、新人・若手社員が「労力をかけて手に入れたいもの」として、次の回答を挙げています。
| 順位 | 手に入れたいもの | 割合 |
|---|---|---|
| 1位 | プライベートの充実 | 24.4% |
| 2位 | 高い収入 | 23.0% |
| 3位 | 自分のやりたいことをやる | 16.8% |
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「新人・若手の早期離職に関する実態調査」(2023)
プライベートの充実が1位ですが、高い収入や自分のやりたいことも上位に入っています。若手社員が一様に仕事よりプライベートを優先しているわけではなく、生活との両立、待遇、自己実現をそれぞれ求めていることが分かります。
理想とする仕事とプライベートのバランスについても、新人・若手社員と上司・育成担当者の間で違いが見られました。
| 仕事とプライベートの比率 | 新人・若手社員 | 上司・育成担当者 |
|---|---|---|
| 3:7 | 28.5% | 20.2% |
| 5:5 | 39.3% | 47.1% |
| 7:3 | 24.1% | 26.4% |
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「新人・若手の早期離職に関する実態調査」(2023)
仕事とプライベートの比率を「3:7」と回答した割合は、新人・若手社員が28.5%、上司・育成担当者が20.2%で、8.3ポイントの差があります。
一方、若手社員で最も多かった回答は「5:5」の39.3%です。回答が一つに集中していないことからも、理想とするバランスには個人差があることが分かります。
若手社員というだけで働き方への希望を決めつけず、本人がどのようなバランスを望んでいるのかを確認することが大切です。
会社の将来性と経営の安定性
若手社員が働き続けるかを考えるうえでは、会社の将来性や経営の安定性も判断材料になります。
同調査では、会社を辞めたいと思いながら働き続けている理由として、次の回答が上位に挙がりました。
| 順位 | 働き続けている理由 | 割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 転職へのリスクを感じる | 21.3% |
| 2位 | 会社がつぶれる心配がない | 18.0% |
| 3位 | 条件に合う転職先が見つからない | 14.2% |
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「新人・若手の早期離職に関する実態調査」(2023)
この結果から、会社の経営が安定していることは、転職せずに働き続ける判断材料の一つになっていると考えられます。
ただし、この調査は「会社を辞めたいと思いながら働き続けている理由」を尋ねたものです。そのため、会社の安定性だけで仕事への満足度や定着意欲が高まるとまでは言い切れません。
また、若手社員が感じる安定は、単に会社が変化しないことではありません。事業の将来像が見えない、環境の変化に対応していない、今後の方針が社員に共有されないといった状況では、経営が安定していても将来への不安が生まれます。
現在の経営状態だけでなく、会社が今後どこを目指すのか、その中で自分がどのような役割を担えるのかも、若手社員の定着に関係します。
若手社員の定着率を高める6つの改善策
若手社員が離職する原因は、採用時のミスマッチ、育成不足、評価への不満、上司との関係など、企業によって異なります。そのため、一般的な施策を一律に導入するだけでは、十分な効果を得られないことがあります。
まずは1on1や従業員サーベイを通じて、自社の若手社員が何に不満や不安を感じているのかを確認しましょう。そのうえで、次の6つの改善策から必要なものを選びます。
- 求める人物像を明確にして採用ミスマッチを防ぐ
- 入社後の育成とオンボーディングを整える
- 1on1やサーベイで若手社員の意見を確認する
- 納得感のある人事評価制度を整える
- 柔軟に働き続けられる職場環境を整える
- 若手社員が安心して相談できる職場をつくる
求める人物像を明確にして採用ミスマッチを防ぐ
若手社員の離職防止は、入社後ではなく採用段階から始まっています。
仕事内容や必要なスキルだけでなく、自社の価値観、働き方、組織風土まで踏まえて、求める人物像を具体化しましょう。そのうえで、会社説明会や面接では仕事の魅力だけでなく、業務の難しさや入社後に求める役割も伝えます。
採用時の説明と入社後の実態に大きな違いがあると、会社への不信感や早期離職につながります。
採用数を増やすことだけを優先せず、実際の仕事内容や職場環境を伝え、応募者にも自社が合うか判断してもらうことが大切です。
経験やスキルだけでなく、本人の特性や自社との相性を把握すると、採用後のミスマッチを減らしやすくなります。
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入社後の育成とオンボーディングを整える
採用した若手社員の育成を配属先や直属の上司だけに任せると、部署や担当者によって教え方やフォローの内容に差が生まれます。業務を十分に教えてもらえないまま成果を求められれば、本人は不安や負担を感じるでしょう。
入社後の定着を支援するには、仕事に慣れるまでの流れをあらかじめ設計する必要があります。
- 入社後に習得する業務と期限を明確にする
- 業務マニュアルや研修を用意する
- 直属の上司とは別に相談できる相手を決める
- 入社1カ月・3カ月・6カ月後に面談する
- 業務の習得状況や負担を人事も確認する
- 本人に期待する役割を具体的に伝える
オンボーディングでは、業務を教えるだけでなく、職場の人間関係や会社のルールに慣れるまで支援することが重要です。
特に入社直後は、分からないことがあっても「何を質問すればよいのか分からない」という状態になりがちです。会社側から定期的に声をかけ、困りごとを確認しましょう。
1on1やサーベイで若手社員の意見を確認する
離職防止策を考える前に、若手社員が仕事内容や職場について何を感じているのかを把握する必要があります。
上司との1on1だけでは話しにくい問題もあるため、人事面談や従業員サーベイなど、複数の方法を組み合わせるとよいでしょう。
- 上司との定期的な1on1
- 入社1カ月・3カ月・6カ月後のフォロー面談
- 従業員サーベイやエンゲージメントサーベイ
- 人事担当者によるヒアリング
- 退職者インタビュー
ただし、意見を集めるだけでは十分ではありません。改善できることは施策に反映し、すぐに対応できないことについても、その理由や今後の方針を伝える必要があります。
若手社員の要望をすべて受け入れるのではなく、現場で起きている問題を把握し、必要な改善につなげることが目的です。
定期的な対話を続けることで、仕事内容への不満、上司との関係、評価への疑問など、離職につながる問題を早い段階で把握しやすくなります。
関連記事:1on1のやり方|続けても部下が育たない3つの原因と改善方法
納得感のある人事評価制度を整える
人事評価への不満は、若手社員が会社への信頼を失う原因になります。評価基準が曖昧、上司によって判断が変わる、昇進や昇給の条件が分からないといった状態では、将来のキャリアを描けません。
前述した調査では、経営層・人事・管理職の69%が人事評価を公正だと考えている一方、公正だと感じているZ世代社員は37%にとどまっています。企業が制度を整えているつもりでも、若手社員が評価に納得しているとは限りません。
| 納得感につながる人事評価 | 不満につながりやすい人事評価 |
|---|---|
| 評価基準が明示されている | 評価基準が曖昧になっている |
| 職種や役割に応じて評価される | 異なる職種を同じ基準で評価している |
| 評価の理由が具体的に説明される | 評価結果だけが一方的に通知される |
| 定期的にフィードバックを受けられる | 日頃の仕事を見ないまま評価される |
| 昇進や昇給の条件が分かる | 上司との関係によって評価が左右される |
評価制度を作るだけでなく、本人が評価の理由を理解し、次に何をすれば評価されるのか分かる状態にすることが大切です。
管理職による評価のばらつきを確認するとともに、評価面談では結果だけでなく、良かった点、改善点、今後期待する役割まで具体的に伝えましょう。
関連記事:人事評価の透明性を高める方法とは?公平な評価制度の作り方とメリットを解説
柔軟に働き続けられる職場環境を整える
若手社員の定着率を高めるには、生活環境が変わっても働き続けられる職場をつくる必要があります。
柔軟な働き方は、在宅勤務やフレックスタイム制に限りません。職種や事業の特性に合わせて、勤務時間や休日、業務量について相談できる状態をつくることが重要です。
- 在宅勤務やリモートワーク
- フレックスタイム制や時差出勤
- 短時間勤務
- 時間単位の有給休暇
- 勤務地や勤務時間に関する相談制度
- 育児や介護と仕事を両立するための支援
制度の数を増やすことよりも、社員が必要なときに実際に利用できることが大切です。
制度があっても、利用すると評価が下がる、上司に嫌な顔をされる、同僚に負担が集中するといった状況では使われません。制度の導入とあわせて、管理職への周知や人員配置、業務分担も見直しましょう。
結婚、出産、育児、介護、転居など、若手社員も将来的にさまざまなライフイベントを迎えます。現在の働きやすさだけでなく、状況が変わった後も働き続けられるかという視点が必要です。
若手社員が安心して相談できる職場をつくる
若手社員が悩みや疑問を抱えたとき、早い段階で相談できる職場をつくることも離職防止につながります。
心理的安全性が低い職場では、質問や失敗の報告をためらい、一人で問題を抱え込む社員が増えます。上司が異変に気づいたときには、すでに退職の意思が固まっていることもあります。
パーソル総合研究所の「職場での対話に関する定量調査」では、職場で本音を話せない人が50.4%にのぼりました。若手社員の定着には、制度だけでなく、普段から安心して話せる関係づくりが欠かせません。
次のような対応は、若手社員が相談しにくくなる原因になります。
- 威圧的・攻撃的な態度を取る
- 最後まで聞かずに意見を否定する
- 大勢の前で叱責する
- 失敗した本人だけを責める
- 相談内容を本人の許可なく周囲へ話す
- 上司の価値観や成功体験を一方的に押しつける
相談の機会を増やすだけでなく、相談を受けた上司がどのように話を聞き、その後どう対応するかまで見直すことが重要です。
管理職には、傾聴やフィードバックの方法を学ぶ機会を設けましょう。また、直属の上司には話しにくい問題もあるため、人事担当者や他部署の管理職など、複数の相談先を用意することも有効です。
関連記事:心理的安全性が高い職場の特徴とは?4つの要素と高めるための具体策
若手社員の定着率を改善した企業の取り組み事例
若手社員の定着率を高めるには、一般的な離職防止策をそのまま導入するのではなく、自社で起きている問題を把握したうえで施策を選ぶことが重要です。
ここでは、若手社員の定着につながる取り組みとして、次の2つの事例を紹介します。
- 柔軟な働き方を整えて離職率を改善した事例
- インターンシップ参加者と非参加者の3年以内離職率を比較した調査
柔軟な働き方の整備により年間離職率が低下した事例
柔軟な働き方によって離職率を改善した企業として、スープストックトーキョーの事例があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な取り組み | 短時間勤務、複業の推進、店舗の欠員を補うヘルプ専門社員の配置 |
| 改善前の年間離職率 | 23% |
| 改善後の年間離職率 | 12.8% |
出典:日本の人事部「休暇と複業の両輪で社員の生活価値を拡充するスープストックトーキョーの働き方“開拓”」(2021)
スープストックトーキョーでは、「働き方“開拓”」と呼ばれる取り組みを進め、短時間勤務に加えて複業も推進しました。社外での複業だけでなく、社内で複数の仕事を経験できる仕組みも整えています。
さらに、店舗で働く社員から寄せられた「代わりに店舗を任せられる人がいないため、休暇を取りにくい」という声を受け、欠員が出た店舗を支援するヘルプ専門社員を配置しました。
制度を用意するだけでなく、現場で制度を利用できない原因にも目を向けたことで、年間離職率は23%から12.8%まで低下しています。
この事例のポイントは、流行している人事制度を形式的に導入したのではなく、現場の声をもとに働き続けにくい原因を特定し、具体的な仕組みへ落とし込んだことです。
柔軟な働き方を導入しても、人手不足や上司の理解不足によって利用できなければ、若手社員の定着にはつながりません。制度の内容だけでなく、実際に利用できる職場環境まで整える必要があります。
インターンシップ参加者は3年以内離職率が低い傾向
若手社員の早期離職を防ぐには、入社後の施策だけでなく、採用段階で仕事内容や職場への理解を深めてもらうことも重要です。
パーソル総合研究所の調査では、インターンシップ参加者と非参加者の3年以内離職率に、次のような違いが見られました。
| 対象者 | 3年以内離職率 |
|---|---|
| インターンシップ参加者 | 16.5% |
| インターンシップ非参加者 | 34.1% |
出典:パーソル総合研究所「企業インターンシップの効果検証調査」(2019)
この調査では、インターンシップ参加者の3年以内離職率は16.5%で、非参加者の34.1%を下回りました。
ただし、この結果だけで、インターンシップへの参加が離職率を直接低下させたと断定することはできません。参加者はもともと企業への関心や入社意欲が高かった可能性もあります。
それでも、学生が入社前に実際の仕事内容や職場の雰囲気を知る機会を設けることは、採用後のミスマッチを減らすうえで有効です。現場社員との対話を通じて、仕事の魅力だけでなく、難しさや求められる役割まで伝えられます。
インターンシップでは、次の内容を具体的に伝えることが大切です。
- 実際の仕事内容と1日の流れ
- 仕事で感じやすいやりがいと難しさ
- 配属後に期待される役割
- 入社後の育成方法やフォロー体制
- 将来経験できる仕事やキャリアの選択肢
- 職場の雰囲気や社員同士の関わり方
採用時に都合のよい情報だけを伝えるのではなく、入社後の働き方を具体的に想像できる情報を提供することが、早期離職の防止につながります。
一方、会社説明だけで終わり、仕事や職場を体験できない内容では、入社後のミスマッチを防ぐ効果は限定的です。インターンシップを実施する際は、参加者が実際の仕事や社員について理解できるプログラムを設計しましょう。
関連記事:インターンシップを採用につなげる方法とは?採用直結型インターンの進め方と成功事例
まとめ
若手社員が定着しない原因は、給与や福利厚生だけではありません。企業が良かれと思って実施している施策と、若手社員が本当に求めていることとの間に認識のズレが生じているケースは少なくありません。
離職率を改善するためには、採用・育成・評価・マネジメントを切り離して考えるのではなく、一貫した人事戦略として見直すことが重要です。また、若手社員の声を継続的に聞き、制度や働き方をアップデートし続ける姿勢も欠かせません。
若手が「長く働きたい」と思える会社は、一朝一夕ではつくれません。自社の現状を正しく把握し、小さな改善を積み重ねることが、定着率向上と組織の成長につながります。
※1 出典:株式会社リクルート 就職みらい研究所『就職白書2020』(2020)
※2 出典:エン・ジャパン株式会社『「早期離職」に関する実態調査 入社から半年で早期離職が発生した場合、企業の損失額は「640万円」。 早期離職経験者は31%。後悔の最多は「転職活動が大変になった」。』(2025)を元に、給与水準を年収300万として弊社にて試算





















