部下へのフィードバックとは?効果的な伝え方・種類・育成につながる実践方法

部下へのフィードバックとは?効果的な伝え方・種類・育成につながる実践方法

「部下に改善点を伝えても、素直に受け入れてもらえない」
「褒めるだけでは成長につながらない気がする」
「フィードバックのやり方が分からず、結局評価面談だけで終わってしまう」

このような悩みを抱える管理職や人事担当者は少なくありません。

フィードバックは、単に部下の良し悪しを評価したり、改善点を指摘したりするものではありません。適切なフィードバックは、部下の成長を促し、信頼関係を深め、組織全体の生産性やエンゲージメントを高める重要なマネジメント手法です。

一方で、伝え方を間違えると、部下のモチベーション低下や心理的安全性の低下を招き、逆効果になってしまうこともあります。

本記事では、フィードバックの基本的な考え方から、ポジティブ・ネガティブフィードバックの違い、実践で使える具体的な手法、部下が前向きに行動できる伝え方まで詳しく解説します。

フィードバックとは

フィードバックとは、相手の行動や成果について具体的に伝え、今後の成長や行動改善につなげるコミュニケーションのことです。

上司から部下へのフィードバックというと、「できていないことを指摘する」「改善点を伝える」といった場面を想像しがちですが、それだけではありません。良かった行動を認めて継続を促すことも、重要なフィードバックの一つです。

フィードバックは、大きく「ポジティブ・フィードバック」と「ネガティブ・フィードバック」の2つに分けられます。それぞれ目的や伝え方が異なるため、相手の状況に応じて使い分けることが大切です。

ポジティブ・フィードバック

ポジティブ・フィードバックとは、部下の良かった行動や成果、努力などを認め、それを本人に伝える方法です。

単に「褒める」のではなく「何が良かったのか」を具体的に伝え、本人の強みや望ましい行動を伸ばしていくことを目的とします。

国際エグゼクティブコーチのヴィランティ牧野祝子さんは、著書『国際エグゼクティブコーチが教える 人、組織が劇的に変わる ポジティブフィードバック』(あさ出版)の中で、相手の可能性を信じ、フィードバックを受ける側が「大切に思われている」と感じられることの重要性を説いています。

良かった点を具体的に伝えることで、本人は「この行動を続ければいい」「自分の強みはここにある」と理解しやすくなります。結果として、自信や仕事へのモチベーションが高まり、同じ行動の再現にもつながります。

ただし、ポジティブ・フィードバックは意外と簡単ではありません。特に経験を積んだ上司ほど、自分ならできることを基準にしてしまい、部下のできていない部分に目が向きやすくなります。

前職のリクルート時代、私もよく「上司は、りんごの欠けた部分についつい目が行ってしまう」と注意されていました。

欠けた部分だけを見れば気になるところがあります。しかし、残っている実に目を向ければ、良いところはたくさんあります。部下に対しても同じで、改善点を探すだけではなく「すでにできていること」「以前より良くなったこと」に意識的に目を向けることが大切です。

関連記事:ポジティブフィードバックとは?社員の成長を促す効果・やり方・例文を解説

ネガティブ・フィードバック

ネガティブ・フィードバックとは、相手の行動や成果と、求められる状態とのギャップを伝え、改善や成長を促す方法です。

株式会社コンカー代表取締役社長の三村真宗さんは、著書『みんなのフィードバック大全』の中で「ギャップ・フィードバック」という言葉を使っています。

例えば、改めてほしい言動がある場合や、現在より高いパフォーマンスを期待する場合、仕事に必要なスキルやスタンスを身につけてもらいたい場合などに行います。

ここで注意したいのは、ネガティブ・フィードバックは「叱ること」や「否定すること」ではないという点です。目的は相手を責めることではなく、現状と期待する状態の違いを理解してもらい、次の行動につなげることにあります。

適切に伝えられれば、本人が自分では気づいていなかった課題を認識し、「次はどう改善すればいいか」を考えるきっかけになります。

一方で、伝え方を間違えると、必要以上のプレッシャーやストレスを与えてしまいます。「能力がない」「仕事が遅い」と本人を評価するのではなく、人格ではなく、具体的な行動や事実に対してフィードバックすることが重要です。

また、ちょっとした軌道修正で済むものと、成果や組織への影響が大きく、しっかり改善を求めるべきものでは伝え方も変わります。すべての指摘を同じ強さで伝えるのではなく、問題の大きさに応じてフィードバックの強度を調整しましょう。

関連記事:1on1のやり方|続けても部下が育たない3つの原因と改善方法

ポジティブ・フィードバックの4つの承認

ポジティブ・フィードバックといっても、成果を褒めるだけが方法ではありません。結果が出るまでの行動を評価したり、日頃の関わり方を通じて相手を認めたりすることもフィードバックの一つです。

ポジティブ・フィードバックにおける承認は、主に次の4つに分けられます。

  • 結果承認:成果や達成したことを認める
  • 行為承認:成果に至るまでの行動やプロセスを認める
  • 存在承認:相手の存在そのものを認める
  • 可能性承認:将来の成長や可能性を認める

結果承認は、相手が出した成果や達成したことに対するフィードバックです。

例えば、「今回の新規案件を獲得できたのは大きかったね。提案資料もわかりやすかった」といった伝え方です。

単に「すごい」「よくやった」と褒めるだけでなく、何が良かったのかまで具体的に伝えることで、本人も成功した理由を理解しやすくなります。「次もこのやり方を続けよう」と考えられるため、成果の再現にもつながります。

行為承認は、結果だけではなく、そこに至るまでの行動やプロセスを認めるフィードバックです。

例えば、「商談前に競合まで調べていたのが良かった」「毎日欠かさず顧客へのフォローを続けているね」といった伝え方です。

仕事は、努力したからといってすぐに結果が出るとは限りません。結果だけを見て評価していると、成果が出るまでの期間は本人が「このやり方で合っているのだろうか」と不安になってしまうことがあります。

フルマラソンに例えるなら、行為承認は途中の給水のようなものです。ゴールに到達するまでの途中で「その進め方でいい」「そこは良かった」と伝えることで、本人も自信を持って走り続けることができます。

存在承認は、成果や能力に関係なく、一人のメンバーとして相手を認めることです。

難しく考える必要はありません。朝に顔を見て「おはよう」と挨拶する、名前を呼ぶ、話をするときに相手を見る、意見を最後まで聞く。こうした日常のコミュニケーションも存在承認にあたります。

上司から普段ほとんど声をかけられない職場と、日常的にコミュニケーションがある職場では、部下から見た話しかけやすさも変わります。存在承認は地味ですが、相談や意見を言いやすい関係をつくるうえで欠かせません。

可能性承認は、現在の成果だけで判断せず、相手の将来や成長の可能性を認めるフィードバックです。

例えば「この経験は次のプロジェクトでも活かせると思う」「この部分を伸ばせば、もっと大きな案件も任せられると思う」といった言葉が該当します。

可能性承認では、できていないことを無理に褒める必要はありません。現状の課題を踏まえたうえで、「ここを伸ばせば、もっとできるようになる」と期待を伝えることがポイントです。

4つの承認すべてを特別な面談の場で行う必要はありません。むしろ、日頃から「いいね」「その進め方は良かった」「助かったよ」と短く伝えるほうが自然です。

フィードバックは1on1や評価面談だけで行うものではありません。普段から小さな承認を積み重ねておくことで、改善点を伝えなければならない場面でも、部下が上司の言葉を受け止めやすい関係をつくることができます。

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ネガティブ・フィードバックにおける6つのRight

ネガティブ・フィードバックは、何を伝えるかだけでなく、「いつ・どこで・どのように伝えるか」によって受け取られ方が大きく変わります。

ここでは、株式会社コンカー代表取締役社長の三村真宗さんの著書『みんなのフィードバック大全』で紹介されている「6つのRight」をもとに、ネガティブ・フィードバックを伝える際のポイントを解説します。

  • Right Occasion:適切なタイミングで伝える
  • Right Environment:1対1で落ち着いて話す
  • Right Tone:感情的にならず冷静に伝える
  • Right Atmosphere:日頃から伝えられる雰囲気をつくる
  • Right Relationship:信頼関係を築いておく
  • Right Motivation:部下の成長を目的にする

Right Occasion|適切なタイミングで伝える

1つ目は「Right Occasion(適切な機会に)」です。

フィードバックは、相手が「もっと良くしたい」と思っているタイミングで伝えると受け入れられやすくなります。

例えば、役員へのプレゼンや重要な商談が終わった直後です。本人も「あそこはもっと上手くできたかもしれない」「次は改善したい」と考えているため、「ここを変えると、もっと良くなると思う」と伝えれば、前向きなアドバイスとして受け止めてもらいやすくなります。

反対に、本人が仕事に追われているときや、感情的になっている最中に無理に伝えても、内容が頭に入らないことがあります。言いたいことがあるからすぐ伝えるのではなく、相手が受け取れる状態かどうかを見ることも上司には必要です。

立教大学の中原淳教授も、著書『フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術』の中で、フィードバックを行う機会やタイミングの重要性について触れています。

特に、昇進や異動、担当変更などによって役割が変わる「トランジション」の時期は、それまでの仕事の進め方を見直す機会になります。新しい役割に適応しようとしている時期だからこそ、周囲からのアドバイスにも耳を傾けやすくなります。

大きな仕事を終えた直後や役割が変わったタイミングなど、本人の中に「次はもっと良くしたい」という気持ちが生まれているときを逃さないことがポイントです。

Right Environment|1対1で落ち着いて話せる環境をつくる

2つ目は「Right Environment(適切な環境で)」です。

改善点を伝えるフィードバックは、基本的に1対1で行います。同僚や他部署のメンバーがいる前で指摘すると、本人は内容よりも「みんなの前で注意された」ということに意識が向いてしまいます。

プライドを傷つけられたと感じれば、本来なら受け入れられる内容でも反発したくなるものです。上司にそのつもりがなくても、周囲からは「みんなの前で叱っている」ように見えてしまう可能性もあります。

また、改善点を伝える場合は、Slackやチャットだけで完結させるより、対面やオンライン会議など会話できる方法が向いています。文章だけでは相手の反応がわかりづらく、想定以上にきつい印象を与えてしまうことがあるためです。

対面にこだわる必要はありませんが、相手の表情や声のトーンを確認しながら、双方向で話せる環境を選びましょう。

Right Tone|叱るのではなく、冷静に伝える

3つ目は「Right Tone(適切なトーンで)」です。

ネガティブ・フィードバックと「叱ること」は同じではありません。目的は相手を責めることではなく、現状と期待する状態のギャップを伝え、次の行動につなげることです。

感情的にならず、相手への敬意を持って冷静に伝えることが基本です。

例えば、「なんでこんなこともできないの?」では、本人を否定されたように感じます。一方で、「今回は確認が足りなかったと思う。次回は提出前にこの2点を確認してほしい」であれば、何を改善すればいいのかが明確です。

フィードバックでは「人」ではなく「行動」を見る。この線引きは意識しておきたいところです。

Right Atmosphere|普段からフィードバックできる雰囲気をつくる

4つ目は「Right Atmosphere(適切な雰囲気で)」です。

半年に1回の評価面談で突然「実は前から気になっていたんだけど……」と言われたら、部下としては面食らいます。「それならもっと早く言ってほしかった」と感じる人もいるでしょう。

フィードバックを特別なイベントにせず、普段のコミュニケーションに組み込んでおくことが大切です。

そのためにも、改善点ばかりを指摘するのではなく、「今日の説明はわかりやすかった」「あの対応は助かった」など、良かった行動についても日頃から伝えておきましょう。

普段からポジティブなフィードバックを受けていれば、改善点を指摘されたときにも「自分を否定されている」のではなく、「仕事を良くするための話だ」と受け止めやすくなります。

Right Relationship|日頃から信頼関係を築いておく

5つ目は「Right Relationship(適切な関係性で)」です。

同じ内容でも、「誰から言われるか」によって受け止め方は変わります。普段ほとんど会話をしない上司から突然厳しい指摘をされれば、「自分の仕事をちゃんと見ているのだろうか」と疑問を持たれても不思議ではありません。

ネガティブ・フィードバックを機能させる土台になるのが、日頃の信頼関係です。

ただし、信頼関係ができるまで改善点を伝えてはいけないという意味ではありません。問題があれば伝える必要があります。そのうえで、日頃から部下の仕事を見る、話を聞く、良かったところも伝えるといった積み重ねが、フィードバックの受け入れやすさにつながります。

Right Motivation|部下を責めるために使わない

6つ目は「Right Motivation(適切な動機で)」です。

フィードバックをする前に、一度「自分は何のためにこれを伝えるのか」を考えてみてください。

仕事上のミスに腹が立ったから言う。自分の指示どおりに動かなかったから注意する。気に入らない態度だったから厳しく指摘する。これではフィードバックではなく、上司が自分の感情をぶつけているだけになってしまいます。

フィードバックの目的は、部下の成長と、その先にある仕事や組織の改善です。

もちろん上司も人間なので、腹が立つことはあります。ただ、感情が強く出ているときにそのまま伝える必要はありません。「これは本人の成長につながる指摘なのか」「単に自分が言いたいだけではないか」と一度考えてから伝えるだけでも、言葉の選び方は変わります。

6つのRightをすべて完璧に実践する必要はありません。まずは「今、この場所、この伝え方で本当に相手に届くか」を考えることから始めてみましょう。ネガティブ・フィードバックは厳しく伝えるほど効果があるのではなく、相手が理解し、次の行動を変えられて初めて意味があります。

ポジティブとネガティブフィードバックの理想的な割合は?

部下へのフィードバックでは、「褒めること」と「改善点を伝えること」を、どのくらいの割合にすればいいのでしょうか。

このテーマでよく紹介されるのが、ポジティブとネガティブの比率を約3:1にする「ロサダ比」です。

ロサダ比は、心理学者のバーバラ・フレドリクソン氏とマーシャル・ロサダ氏が2005年に発表した論文で示された考え方です。ポジティブな感情とネガティブな感情の比率が「2.9013:1」を超えることが、人が良い状態で機能するための一つの基準として提示されました。

この数字から「1つ注意したら3つ褒める」といった考え方が広まり、マネジメントや人材育成の分野でも「3:1」という数字が紹介されるようになりました。

ただし、現在では「2.9:1を超えれば人や組織が良い状態になる」という数理的な根拠は否定されています。2013年には、この比率を導き出した数理モデルに問題があることが指摘され、フレドリクソン氏自身も数理モデルについては撤回しています。

そのため、「ポジティブ3回につきネガティブ1回」と機械的に考える必要はありません。仕事の状況や本人の経験、改善すべき問題の大きさによって、必要なフィードバックは変わります。

とはいえ、上司が部下のできていない部分ばかりに目を向けていると、フィードバックが「注意される時間」になってしまいます。前述した結果承認や行為承認などを普段から伝えながら、必要なときには改善点もしっかり伝える。このバランスのほうが重要です。

「何対何が正解か」ではなく、普段から良かった行動を見つけて伝えられているか。まずはそこを意識してみるとよいでしょう。

関連記事:1on1ミーティングの質問例|部下の本音を引き出す質問項目と進め方

フィードバックの伝え方|SBIモデルを活用する

ここまでフィードバックの種類や考え方を紹介してきましたが、実際の職場では「何をどう伝えればいいのかわからない」という人も多いでしょう。

フィードバックは、思ったことをその場で伝えればいいわけではありません。特に改善点を指摘する場合は、伝え方ひとつで相手の受け取り方が変わります。

ここからは、フィードバックを実践する際の準備や伝え方について解説します。

フィードバックの前に伝える内容を整理する

フィードバックは、経験を重ねるほど上達します。ただし、いきなり実践だけで身につけようとする必要はありません。特に慣れないうちは、「何を伝えるのか」「相手にどう行動してほしいのか」を事前に整理しておくことをおすすめします。

ネガティブな内容であれば、なおさら準備が必要です。相手が反論したり、想定していた反応と違ったりすると、上司側も感情的になってしまうことがあります。

そこで有効なのが、フィードバックをする前の「脳内予行演習」です。

相手に何を伝えるのか、どんな反応が返ってきそうか、それに対してどう答えるのか。頭の中で一度シミュレーションしておくだけでも、本番で話が脱線しにくくなります。

重要なフィードバックであれば、実際に声に出して練習したり、別のマネジャーとロールプレイしたりするのもよいでしょう。

SBIモデルで「事実」を整理する

事前準備をするときに使いやすいのが、「SBIモデル」です。

SBIは「Situation(状況)」「Behavior(行動)」「Impact(影響)」の頭文字を取ったもので、フィードバックする内容を次の3つに分けて整理します。

  • Situation(状況):いつ、どのような場面だったのか
  • Behavior(行動):本人が具体的に何をしたのか
  • Impact(影響):その行動によって何が起きたのか

例えば、「昨日の営業会議で(Situation)、競合3社との違いを数字で説明していたよね(Behavior)。あの説明があったことで、参加者も今回の提案の強みを理解しやすかったと思う(Impact)」といった伝え方です。

改善点を伝える場合も同じです。「最近、資料の詰めが甘いよ」では、何を直せばいいのかわかりません。

「昨日の営業会議で(Situation)、売上予測について質問されたときに根拠となる数字を説明できなかった(Behavior)。そのため、提案内容そのものの信頼性まで疑われてしまった可能性がある(Impact)」と伝えれば、本人もどの行動が問題だったのかを理解できます。

「良かった」「悪かった」だけではフィードバックではなく、上司の感想で終わってしまいます。いつ、どの場面の、どの行動について話しているのか。できるだけ事実に落として伝えることがポイントです。

フィードバックの目的は「次の行動」を変えること

フィードバックするときに、もう一つ忘れてはいけないのが「何のために伝えるのか」です。

フィードバックすること自体が目的ではありません。良かった行動なら再現してもらう。改善すべき行動なら、次から変えてもらう。そのためにフィードバックを行います。

フィードバックは「過去の行動」を振り返るだけでなく、「次にどうするか」までセットで伝えることが大切です。

例えば、「先日のナレッジ共有、みんな参考になったと言っていたよ。実際に商談で使えたというメンバーもいた。余裕があるときに、また共有してもらえると助かる」と伝えれば、本人にも「この行動は続けたほうがいい」とわかります。

改善点を伝える場合も、「プレゼンが良くなかった」で終わらせるのではなく、「今回のプレゼンでは、質問されたときに根拠となる数字が少なかった。次回は、決裁者が判断するときに必要になる数字を事前に整理しておこう」と伝えます。

これなら、本人も次回から何を変えればいいのかがわかります。

目的は、部下を言い負かすことでも、上司が正しさを証明することでもありません。本人の行動が変わり、仕事が良くなることがゴールです。そこから逆算すると、何を伝えるべきかも整理しやすくなります。

一方的に伝えて終わりにしない

上司が伝えたいことをすべて話したからといって、フィードバックが成功したとは限りません。本人が納得していなかったり、何をすればいいのかわかっていなかったりすれば、行動は変わらないからです。

伝えた後は、「ここまで聞いてどう思った?」「次はどうすれば良さそう?」と本人の考えも聞いてみましょう。

上司から部下への一方通行ではなく、最後は本人と「次にどうするか」をすり合わせることが重要です。

上司が考えた改善策より、本人からもっと良い方法が出てくることもあります。また、自分で考えて決めた行動のほうが、本人も実行しやすくなります。

日本の職場では「察してほしい」に注意する

フィードバックでは、言葉にして伝えることを意識する必要があります。

その背景を考えるうえで参考になるのが、文化人類学者のエドワード・T・ホールが提唱した「ハイコンテクスト文化」と「ローコンテクスト文化」という考え方です。

ハイコンテクスト文化とは、すべてを言葉で説明するのではなく、文脈や人間関係、共通認識などから相手が意味を読み取るコミュニケーションが多い文化を指します。

一方、ローコンテクスト文化では、背景を共有していない相手にも伝わるよう、言葉で明確に説明することが重視されます。

日本は比較的ハイコンテクストな文化として説明されることが多く、職場でも「これくらい言わなくてもわかるだろう」「前回の注意で察してほしい」と考えてしまうことがあります。

しかし、フィードバックで「察してほしい」は禁物です。

上司には伝えたつもりがあっても、部下が同じ意味で受け取っているとは限りません。特に改善を求める場合は、「もう少し頑張って」「ちゃんとして」といった曖昧な表現ではなく、何をどう変えてほしいのかまで言葉にする必要があります。

フィードバックは、生まれつきのコミュニケーション能力だけで決まるものではありません。SBIモデルなどを使って内容を整理し、実践を重ねれば上達できます。

事実を伝える、次の行動を決める、相手の考えを聞く。まずはこの3つを意識するところから始めてみましょう。

管理職のフィードバックや1on1、部下育成に課題を感じている企業は、Tsumuguのマネジメント研修・組織開発支援についてお気軽にご相談ください。

部下がフィードバックを受け入れないときは?

伝え方を工夫しても、部下がフィードバックを素直に受け入れてくれないことはあります。「言い訳ばかりする」「納得していない様子がある」「その場では返事をするものの行動が変わらない」といったケースです。

こうした場合、上司の伝え方だけに原因があるとは限りません。フィードバックを成長につなげるためには、上司の「伝える力」と同時に、部下側の「受け取る力」も必要です。

まずは部下の言い分を聞く

フィードバックに対して部下が反論してきたとき、すぐに「言い訳をしている」と判断するのは避けましょう。

上司から見えている事実と、本人から見えている事実が違うこともあります。本人なりの理由があったり、上司が把握していない事情が隠れていたりするかもしれません。

フィードバックは、上司が一方的に正解を伝える場ではありません。

「この点について自分ではどう思う?」「何か理由があった?」と聞き、まず本人の認識を確認します。そのうえで、上司と部下の認識にどのような違いがあるのかを整理していきましょう。

人格ではなく「事実」と「行動」を伝える

部下がフィードバックを受け入れない場合は、伝えている内容が「評価」になっていないかも確認してみましょう。

例えば、「仕事が雑だよ」「主体性がないよ」と言われても、本人からすれば「そんなことはない」と反論したくなります。

一方、「昨日提出してもらった資料では、3カ所数字の間違いがあった」「先月の会議では、自分から意見を出したことが一度もなかった」と具体的な事実を伝えれば、話し合うべきポイントが明確になります。

相手の性格や能力を評価するのではなく、実際に起きた事実と行動について話すことが大切です。

前述したSBIモデルを使い、「どの場面で」「どのような行動があり」「どのような影響があったのか」を整理してから伝えるのも有効です。

フィードバックを受け取る力「コーチャビリティ」を育てる

フィードバックやコーチングの領域では「コーチャビリティ」という考え方があります。

コーチャビリティとは、他者からの助言や指摘を受け止め、自分の成長や行動改善につなげていく力のことです。

ここで重要なのは、「上司の言うことを何でも素直に聞く人」を目指すわけではないことです。フィードバックの内容に納得できなければ、自分の考えを伝えても構いません。そのうえで、「自分に活かせる部分はないか」と一度考えられることが大切です。

コーチャビリティは、本人だけの問題でもありません。普段から上司が部下の話を聞かず、できていないところばかり指摘している環境では、部下もフィードバックに身構えるようになります。

日頃から良かった行動も伝える、本人の意見を聞く、フィードバック後の変化を認める。こうしたコミュニケーションを積み重ねることで、フィードバックを「怒られる時間」ではなく「仕事を良くするための対話」として受け止めやすくなります。

フィードバックは、上司の「伝える力」だけでは成立しません。部下の「受け取る力」と、それを支える上司との信頼関係がそろって初めて、行動の変化につながります。

まとめ|フィードバックは「次の行動」まで伝える

フィードバックの目的は、部下を評価したり、間違いを指摘したりすることではありません。部下の成長を後押しし、その先にある組織の成果やより良い職場づくりにつなげることです。

そのためには、上司が正しい伝え方を身につけるだけでなく、部下が助言を受け止め、行動に移せる環境を整える必要があります。日頃から承認や対話を積み重ね、フィードバックを特別なイベントではなく、自然なコミュニケーションとして根付かせていくことが大切です。

一方で、部下や上司、組織全体の考え方を抜本的に変えたい場合、社内だけの働きかけでは変化が起こりにくいこともあります。組織内の人から伝えられると受け入れにくい内容でも、第三者から伝えられることで、異なる視点として素直に受け止められるケースもあるためです。

そのような場合は、外部研修や専門家による支援を取り入れることも一つの方法です。

Tsumuguでは、現場のマネジャーや社員を対象に、フィードバックをはじめとしたスキル・スタンス研修を実施しています。部下育成や管理職のマネジメント、組織風土の改善に課題を感じている場合は、お気軽にご相談ください。

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ABOUT US
塔筋大樹株式会社Tsumugu代表取締役
同志社大学卒業後、地元金融機関へ新卒入社。その後、株式会社リクルートジョブズ(現リクルート)へ中途入社。求人広告営業として全国トップクラスの営業成績を収め、営業リーダーや代理店支援を担当。その後、Indeed特別認定パートナーの株式会社アド・イーグル執行役員として営業・人事・企画領域を管掌。現在は株式会社Tsumugu代表取締役として、中小企業の採用・育成・評価・定着に関する課題に対し、データとAIを活用した人事支援を行っている。