「せっかく内定を出したのに辞退されてしまった」「入社して数か月で退職してしまった」。このような悩みを抱える企業は少なくありません。
近年は売り手市場が続き、学生や求職者が複数の企業から内定を得ることも珍しくありません。そのため、採用活動は内定を出して終わりではなく、入社までのフォローが重要な時代になっています。
内定者フォローを適切に行うことで、内定辞退の防止だけでなく、入社前の不安を解消し、企業への理解や信頼を深めることができます。その結果、入社後のミスマッチや短期離職の防止にもつながります。
本記事では、内定者フォローの目的や重要性をはじめ、内定辞退・短期離職を防ぐための具体的な施策5選、実施時の注意点、効果を高めるポイントまでわかりやすく解説します。
内定者フォローとは
内定者フォローとは、企業が内定通知後から入社日までの間に行う、情報提供やコミュニケーションなどの取り組みです。
具体的には、定期的な連絡、入社前面談、社員との交流会、職場見学、研修、必要書類の案内などが挙げられます。単に連絡を途切れさせないことではなく、内定者が抱えている疑問や不安を把握し、入社に向けて必要な情報や機会を提供することが大切です。
内定者フォローの目的は、内定辞退を引き止めることだけではありません。仕事内容や職場への理解を深め、内定者が納得したうえで入社できる状態をつくることにあります。
内定者フォローが重要な理由
内定から入社までの期間が長いほど、内定者は仕事内容や人間関係、新しい環境で働くことに不安を感じやすくなります。企業からの連絡がない状態が続けば、「本当に歓迎されているのか」「入社までに何を準備すればよいのか」と疑問を抱くこともあります。
内定辞退を防ぎやすくなる
内定者が就職活動を続けていたり、複数の企業から内定を得ていたりする場合、入社先を決めるまで迷うことがあります。定期的に連絡を取り、疑問や不安に丁寧に対応することで、企業への理解を深めてもらい、内定辞退の防止につなげられます。
入社後のミスマッチを減らせる
選考中に伝えきれなかった仕事内容や働き方、職場の雰囲気を入社前に共有することも重要です。良い面だけでなく、仕事の大変さや求められる役割も具体的に伝えることで、入社後に「想像していた仕事と違った」と感じるリスクを抑えられます。
入社に向けた準備を進めやすくなる
必要な手続きや入社後のスケジュール、配属予定の部署などを早めに案内すれば、内定者は落ち着いて入社準備を進められます。また、上司や先輩社員と事前に接点を持つことで、入社初日の緊張や孤立感も和らげやすくなります。
内定者フォローで大切なのは、企業側から一方的に情報を送るのではなく、内定者の状況や不安を確認しながら、必要な支援を行うことです。
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短期離職が起きる背景と企業への影響
入社後の早い段階で社員が退職すると、採用や教育にかけた費用を回収できないだけでなく、既存社員の負担が増えることもあります。採用をやり直す必要が生じれば、現場と採用担当者の双方に新たな負担がかかります。
短期離職を減らすには、退職後の原因を振り返るだけでなく、内定から入社後までの受け入れ方を見直すことが重要です。
新卒社員の3人に1人が3年以内に離職している
厚生労働省が公表した調査によると、2022年3月に大学を卒業して就職した人のうち、就職後3年以内に離職した割合は33.8%でした。新卒社員のおよそ3人に1人が、入社から3年以内に最初の勤務先を離れている計算です。
短期離職の理由は一つではありません。仕事内容や労働条件に対する認識の違い、上司や同僚との人間関係、教育体制への不満、将来のキャリアが見えないことなど、複数の要因が重なって退職に至る場合もあります。
すべての離職を内定者フォローで防げるわけではありません。ただし、選考中や入社前に仕事内容、配属予定、働き方、会社の雰囲気を具体的に伝えておけば、認識のずれを減らすことはできます。内定者が質問や不安を伝えやすい関係をつくっておくことも、入社後の定着を支える土台になります。
参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
採用や教育にかけた費用が無駄になりやすい
採用には、求人広告費や人材紹介手数料だけでなく、説明会、面接、入社手続き、研修などにも費用と時間がかかります。社員が十分に活躍する前に退職すると、それまでにかけた費用を回収しにくくなり、欠員を補うための採用費も必要になります。
採用人数の少ない中小企業では、一人の退職が事業に与える影響も小さくありません。人手不足によって業務の進行が遅れたり、新しい仕事を受けにくくなったりする可能性があります。
既存社員の負担が増える
退職者が担当していた仕事は、後任が決まるまで既存社員が引き継ぐことになります。採用後も、業務の説明や教育を改めて行わなければなりません。短期離職が続けば、現場が新人の受け入れに疲れ、育成に前向きになれなくなることもあります。
残った社員に業務や教育の負担が偏ると、職場全体の意欲が下がり、別の退職を招く悪循環に陥るおそれがあります。
今後の採用にも影響する
短期離職が多い状態を放置すると、求人を出しても必要な人数を確保できず、採用活動を繰り返すことになります。また、退職者の口コミなどを通じて職場の問題が伝われば、応募をためらう求職者が増える可能性もあります。
大切なのは、退職した本人だけに原因を求めないことです。採用時の説明、配属先の受け入れ体制、上司とのコミュニケーション、入社後の教育などを振り返り、改善できる点がなかったかを確認する必要があります。
関連記事:20代・若手社員が活躍する会社の特徴とは?定着率を高める組織づくりのポイント
内定辞退を防ぐ5つの施策
内定辞退を防ぐために、連絡の回数を増やせばよいわけではありません。内定者が何に不安を感じているのかを確認し、入社の判断に必要な情報を伝えることが大切です。
ここでは、内定から入社までの期間に取り入れやすい5つの施策を紹介します。自社の採用人数や内定から入社までの期間に合わせて、無理なく続けられる方法を選びましょう。
施策1:入社前のオンボーディングを行う
オンボーディングとは、新しく入社する社員が職場に慣れ、仕事を始めるために必要な支援を行うことです。一般的には入社後に行いますが、入社前から必要な情報を伝えておくことで、内定者の不安を減らせます。
入社前に伝えておきたいのは、初日の集合時間や持ち物だけではありません。配属予定の部署、担当する仕事、研修の流れ、入社後に期待する役割なども、決まっている範囲で共有します。
会社説明会や面接で伝えた内容と、実際の仕事内容にずれがないかを確認する機会にもなります。職場見学や配属先の社員との面談を設ければ、内定者は入社後の働き方をより具体的にイメージできます。
良い面だけを伝えるのではなく、仕事の難しさや忙しい時期についても説明することが、入社後のミスマッチを減らすうえで重要です。
施策2:定期的に連絡する
内定通知から入社まで連絡が途切れると、内定者は「入社手続きは進んでいるのか」「自分は本当に必要とされているのか」と不安を感じることがあります。内定承諾後も、今後の予定や社内の様子を定期的に伝えましょう。
連絡する内容は、入社手続きの案内、研修日程、配属先の紹介、社内イベントのお知らせなどで十分です。毎回長い文章を送る必要はありません。新しく伝える情報がない場合でも、担当者から近況を確認するだけで接点を保てます。
一方で、企業側が頻繁に連絡すると、内定者の負担になることもあります。連絡手段や希望する頻度を最初に確認し、メール、電話、オンライン面談などを使い分けるとよいでしょう。
相談先を明確にしておくことも大切です。採用担当者や配属先の社員など、質問できる相手を伝えておけば、内定者が疑問を抱え込むのを防げます。
定期連絡の目的は、入社を迫ることではなく、内定者が不安や疑問を率直に話せる関係をつくることです。
施策3:先輩社員との接点をつくる
採用担当者には聞きにくいことでも、年齢や立場の近い社員であれば相談しやすい場合があります。配属予定の部署や職種が決まっている場合は、先輩社員との面談や座談会を設けるとよいでしょう。
話す内容は、実際の仕事内容、一日の流れ、入社直後に苦労したこと、職場の雰囲気などです。現場で働く社員の率直な話を聞くことで、内定者は入社後の生活を具体的にイメージしやすくなります。
メンター制度を導入する場合は、誰が相談を受けるのか、どのくらいの頻度で連絡するのかを決めておきます。ただし、入社前から本格的な指導を行う必要はありません。まずは顔と名前を覚えてもらい、困ったときに相談できる関係をつくることが大切です。
先輩社員を選ぶ際は、話しやすさだけでなく、自社の仕事や働き方を誤解なく伝えられるかも確認しましょう。
施策4:社員や内定者同士の交流機会を設ける
内定者懇親会や職場見学を実施すると、入社前に社員や同期となる内定者と顔を合わせることができます。知っている人がいるだけでも、入社初日の緊張や孤立への不安を和らげやすくなります。
交流会は、大がかりなイベントにする必要はありません。少人数のランチ会やオンライン座談会、若手社員への質問会など、自社で無理なく続けられる形で十分です。経営者や配属先の責任者が参加し、会社の方針や内定者に期待していることを直接伝える機会を設けてもよいでしょう。
ただし、参加を強く求めたり、長時間拘束したりすると、内定者の負担になります。学業や現在の仕事、居住地などを考慮し、参加しやすい日程やオンラインで参加できる選択肢を用意しましょう。
施策5:Webサイトや連絡ツールで情報を共有する
内定者向けの情報は、メールだけでなく、採用サイトや社内で使用している連絡ツールでも共有できます。入社までの予定、必要な手続き、研修内容、社員紹介などを一か所にまとめておけば、内定者が必要なときに確認できます。
採用サイトに社員インタビューや職場紹介の動画を掲載することも、入社後のイメージづくりに役立ちます。選考中に見た情報を繰り返すのではなく、配属後の一日の流れや入社前に準備しておくことなど、内定者が知りたい内容を追加するとよいでしょう。
内定者同士の交流にLINEやSNSを使用する場合は、参加を必須にしない配慮も必要です。個人アカウントを会社やほかの内定者に知られたくない人もいます。業務用の連絡ツールを用意するなど、プライバシーに配慮した方法を選びましょう。
ツールを導入すること自体が目的ではありません。内定者が必要な情報を確認でき、困ったときに相談できる状態をつくることが重要です。
内定者フォローを行う際の注意点
内定者との接点を増やしても、企業側の都合だけで連絡やイベントを繰り返すと、かえって負担を与えてしまいます。内定辞退を防ぎたいという気持ちを前面に出すのではなく、内定者が安心して入社を判断できるように支援する姿勢が必要です。
連絡やイベントの頻度を一律にしない
内定者が希望する連絡頻度は、人によって異なります。こまめに情報を受け取りたい人もいれば、必要な連絡だけを希望する人もいます。毎週の面談や頻繁な電話を一律に設定すると、監視されているように感じる人もいるでしょう。
内定承諾後の面談などで、希望する連絡手段や頻度を確認しておくと対応しやすくなります。また、入社までの連絡予定をあらかじめ伝えておけば、内定者も見通しを持って準備できます。
連絡回数の多さではなく、内定者が必要としている時期に、必要な情報を届けられているかを確認しましょう。
全員に同じ内容を送るだけで終わらせない
一斉メールや定型文は、日程や手続きを案内する際には便利です。ただし、それだけでは内定者が抱えている個別の不安まで把握できません。
配属先、転居の有無、社会人経験、入社までの期間によって、必要な情報は変わります。たとえば、遠方から転居する人には住居や通勤に関する案内が必要です。新卒者には、入社時の服装や研修の進め方まで伝えたほうが安心できる場合もあります。
すべてを個別対応にする必要はありません。一斉連絡と個別面談を使い分け、内定者が質問や相談をしやすい機会を設けることが大切です。
入社を強く迫らない
内定者の不安や迷いを聞かずに入社の意思を繰り返し確認すると、かえって企業への不信感を招くことがあります。他社の選考状況を細かく尋ねたり、懇親会や研修への参加を強く求めたりすることも避けましょう。
内定者から迷っていると相談された場合は、無理に引き止めるのではなく、何を判断材料にしているのかを確認します。仕事内容や配属、働き方について誤解があれば、正確な情報を伝えたうえで本人に判断してもらうことが重要です。
内定者フォローは入社を約束させるためのものではなく、本人が納得して入社先を選べるようにする取り組みです。
採用管理ツールで内定者フォローを効率化する
内定者が増えると、連絡の履歴や書類の提出状況、イベントの出欠などを一人ずつ管理するのが難しくなります。担当者ごとに情報を管理していると、連絡の重複や漏れが起きることもあります。
こうした場合に役立つのが、採用管理ツールです。応募者の選考状況だけでなく、内定承諾後の連絡や入社準備まで管理できるツールもあります。
内定者ごとの状況をまとめて確認できる
採用管理ツールを使えば、内定者ごとに次のような情報をまとめて管理できます。
- 内定承諾の状況
- これまでの連絡内容
- 次回の連絡予定
- 必要書類の提出状況
- 面談や懇親会への出欠
- 配属先や担当者
採用担当者が複数いる場合でも、同じ情報を確認できるため、担当者の不在時にも対応しやすくなります。連絡が止まっている内定者を把握し、フォロー漏れを防げる点もメリットです。
案内や日程調整の手間を減らせる
ツールによっては、メールの一斉送信や個別送信、面談の日程調整、アンケートの配信などができます。入社日が近づいたタイミングで必要な案内を自動送信できる機能があれば、担当者が毎回メールを作成する手間も減らせます。
ただし、すべての連絡を自動化すると、内定者の質問や不安を見落とす可能性があります。事務連絡はツールで効率化し、面談や相談への対応は担当者が行うなど、使い分けることが大切です。
採用管理ツールは、内定者とのコミュニケーションを代行するものではなく、必要なフォローを漏れなく行うための管理手段です。
採用人数が少なければ無理に導入する必要はない
年間の採用人数が少ない企業であれば、表計算ソフトやカレンダーでも管理できます。内定者ごとに連絡日、次回対応日、提出物、面談内容などを記録し、担当者間で共有できれば十分です。
一方で、採用人数や担当者が増え、情報の更新や共有に時間がかかっている場合は、採用管理ツールの導入を検討するタイミングです。機能の多さだけで選ばず、自社が管理したい項目や現在使っている連絡手段に合うかを確認しましょう。
まとめ
内定者フォローは、内定辞退を防ぐためだけの施策ではありません。入社前から企業との信頼関係を築き、不安や疑問を解消することで、入社後の定着率向上や早期離職の防止にもつながる重要な取り組みです。
定期的なコミュニケーションやメンター制度、社内イベント、オンボーディングなど、自社の規模や採用人数に合わせて無理なく継続できる施策を取り入れることが大切です。特別な制度よりも、「放置しないこと」「一人ひとりに寄り添うこと」が成果につながります。
採用市場が厳しさを増す今、内定を出した後の対応が採用成功を左右します。まずは現在の内定者フォローを見直し、入社まで安心して過ごせる環境づくりから始めてみましょう。
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