採用予算は前年のままでいい?成果につなげる予算設定の考え方

採用予算を前年のままにせず、成果につなげる予算設定を考える人事担当者

採用予算を決めるとき、「一旦何も決まっていないし、前年と同じ金額でとりあえず、、」となってしまうことはないでしょうか?確かに目標などありきでの採用計画ですが、仮に一定の人数が必要なビジネスモデルである場合、一定の期間がたったタイミングで予算を見直すことをおすすめします。

たとえば、応募が足りない会社であれば、求人広告や人材紹介への予算が必要です。しかし、応募は集まっているのに面接設定まで時間がかかっている会社が、さらに広告費を増やしても、候補者への対応が追いつかなくなる可能性があります。この場合は、採用管理システムや日程調整の自動化へ予算を使うほうが、先に解決すべき課題に合っています。

採用予算には、求人広告や人材紹介の手数料だけでなく、採用管理システム、適性検査、AI面接、採用代行などの外部費用も含まれます。さらに、採用担当者や面接官が使う時間も、表面には出にくいものの工数を圧迫する採用コストです。

採用予算を無駄にしないために大切なのは、予算を増やすか減らすかではなく、応募から入社までのどこに課題があるかを見つけ、その課題に合う施策へ配分することです。

この記事では、採用予算の相場と計算方法を確認したうえで、過去1年の実績と採用プロセスから予算の配分先を決める手順を解説します。求人広告や人材紹介だけでなく、選考の自動化や面接品質の改善も含め、自社に必要な予算について解説していきます。

目次

採用予算とは|広告費だけでなく採用活動全体の費用

採用予算とは、採用目標を達成するために、募集から入社までの活動へ配分する費用の計画です。求人広告や人材紹介に支払う金額だけではありません。採用担当者や面接官が使う時間も含め、採用活動全体を対象にします。

外部コストと内部コストに分けて考える

採用にかかる費用は、次の2つに分けると整理しやすくなります。

  • 外部コスト:求人広告、人材紹介の手数料、スカウトサービス、採用サイト制作、説明会、適性検査、ATS、AI面接、採用代行など、社外へ支払う費用
  • 内部コスト:採用担当者の対応時間、面接官の面接・評価時間、現場との打ち合わせ、リファラル採用の紹介料、候補者の交通費など、社内で発生する費用

外部コストだけを見ると、採用担当者が手作業で日程を調整している時間や、現場社員が何度も面接へ参加している負担が抜けます。予算申請では会計上の費目と分ける場合でも、施策を比較するときは社内工数まで金額に置き換えておくと判断しやすくなります。

採用単価だけでは、予算の配分先は決まらない

採用単価は「採用コスト総額÷採用人数」で計算します。前年との比較や全体効率の確認には便利ですが、どこに課題があるかは分かりません。

同じ採用単価でも、応募が少なくて広告費がかかった会社と、応募後の対応に多くの工数がかかった会社では、次年度に使うべき予算が異なります。そのため、採用単価は結果の指標として使い、予算配分は応募数、有効応募率、面接設定までの日数、面接通過率、採用数などのプロセス指標から決めます。

採用予算の相場と計算方法

一般的な採用費用は、自社の採用コストが適正かどうかの判定に役立ちます。ただし、調査によって「1社あたりの総額」か「1人あたり」か、外部費用だけか内部費用も含むかが異なります。数字だけを抜き出して自社の予算に当てはめないことが大切です。

新卒採用・中途採用の費用目安

マイナビ「2024年卒企業新卒内定状況調査」では、新卒採用費の総額平均は287.0万円、入社予定者1人あたりの平均は56.8万円でした。募集人数別の総額平均は、1〜4人が116.2万円、5〜9人が194.7万円、10〜19人が326.5万円、20人以上が949.2万円です。調査が集計する採用費には、広告、採用ツール制作、セミナー運営、アウトソーシング、インターンシップなどが含まれます(2026年9月20日確認)。

中途採用は、マイナビ「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」で、1社あたりの採用費用総額が平均650.6万円でした。一方、同社の2026年版(2025年実績)では、平均の採用目標人数が16.7人、実際の採用人数が12.3人と前年から大きく減っています。平均予算だけでなく、何人を対象にした調査かも合わせて見る必要があります(2026年9月20日確認)。

採用手法によって費用の発生の仕方は違う

求人広告は掲載期間やプランに応じた固定費、人材紹介は採用決定時の成功報酬、スカウトサービスは利用料と成功報酬の組み合わせなど、手法によって費用のかかり方が異なります。ATSやAI面接などのツールは、初期費用、月額費用、利用人数や件数に応じた従量課金を確認します。

固定費だけを比べるのではなく、採用までに必要な応募・紹介数と、社内工数も含めて比較します。掲載費が安くても有効応募が少なければ、採用までの総額は上がります。人材紹介は採用時の支払いが大きくても、募集や日程調整にかかる工数を抑えられる場合があります。

予算は「採用目標×採用単価」に工程別費用を足して計算する

最初の概算は、次の式で置けます。

採用予算の概算=職種別の採用予定人数×想定採用単価+共通費+予備費

ただし、この金額だけで確定すると前年の問題を引き継ぎます。次に、母集団形成、応募対応、選考、内定後フォローの各工程で必要な費用と社内工数を積み上げ、概算との差を確認します。

採用実績がない職種は、類似職種の実績、最新調査、媒体・紹介会社・ツールの見積もりを使って仮置きします。その場合は、年度末まで固定せず、応募や面接の実績がたまる早い段階に見直し日を設定します。

採用予算の立て方|6つのステップ

予算は、採用目標から必要額を逆算し、採用プロセスの課題に合わせて配分します。前年実績は重要ですが、そのまま翌年へ移すのではなく、次の6ステップで組み直します。

1.採用する職種・人数・期限を決める

いつまでに、どの職種を、何人採用するかを職種別に決めます。採用要件は必須条件と歓迎条件に分け、報酬、働き方、業務内容、育成前提の採用など、予算以外に変更できる条件も確認します。

2.過去1年の実績を時系列でまとめる

求人広告は「応募→有効応募→面接→採用」、人材紹介は「紹介→面接→採用」で、最低1年分の人数と費用を月別・職種別・経路別に並べます。比較できる件数があれば、媒体名だけでなく代理店・紹介会社別にも分けます。

3.応募から入社までを開き、課題を特定する

各工程の人数、通過率、対応日数、担当者工数を確認し、採用目標を最も妨げている工程を1つ選びます。単に数値が低い工程ではなく、採用数や採用期限への影響が大きい工程を優先します。

4.課題に合う施策を選ぶ

母集団形成、対応の自動化、面接設計、面接官育成などから、特定した課題に直接働く施策を選びます。社内で対応できる業務は、外注前に生成AIの活用や業務手順の見直しも検討し、外部サービスを使う場合は改善したい指標を先に決めます。

5.固定費・変動費・社内工数・予備費を積み上げる

施策ごとに、年間契約などの固定費、採用人数に応じる変動費、担当者・面接官の社内工数、欠員や難易度上昇に備える予備費を積み上げます。予算表には、対象職種、採用目標、現在の課題、施策、費用、改善する指標、見直し日を残します。

6.追加・継続・改善・停止の条件を決める

予算承認時に、見直しの頻度、評価期間、上限額を決めます。結果は追加投資、継続、運用改善、停止の4つに分け、成果が出る前の打ち切りと、結果が出ない施策の惰性運用を防ぎます。

採用プロセス別|課題に合う予算の配分先

採用予算というと、求人広告や人材紹介へいくら使うかを先に考えがちです。ただし、採用がうまくいかない原因が選考の遅れや面接方法にある場合、母集団形成へ予算を追加しても成果にはつながりません。

まず応募から入社までの流れを並べ、人数だけでなく、次の選考へ進んだ割合、対応にかかった日数、担当者の作業時間を確認します。そのうえで、採用目標を最も妨げている工程へ予算を配分します。

起きていること 確認する数字 主な予算の配分先 先に確かめること
応募が足りない 応募数・紹介数 求人広告・人材紹介・スカウト 採用条件と訴求が市場に合っているか
応募はあるが対象者が少ない 有効応募率・書類通過率 要件整理・原稿改善・媒体変更 有効応募の定義がそろっているか
面接設定が遅い 応募から面接までの日数・離脱率 ATS・日程調整・連絡自動化 どの作業に時間がかかっているか
一次面接の負担が大きい 面接件数・面接官工数・評価差 AI面接・録画面接・構造化面接 質問と評価基準を標準化できるか
面接から採用につながらない 面接通過率・内定率・辞退理由 採用基準・面接官育成・適性検査 求人要件と面接評価が一致しているか
内定辞退・早期離職が多い 承諾率・入社率・早期離職率 情報提供・オファー設計・入社後支援 入社前後の期待にずれがないか

応募が足りない場合は、母集団形成へ予算を使う

採用条件に合う人からの応募や紹介が足りない場合は、求人広告、人材紹介、ダイレクトリクルーティングなどが主な投資先です。ただし、掲載先を増やす前に、給与、勤務地、勤務時間、求める経験などの条件が採用市場と合っているかを確認します。

採用条件そのものが厳しい場合、予算を増やせば必ず採用できるわけではありません。変更できない条件と変更できる条件を分けたうえで、どの層へ、どの経路からアプローチするかを決めます。

応募はあるが有効応募が少ない場合は、要件と訴求を見直す

応募数が多くても、採用条件に合う人がほとんどいなければ、応募単価が安い媒体とはいえません。求人広告は「応募→有効応募→面接→採用」まで確認し、有効応募単価や面接単価も比較します。

この段階で必要なのは、単純な媒体追加ではなく、採用要件の整理、求人原稿の修正、媒体やターゲットの変更です。何をもって有効応募とするかが担当者ごとに違うと比較できないため、自社としての定義もそろえます。

面接設定が遅い場合は、日程調整や連絡の自動化を検討する

応募後の連絡や面接設定に時間がかかり、その間に候補者が離脱しているなら、採用担当者の作業方法が予算配分の対象になります。ATSと呼ばれる採用管理システムには、候補者と面接官の日程調整、予約受付、リマインド連絡などを自動化できるものがあります。

たとえばsonar ATSは、カレンダーと連携した面接日程の調整、候補者自身による予約、条件に応じたメールやLINEの自動送信に対応しています(sonar ATS公式/2026年9月20日確認)。導入を判断するときは、機能数ではなく、応募から初回連絡までの日数や日程調整に使っている時間がどれだけ変わるかを見ます。

一次面接の負担が大きい場合は、AI面接も選択肢になる

応募者が多く、一次面接だけで多くの時間を使っている場合は、AI面接や録画面接も選択肢になります。AI面接には、あらかじめ設定した内容をもとに一次面接を進め、回答を記録・整理するサービスがあります(NALYSYS AI面接公式/2026年9月20日確認)。

ただし、面接の質問や評価基準が曖昧なまま自動化しても、採用判断はそろいません。大量の一次面接を同じ基準で実施したいのか、面接官の予定が合わず選考が遅れているのかなど、解消したい負担を明確にしてから検討します。

面接から採用につながらない場合は、選考品質へ予算を使う

面接までは進むのに採用へつながらない場合、母集団よりも採用要件や面接方法に課題がある可能性があります。面接官によって評価が大きく変わっていないか、募集時に求めた経験と面接で確認している内容が一致しているかを見ます。

この場合の投資先は、採用基準の見直し、構造化面接、面接官研修、適性検査などです。適性検査や面接は、候補者の活躍を100%当てるものではありません。比較する項目と判断基準をそろえ、採用後の活躍や定着と照合しながら更新するために使います。

内定辞退や早期離職が多い場合は、入社前後の接続を見直す

内定辞退や早期離職が多い場合は、採用人数だけで予算の成果を判断できません。選考中に伝えた仕事内容や期待と、実際に任せる仕事にずれがないかを確認します。

必要になるのは、候補者への情報提供、オファー面談、内定者フォロー、入社後の受け入れ設計などへの予算です。入口となる応募数を増やすより、入社前後の期待をそろえることを優先したほうがよい場合があります。

採用予算を無駄にしないとは、支出額を一律に減らすことではありません。採用を止めている工程を見つけ、そこに必要な費用を残し、課題と関係のない支出を減らすことです。

過去1年の実績から、職種・経路・会社別の予算を計算する

過去実績は、次年度予算を決めるための土台です。ただし、年間の総額と採用人数だけでは、どの施策が機能したかは分かりません。月別・職種別・経路別に分け、費用と採用プロセスを同じ表で確認します。

求人広告は「応募→有効応募→面接→採用」で見る

求人広告は、応募単価だけで比較すると判断を誤りやすくなります。応募が多くても、採用要件に合う有効応募が少なければ、採用にはつながりません。媒体・代理店ごとに次の数字を並べます。

工程 確認する数字 計算する指標
応募 応募数 応募単価=広告費÷応募数
有効応募 採用要件に合う応募数 有効応募率、有効応募単価
面接 面接実施数 面接化率、面接単価
採用 採用数 面接からの採用率、採用単価

有効応募の定義は職種ごとに固定します。たとえば「必須資格を満たす」「勤務条件が合う」など、判断できる条件へ落とします。媒体ごとに定義が違う状態では、翌年の配分比較に使えません。

人材紹介は「紹介→面接→採用」を会社別に見る

人材紹介は、紹介会社ごとに紹介数、面接数、採用数、決定までの日数、採用時の手数料を並べます。紹介数が多い会社だけでなく、面接につながる紹介が多いか、採用決定まで進むかを確認します。

紹介会社側も、限られた候補者をどの求人へ紹介するか判断しています。選考結果の連絡が早い、採用要件が明確、求人の魅力を説明しやすい、採用決定につながりやすい、契約条件が合うといった求人は、紹介しやすくなります。紹介が少ないときは、手数料だけを上げる前に、自社の返信速度、求人情報、面接化率、内定条件を会社別に振り返ります。

採用目標から必要な応募・紹介数を逆算する

過去1年の歩留まりが分かれば、次年度に必要な件数を逆算できます。たとえば3人を採用したい職種で、面接から採用が25%、有効応募から面接が50%、応募から有効応募が40%だった場合、必要な目安は次のとおりです。

60件の応募を集めるために必要な媒体費を過去の応募単価から置き、面接12件にかかる日程調整や面接官の工数も足します。数値はそのまま目標にせず、繁忙期、職種難易度、採用条件の変更を反映して調整します。

採用KPIの置き方と月次での見方は、採用KPIとは?中小企業が見るべき4つの指標で詳しく解説しています。

採用予算を使いながら最適化する方法

採用予算は、年度初めに決めて終わりではありません。月次で進捗を確認し、四半期など一定のデータがたまる時点で配分を見直します。

月次は進捗、四半期は配分を確認する

月次では、職種ごとの費用、応募・紹介数、有効応募数、面接数、採用数、対応日数、工数を確認します。採用に時間がかかる職種は月単位の採用数だけで良し悪しを決めず、途中工程の変化を見ます。

四半期では、各施策を「追加投資」「継続」「運用改善」「停止」に分けます。判断材料は、採用目標への進捗、改善したい指標の変化、再現性、さらに予算を使った場合の余地です。件数が少ない段階では偶然の影響が大きいため、期間と母数も確認します。

予算を減らす前に、止まっている工程を確認する

費用が高い施策を止める前に、どこで採用が止まっているかを確認します。媒体から有効応募が来ているのに面接設定が遅いなら、広告を止めても課題は残ります。反対に、応募も有効応募も少ない媒体を惰性で続けているなら、掲載プランや原稿、媒体そのものを見直します。

削減額だけでなく、採用数、採用までの日数、候補者対応の工数にどのような影響が出たかも記録します。採用成果に必要な支出を残し、課題と関係の薄い支出を減らすことが、予算の最適化です。

予備費は使用条件を決めて持つ

退職による欠員、採用難易度の上昇、事業計画の変更など、当初計画だけでは対応できないことがあります。予備費は通常予算と分け、「緊急度の高い欠員」「特定職種の採用単価が想定を超えた場合」など、使う条件と承認者を決めます。

採用予算の立て方に関するよくある質問

一人当たりの採用予算はいくらですか

採用形態、職種、企業規模、費用に含める範囲によって異なります。一般調査の平均は初期値として使い、自社に過去実績がある場合は職種別の採用単価を優先してください。総額平均と1人あたりの数字を混同しないことも重要です。

中小企業は採用予算をどう決めればよいですか

採用する職種・人数・期限を決め、過去実績と採用プロセスの課題から必要な施策を選びます。そのうえで、外部費用、社内工数、予備費を積み上げます。全社で1つの採用単価を置くより、採用難易度の異なる職種ごとに計算するほうが実態に合います。

採用実績がない職種はどう見積もりますか

類似職種の実績、最新の一次調査、媒体・紹介会社・ツールの見積もりから仮の採用単価と歩留まりを置きます。仮説の精度は低いため、応募や面接の実績がたまる早い時点に見直し日を設定してください。

AI面接や採用管理システムも採用予算に含めますか

採用活動に利用する場合は外部コストとして含めます。導入費用だけでなく、日程調整や面接にかかる工数がどれだけ変わるか、候補者体験や選考品質に問題がないかを確認します。導入だけで採用成果が上がるわけではないため、改善したい工程と指標を先に決めます。

まとめ|採用予算は、採用プロセスの課題から配分する

採用予算は、平均採用単価に予定人数を掛けるだけでは決まりません。過去実績と応募から入社までの流れを確認し、採用を止めている工程に必要な費用を配分することが重要です。

まず取り組むことは、次の3つです。

  1. 職種・人数・期限を決め、過去1年の費用と採用実績をまとめる
  2. 応募から入社までの人数・率・日数・工数を並べ、優先課題を1つ決める
  3. 課題に合う施策の費用を積み上げ、見直し日と判断条件を設定する

求人広告、人材紹介、ATS、AI面接、採用代行などは、目的に合うときに初めて投資候補になります。外部支援の費用を知りたい方は、採用コンサルティングの費用相場も参考にしてください。

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ABOUT US
塔筋大樹株式会社Tsumugu代表取締役
同志社大学卒業後、地元金融機関へ新卒入社。その後、株式会社リクルートジョブズ(現リクルート)へ中途入社。求人広告営業として全国トップクラスの営業成績を収め、営業リーダーや代理店支援を担当。その後、Indeed特別認定パートナーの株式会社アド・イーグル執行役員として営業・人事・企画領域を管掌。現在は株式会社Tsumugu代表取締役として、中小企業の採用・育成・評価・定着に関する課題に対し、データとAIを活用した人事支援を行っている。